異世界転移 3話目




「ここから歩いて1週間程のところに、城塞都市が有ります。

そこに着くまでこの世界についてなど、レクチャーしますよ!」


そう言うドライトの後ろを歩く俺、結局俺はこの世界で生きることを選んだ。




なぜ異世界で生きることを選んだのかと言うと、ドライトの発した一言が原因だった。


俺が帰ると言いかけた時に、ドライトは続けてこう言ったのだ。


「もうすぐ40歳で、満足できる仕事が出来るか分からない世界に、あなたは帰るんですね?」




その一言で俺は思い出してしまう、俺の目標はなんだったのか?




祖父の様な立派な宮大工に、父のような一級建築士になるんじゃなかったのか?




生きるために仕事をして、言われるがままに納得できない建築もする。


本当にそれで良いのか? そう思ってしまったのだ、そしてそんな俺をドライトはチラリと見て言う。


「この世界で人生をやり直してみませんか、自分の姿を見直してください?」


言われて俺はハッとする。


俺の姿は13、4歳になっていたのだ、そしてドライトが用意した姿見を見ると、銀髪にエメラルドグリーンの瞳の少年が立っていた。


あまりの変わり具合に一瞬誰だか分からなかったが、その姿は中学に入学した頃の俺だった。


髪と瞳の色は違うが、明らかに中学に入った頃の俺だったのだ!


そして髪と目の色が違うことの説明を、ドライトがしてくる。


「この世界で黒髪に黒い瞳は目立ちます、ここだけの話なんですがこの世界の神は結構な人数を勇者召喚で色々な異世界人を召喚しているのですよ。」


「へぇーなんでまたそんなにしてるんだ?」


「それなんですが……。」



ドライトの説明を聞いて分かったのだが、この世界はマナルと言い。


女神マリルルナ様と言う者が治めているそうなのだ、だがこの世界はつい最近まで邪神の軍団に攻撃されていて安定していなかったそうだ。


現在はどうなのかと聞くと邪神の軍団はすべて捕らえられていて、世界は安定に向かってるとのことだった。


「母様と妹達を薄汚いとか言いましたからね。 赦しません、ええ、赦しませんとも……!」


途中でドライトが何かつぶやいていたが、よく聞こえなかった。


なんにしろ邪神との争いの最中に女神やこの世界の魔導師等が、異世界召喚などで優秀な人材を呼びまくったらしいのだ。


「ふーん、それでなんで黒髪黒目はダメなんだ?」


「日本人の方々は適応性が高すぎるんですよ、小説とかの影響も有るとは思いますが普通は絶望したり泣き叫んで役に立たずに、マリルルナさんが記憶を消して元の世界に送り返したりしてたんですが、日本人の人達はほとんどがヒャハーしましてね……。」


「は、ははは……。」


どうやら日本人はいろんな意味で目立ちすぎたようだった。




ついでに聞いてみたのだが、その女神マリルルナは弱いのかと。


するとドライトが、


「とんでもない! 力のある原始の神の高位眷族神ですし、その眷族神の中では武闘派として有名なんですよ?」


っと言ってきた。


そのわりには一方的に攻め込まれていたんじゃ? っと聞くと、数が多すぎたのと邪神と戦うなどすると人の魂の格が上がるとのことだった。


要するに神の試練として人々の格を上げようとしたらしい。


それで本人は双剣をふるって邪神や魔神を笑いながら滅ぼしまくっていたとのことなのだが、邪神達と戦うのに夢中になりすぎて、人々の事を忘れてたとのことだった。


「と、とんでもない神だな……それでなんで異世界召喚は、してたんだ?」


「ああ、その人達の魂がこの世界に定着すれば労せず世界の格が上がりますし、文化レベルも上がりますからね……ただやり過ぎると普通は他の原始の神や龍神達から苦情が入るんですよ?


ただ、今回攻め込んできた邪神の軍団はかなりの規模で、それなりに力を持っているのも居たので許されていたんでして、それを利用してこの世界、マナルの格を上げようとしてたみたいですね……。」


「ちゃ、ちゃっかりしてるな……。」


そんな話をしながら俺達は近くに有ると言う城塞都市に向かう。

若返った身体を使い、自由な世界で一人前の大工となり後世に残る様な建物を造るために……!



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る