異世界転移 4話目




俺はドライトと連れだって、この地方の中心都市というロットリッヒに向かっていた。


この世界に来てすでに1週間、今日か明日にはロットリッヒに着くとの事だった。


そしてこの1週間、ドライトはこの世界の常識や知識、魔法やスキルの説明に戦闘技術を教えてくれた。


この世界で大工として生きていくつもりだった俺は必要ないと断ったのだが、町の外には普通に魔物がいるし、魔人の生き残りもまだまだいるとの事で教えてもらいながら移動していたのだ。




「さて、これから教えるのは気功法です、この技術はまだまだこのマナルに広まっていないので、あなたがついでに広めて下さい!」


ドライトはそう言うと、見本だと言って槍を取り出して正面に向かって突きを放つ、すると槍の穂先から何かのエネルギーみたいなものが飛び出し、ドライトの左側100メートル程の所にあった岩に当たり砕く。


そして俺は、それを不思議そうに見守っていた。


槍から放たれたエネルギー弾は、空中で向きを変えて岩に当たっただけでなく、以前に見せてもらった魔法弾とも異質のものだったからだ。


「……魔法とは違う気がするけど、なにが違うんだ?」


「この気功法は、自分の生命エネルギーや体内の魔力を体外にある魔力や魔素と練り合わせるのです。


魔法より最初はコントロールは難しいかもしれませんが、慣れれば詠唱は無いですし、手足を動かすようにコントロール出来ます!」


その後、ドライトに手を握られて生命エネルギーの流れを感じとると、あっという間に気功法を習得することが出来た。


ドライトいわく、俺は気功法とはかなり相性が良いとの事でスキルランクは10になるだろうから、偽装して7ぐらいにしておいた方が良いと言われた。


「……ん? あれは?」


俺はさらに気功法の事を習っていると、俺達が向かっているロットリッヒの方角から軍勢らしきものがこちらに向かっているのが見えた。


かなりの規模の軍勢らしく、一万以上の部隊がこちらに向かっているのが見えた。




「……あれは私の分身体です、どうやら西の森に隠れている邪神の討伐に向かうようですね。」


俺は邪神の討伐か……ってか分身体で大丈夫なのか? っと考えていると、軍勢はアッという間に俺たちの前まで来る。


そしてひときわ豪華な鎧を着ていて羽飾りを着けたドライトにソックリの指揮官が目の前で止まった。




ってか、他の兵士達もみんなドライトなんだけどな……




「総統閣下! 命令どおり精鋭部隊をロットリッヒから出撃させました。

これから西の森に潜む邪神を捕まえてきます!」


「ドライト大将、ご苦労様です! 西の森には邪神が10体隠れているはずなので、よろしくお願いします!」


「了解です! ……シュテットホルンはよろしいのですか?」


ドライト大将が報告してそれにドライトが答えると、ドライト大将はドライトの耳元で何かを言っている。


するとドライトもドライト大将にだけに聞こえるように話しかける。


「あそこには魔人しか居ません、1体そこそこ強いのが居ますが現地の勇者だけでも対応出来ます……それに今回の出兵は、都造さんをマナルに転移させたのを隠蔽するためです。

邪神を捕まえたら作戦通り他の戦線に部隊を移動させてください。」


「了解です、都造さんの事を隠蔽して、後でマリルルナ様が気がついて驚いたところを……撮影して笑ってやるのですね?」


「マリルルナさんの反応を想像すると……今から楽しみですよ!」


「「うひょひょひょ!」」


ドライトとドライト大将と呼ばれた分身体が、なにやら相談していたのを横で見ながら気功法の練習をしていた俺は、急な悪寒を感じてブルリと身を震わせたのだった。




そして次の日の早朝に、予定通りロットリッヒ地方の中心都市、ロットリッヒが見える場所までやって来た。


「あそこが城塞都市、ロットリッヒです。


そして、私の案内もここまでです、これからは都造 建一さん、あなたの力でこの世界を生きていくことになります……私から幾つか贈り物をあげますので、それを活用して頑張って生きていってください!」


そう挨拶してくるドライトに俺は、


「ああ、ありがとうな……この世界で俺は、夢だった立派な宮大工になれるように頑張るよ!」


そう答えて手を振り、ドライトと別れてロットリッヒの方に向かって歩き出す。




「……身元の関係で何か大事な事を忘れた気がしますけど、まあ大したことじゃないでしょう。


都造さーん、頑張ってくださいね!」


俺は何かをつぶやいたドライトに向き直り、感謝しながら手を振ってからロットリッヒに向かって歩き出したのだった。



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