異世界に転移して15年 酔った勢いで奴隷を買ってしまいました。

バリ君

異世界転移 1話目




「………………へ? ここ、何処?」




俺は買い物袋を持ったまま茫然となる。


さっきまで俺は町中をスーパーで買った荷物を背負い、コンビニで買ったオデンを持って歩いていたはずだ。


なのに今の俺は平原に立っていたからだ。


「ほ、本当に何処だよここ!?」


俺は慌てて周りを見回す、右の方には森と遠くに山脈が見える。


左には川が見えるが、その向こうはやはり平原だった。


「あ! いました、いました!」


っと、俺の背後から声が聞こえたので慌てて振り向くと、パタパタと飛ぶ、小さな灰色のドラゴンが居たのだった!




あまりのことに目を見開き声も出せずに見ていると、小ドラゴンは俺の目の前までやって来て、話し出す。


「こんにちは、私の名前は銀龍ドライトです! 色が違う? 色々あって擬装して変えてるんですよ、色だけに!」


クソくだらない冗談を言ってくる小ドラゴン、本人いわく龍のドライトはやたらとフレンドリーに俺に話しかけてくる。


だが俺が訳が分からないと言う感じでドライトを見ていると、ドライトも「あれ?」っとつぶやいて俺をじっと見る。


そして俺の方に手をかざすと、「これで思い出してください!」っと言うのだった。




すると俺は思い出す、先程起こった事を……




俺の名前は都造 建一[とづくり けんいち]建設会社で働いている38の独り者だ。


家族は小さい頃に両親が事故で亡くなり、母方の祖父母に育てられていたが、その祖父母も中学の時に相次いで死んでしまった。


祖父母の死因は老衰と言われたが、原因は親族だろう。


母方も父方の親族も、俺に残された両親の遺産、事故死の保険と賠償金をむしり取ろうとあの手この手で迫ってきた。


父方の祖父母はすでに亡く。


娘と義理の息子が残した、たった一人の孫を、必死に守るために戦ってくれた祖父母は心労で死んでしまった。


俺は精神的に殺されたと思っている。


何にしろまだ中学生だった俺は、遺産や祖父母とすごした思いでのある家を守るために必死に戦ったが、しょせんは中学生のガキだったので、親族にだまされたり法律の壁があって家も遺産もほとんどが取りあげられてしまったのだ。


その後は雀の涙ほどにも残らなかった遺産でなんとか食いつなぎ、中学を卒業すると共に建設土方で働いてなんとか生きていた。


建設業を選んだのは父が一級建築士で、母方の祖父が腕の良い大工だったので俺も将来はそうなりたいと思ったからだ。


宮大工でもあった祖父の親友さんに、俺が中学を卒業すると同時に拾ってもらい。


大工としての基礎や技術を徹底的に仕込んでもらって、二十歳になる時にはどこに出しても恥ずかしくない一人前の大工といわれるほどになれた。




良い爺さんだった。




死んだ祖父の三回忌の時に、久しぶりに会った俺が痩せ細り、周りのすべての人を呪い殺さんばかりにらんでいた俺に驚き、なにも言わずに引きずって自宅に連れていってくれたのだ。


そして引き取って育ててくれた、3番目の祖父みたいな人だった。


高校にも通わせてくれると言ったが、それはなんとか断って爺さんの元で見習いとして働いたのだ。


なぜ高校に通わなかったのか?


今は高校無償化等の制度が有るが、20年前にそんなものはなかった、そしてただでさえ生活費等で世話になっていたので、これ以上迷惑をかけたくなかったのと、祖父の様な立派な大工になりたかったから早く修行を始めたかったからだ。


なんにしろそんなこんなで二十歳で独立したのだが、その後直ぐに爺さんも亡くなってしまい。


食って生きていくために小さな建設会社で平社員として必死に働いていて、気がつくとこの歳になっていたのだ。


そしてさらに思い出す、仕事が無いので1週間ほど自宅待機となってしまい、その間の食料や暇潰しの本などを買い出しに出かけて、最後に一杯のおかずにコンビニでオデンを買って、安アパートに向かって歩いていた事を。




そして何かの工事で、地面を掘っている工事現場の横を通り抜けようとして、石につまずきよろめいてからの記憶が一切無いことに。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る