異世界転移 2話目




俺は少しずつ何があったのかと自分の半生を思い出していたが、どうしても工事現場を通った辺りで記憶が無くなっていて思い出せないでいた。


すると目の前で手をかざしていたドライトが、手を下ろして話しかけてくる。


「だいたい思い出したようですね?

さて、今回あなたは異世界に転移してしまいました。

そこで転生と転移を勝手に司る、このドライトさんが来たと言うわけです!」




……こいつ今、勝手に司るとか言ってなかったか?




俺は不審そうにドライトと名のる小さなドラゴンを見ていると、ドライトは何かに気がついたのかウンウンとうなづきながら言ってくる。


「なぜ自分がこんなところに転移してしまったのかお聞きしたいのですね?」


転移? ……転移ってまさか、最近の流行りみたいに異世界に転移したとか言うんじゃないだろうな?


いや、さっきも「あなたは異世界に転移してしまいました」って言ってたな……ま、まじか!?


俺が驚いていると、ドライトがさらに話しかけてくる。


「なぜ異世界に転移してしまったのか、あなたも知りたいでしょう! これを見てください!」


そうドライトが言うと、空中に映像が浮かび上がる。


そこには大きなリュックを背負って、片手にコンビニ袋を、もう片手にオデンの容器を持つ男が映し出されていた。


「ってか、俺じゃんか!?」


そう、映し出されたのは俺だった。


映像の中の俺は、鼻唄混じりに歩いている。

そして自分でも思い出せなかった例の工事現場に差し掛かる。


そして横を通り抜けようとしていた時にそれは起こった、足元の一部が崩れ……バランスを崩した俺はオデンの容器を工事の穴に落としたのだ!




……それで? え? これが何で異世界に転移することになるの? 自分も穴に落ちたとかなら解るけど、落ちたのはオデンのみだぞ?


そう思って映像を見ていると、それが起こった。


『おあちゃあぁぁぁ!?』


ツルハシをかついだ銀色の物体が、工事の穴から叫びながら飛び出したのだ!


そしてその銀色の物体は俺にぶつかり、その瞬間俺の姿が消えたのだった。


『……今、ぶつかったのこいつだよな?』


そう、穴から飛び出してきたのは今も目の前でホバリングしているドライトだった。

俺が不審な目でドライトを見ていると、ドライトは心外そうに言ってくる。


「なんですか、なんですか! バイトで土管を掘ってたら、いきなり熱々のオデンが頭に降ってきたんですよ!?

思わず叫んで飛び出しても、しょうがないじゃないですか!」


「……あのオデン、もう冷めてたんだが?」


そう、オデンはコンビニで最初に買い、すでに冷めていたので熱くなかったはずなのだ!




俺の言葉にドライトは、俺から目をそらしながら言う。


「……オデンとは熱いものなのです、そして熱いオデンが頭にかかったら、ビックリするはずなのです!」


こいつ本当は熱々のオデンをかぶっても、熱くもなんともなかっただろ!?


俺がそう思っていると、ドライトはコホン! っと軽く咳払いをして、再度話しかけてくる。


「なんにしろあなたとぶつかった衝撃で、あなたを異世界に転移させてしまいました。

これからどうするかを話し合いたいんですが、良いですか?」


「これからどうするのか……もしかして地球に戻してくれると言うのか?」


俺がそう言うと、ドライトはさも当たり前のように言ってくる。


「ええ、今回はあくまでも事故の様な事で飛ばしてしまったので、都造さんが望むなら地球に戻してあげても良いですよ? 望むなら!」


まるで俺がこのまま異世界に残ることを望むと、決めつけるようにドライトは言ってくるのだった。



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