異世界転移 7話目
この世界、マナルは15年前まで邪神に攻め込まれていた。
そしてその戦いは神々の勝利で終わり、邪神の軍勢はほとんどが駆逐されたとのことだった。
そして邪神戦争が終わったのが15年前、ケンこと都造建一が転移してくる半年ほど前に終わったそうなのだ。
その戦争が終わった原因なのだが、神々の軍勢と言われる銀色の龍が腐るほど現れて、邪神や邪神によって産み出された中でも特に強力な魔物や魔人を殲滅して回っていった(これは俺も見た)からだとか。
その後色々と有ったが、5年ほど前に俺のメインの拠点となっているロットリッヒの西の森のそばに有るシュテットホルンと言う放棄された都市を、勇者達や英雄達に国軍と冒険者の合同軍で、住み着いた魔物や魔人を討伐して取り返したと言う一件が有ったのだ。
これはすでにBランクだった俺も強制で参加させられたんだが、結構な激戦だったのを覚えている。
なんにしろ都市を支配していた魔人達を勇者達が倒し、周りの取り巻きや雑魚のモンスターを国軍と冒険者達で蹴散らして街を取り返したのだ。
そしてシュテットホルンを取り返したことで、西の森から現れる魔物の討伐がやりやすくなり、ロットリッヒ地方の他の都市や町に村を取り返したり、復興させることが出来るようになったのだ。
ちなみにこの地方の名前はロットリッヒで、ほぼ中心にあって交通と防衛の要衝になっているこの都市の名前もロットリッヒと言う。
今ではどちらが先にその名前が付いたのか分からないが、邪神戦争が始まる前は見渡す限りの田園が続いていたそうだ、だからこそ邪神に狙われたとも言えるのだが……。
「アニキ、ケンのアニキ!」
「ん? おお、なんだ?」
「なんだ? じゃないっすよ! なにか分かったんなら、教えてくださいよ!」
そう言ってくるミルカだが、その回りにはアルヴァーにカウノ、それに他の冒険者達やギルドの職員達……おい、ギルマスまで居るなよ!
……ったく、しゃーねぇな。
「人材不足だな。」
「……へ?」
「5年前にシュテットホルンを取り返したろ、その後はロットリッヒ地方の他の都市を取り返したんで、元の町にすんでた奴等がご先祖様の土地に! って、帰っただろ?」
「へ、へぇ……。」
「そーいった町のギルドの職員は何処から行った。 ここ、ロットリッヒからだろ。
シュテットホルンもそうだし、取り返した主要な都市のギルマスはどうだ。 誰だか思い出してみろよ、ここにいた奴等じゃなかったか?」
「そ、そー言えば……。」
「よーするにベテラン達を各都市の幹部や幹部候補として送り出したら、ロットリッヒに新人ばかりになって、薬師ギルドや商業ギルドにつけ込まれるようになっちまったってところだろ。」
「じゃ、じゃあどうすれば良いんじゃ!?」
うお!? ギルマスが冒険者達を薙ぎ払って俺の前に!
ってか、自分で考えろよ! ……無理か、このギルマスは戦闘力と戦闘指揮は凄いけど、こーいった裏工作とか苦手だもんな。
俺は仕方なくギルマスに向き合い、アルヴァーや有力なクランを率いてる冒険者達を手招きして近くに呼ぶ。
「ギルド職員を呼び戻すのは問題外だな。」
「な、なんでだ、10人も呼び戻せば大丈夫だろ?」
さすがに大規模クランを率いてる奴等だ、素早く呼び戻す人数なんかを計算しているな、他の奴等もうなずいてるし……アルヴァーとギルマス、お前らが首をかしげるなよ……。
「その分、他の都市が他のギルドに良いようにされるだろうが。 それにな、職員をちゃんと各都市なんかに配置したのは間違いじゃないんだよ。」
「で、でも人材不足だって……。」
ギルマス、悲しそうに言ってくるなよ……。
「そりゃ、ここはな、他の都市の支部はどうだ、結構暇なんじゃないか?」
俺の質問に副ギルド長が現れて疲れきった表情で言ってくる。
「はい、1日の案件が0なんてところも有るようです……。」
「ならやっぱり呼び戻そう!」
副ギルド長の言葉にギルマスが即座に反応して叫ぶ。
「だから待てって、その支部の依頼って、ここ、ロットリッヒに来てるだろ。」
「な、何でそれを!?」
「やっぱりな……掲示板の依頼の件数や場所が変わってないから変だと思ってたんだよ。」
副ギルド長の叫びに俺がそう答えると、ため息をつきながら周りの冒険者達を見る。
「問題は職員は散ったのに、冒険者達がここに集中しすぎてるってことだな。
だから他の支部には依頼がいかないんだよ、クランでも支部を作るべきだな、アルヴァー、お前のところが一番でかいんだ、率先してやってやれよ。
他も自分達にあったレベルの場所に移動するか、支部を作ってその場所のレベルにあった奴等をいかせれば依頼も分散するだろ、それでいかないとギルドも冒険者も共倒れだぞ?」
俺の言葉に思うところがあったのか、冒険者達はうめいたりウンウンと小さくうなずいていた。
副ギルド長は救われたように俺を見てくる、同じ思いがあったんだろうな……。
その後、アルヴァーが率先して支部を作ると言ったので、他の冒険者達も賛成してくれて、ギルド職員や他の冒険者達と色々と話し始める。
俺はソロなので関係ないので、さっさと家に帰ろうと立ち上がるが、俺の前に立ちふさがる男が居た。
「……ケンさん、騙されて奴隷にされた冒険者達がいるんです、ギルドは何とかしようと思ってるんですが、どうにか出来ませんか?」
また、めんどくさい事を……!
「……ちょうどここにアルヴァーを筆頭に主だった冒険者のリーダー達が居るんだ、関わった奴等やギルドには一切素材もなにも卸さないし、依頼も受けないって宣言させろよ?
そーすりゃ商業ギルドも真っ青になって来るだろ。
ああ、向こうが頭下げるまで一歩も引くなよ!」
俺はそう言って、手をヒラヒラと振りながら席から離れようとしたが、副ギルド長に腕をつかまれて止められる。
「な、なんだよ?」
「その宣言、ケンさんも宣言を、お願いします!」
「はぁ!? おまえ俺はただのソロの冒険者だぞ、ここはアルヴァー達でいいだろが!」
「いいえ、ケンさんが言ったことなんですから、責任をとって宣言してください。」
ふ、副ギルド長の奴、大分参ってるな? 血走った目で見てきやがる……!
「わ、分かったよ! 俺も宣言に加えて良いから!
……ったく、じゃあ帰る「待てケン!」……今度はなんだよアルヴァー?」
「どこのクランがどこに支部を作るか、拠点を変えるクランやパーティーの場所決め、おめえのやることはいっぱい有るんだ、帰さんぞ?」
「それこそ俺の仕事じゃないだろうが!?」
「「「言い出しっぺだろ!?」」」
俺を囲んで、冒険者達もギルドの職員達もそう言ってくる。
俺はその言葉を聞き真っ青になるのだった。
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