【74】キャンプと自慢と嫉妬と(後)

「はるさん?そろそろ今宵の宿を

探さなきゃならない時間かな~?」


一刻も早く、太郎の車から離れたかった俺は

はるさんに今夜の宿泊場所について聞いてみるも、返ってきたのは本日の主役である太郎の声だった。


『何言ってるんだよ稜!これから四人で、【芦ノ湖キャンプ村】に行くんだよ!車の自慢をする為だけに呼んだ訳ではないのだ!たまには都会の喧騒を忘れ、皆で仲良く自然の中で食事や酒を楽しむのも良くないか?』


「いやいや~俺はそれでもいいよ~?けどさ…はるさんが~きっと嫌だと思うけど…」


そう言いながらはるさんに視線を移すと、

何故か瞳がキラキラしている。

ま、まさか…ノリノリ?!


「…はるさん?キャンプ場とか嫌だよね?

虫とかいるしさ~お風呂も困るし~!」


『稜さん!私めちゃくちゃ楽しみなんですが!こんな澄んだ空気で星もさぞかし綺麗だと思うし!外でご飯食べるのとか久しくやってないけど、最高ですよね~!あ…虫が苦手な大人には無理かもね?』


チラリと俺の方を向いてクスクスと

笑っているはるさん。

まだ松本城での出来事を

忘れてはいなかったか…。

ここで行かないと言ったら

男"西園寺稜"の名がすたる!!


「太郎?はるさんが大丈夫なら俺が断る理由はない!行くなら行くで、早くビールでも飲ませてくれなきゃやってらんねーぞ!」


仕方なく行ってやるのだという態度を示しながらも、嬉しそうなはるさんの顔を見て俺は行く気満々になっていた。


『稜!予約はばっちりだ!安心して俺の後ろをついてこい!こんな場所まで呼び出したんだから、勿論食材もビールも準備万端だからさ!!』


太郎の後ろについて走ること数分でキャンプ場に到着し、チェックインを済ませる。太郎は女性陣の為になんと、コテージを一部屋用意してくれていた。

やはり太郎は気がきく優しいヤツだ。


すでに夕食前の時間帯ということもあり四人は早速バーベキューエリアへと移動し、大自然の中での食事を楽しんだ。大好きな人たちに囲まれているということも関係しているとは思うが、何故に外で食べる食事というのはここまで美味しいのだろうか。

その後、オートキャンプ場のほうへと移動して軽いつまみを食べ満点の星空を見ながら

ゆっくりとお酒を楽しむ贅沢な時間。

無理やりではあるが、ここまで呼んでくれた太郎に感謝しなくてはならないな。


日付が変わる前にコテージへと行ったはるさんとなっちゃん。残り少なくなったビールをチビチビと飲みながら、久しぶりに太郎と

二人で語り合うというのも悪くはない。

それにしても…キャンピングカーがあれば、いつでもはるさんとこんな景色を見れるのではないか…?

今まで考えてもみなかったことだが。


「…そうだ!決めた!!」


『……ん?り、稜?…何か、言ったか?』


突然大声を出した俺の声に驚き、

半分夢の世界へと旅立っていた太郎が

"僕は寝てませんよ?"とアピールするかのように慌てて返事をしてくる。


「何でもないよ!何でもな~い!」


返事をした俺は、体に似合わない小さめの

椅子で器用にもまだうとうとしている太郎に

バレないように静かに車へと移動する。

そして真新しいキャンピングカーの、メインベッドを占領し眠りにつくことにした。

こんな贅沢の仕方を教えてくれた太郎には感謝したいところだが、外で寝ている太郎のことは…知らない!

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