【53】シンボルと串カツと六文銭と①
まさか、彼の名字が"西園寺"とは…。
もし彼と結婚したら"西園寺春香"…。
何故か異世界転生してそうな名前になってしまうなと思っていたことは彼には内緒だ。
秀吉目線で大阪の街並みを満喫した私達は
食い倒れの街を堪能する為に、大阪のディープタウン新世界を目指すことにした。きた道を戻り大阪環状線で、目指すは新今宮駅!
「はるさん?今から食い倒れるんですよね?あの…アルコールはありでしょうか?」
『ん?アルコール?まぁ様子を見ながら上限五杯というところですかね?』
酒の相談をしながら駅を出て大通りを歩いていると、突然彼が立ち止まった。
「あ、はるさん!もしかしてこれが大阪名物の一つ【通天閣】ですか!!」
建物の影からチラリと見えた鉄塔に
興奮している様子の彼。
『…そうだよ~。とりあえず今から通天閣の麓近くまで移動するから、もっと間近に見えますよ!東京タワーとかスカイツリーほどの派手さはないけどさ、何か庶民的で味がありますよね。登ったことないけど。』
「確かにね~!そんな高いわけでもないけど…鉄塔の渋い色合いがまた絶妙でさ、この街にいい感じに溶け込んでますよね。ところで今からどちらに行くんですか?」
『今からね~、新世界の串カツ有名店
【だるま】に行こうと思ってます!少し並ばないといけないけど、我慢できるよね?』
「武士に二言はござらん!!」
『え?いつから武士になりました?』
「大阪城からでござる!」
『はーい。』
突然入る、この戦国スイッチは
一体どこにあるのだろうか…。
駅から数分で到着した目的地、夕食時と
いうこともあり、やはり並んでいる。
『稜さん知ってる?通天閣の一番上のライト部分は明日の天気をお知らせしてくれている、天気予報なんだよ~?あ、明日は晴れみたいだね。』
「へー?そうなんだ!この辺りに住んでいたら、通天閣を見上げるだけで明日の天気がわかるのね!!無意識に知れるの便利です!」
並びながら彼の大阪城ウンチクの続きを
聞かされつつ、時折私の話をまぜ混む。
ヤバい…お腹が空いてきた。
何故だかというか、昔からというか…
私はお腹が空いてくると機嫌が悪くなる。
順番まで後、二組。
「あれ?…はるさん?…どうしました?
何か俺の手の甲の様子が変でござる!」
ウンチクに付き合うのに飽きてきた私は
彼の手の甲に見つけた、短い指毛を抜く
という遊びを始めた。
「い、痛い、痛いって~!!あ、はるさんお腹空いて我慢出来ないんでしょ~。前も空腹時に急に意地悪された記憶がありますよ?」
『バレたか。』
「本当、お子様なんだからさ~?よし!はるさんの気が済むまで、むしり続けたまえ!」
普通、こういう時って"やめろよ"とか
言うものではないのか?
きっと彼は、究極のドMか私のことを目の中にいれても痛くないくらいに愛しているのだろうなと思った。
『稜さん、少し耳貸してくれます?』
「ん?指毛遊びは終わったの?(笑)」
"稜さん、好きだよ"
耳元で囁いたあと、耳の横に見つけた
白髪を思いっきり抜く。
彼の苦悶と幸福の入り交じった表情を見ていると、この場を救う天の声が聞こえてきた。
「お二人様、お待たせしました~。
店内へどうぞ~。」
彼の地獄はようやく終わったようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます