【54】シンボルと串カツと六文銭と②

彼女からの幸福の拷問を耐え、ようやく

店内への入店を許可された。

待ちに待った更なる幸福の時間…。


生中を二つと、串カツを適当に頼んでくれた彼女。はるさんとは結構、食の好みも似ているので安心して任せることができる。


『稜さん?ご存知だとは思いますが、串カツのソース二度付けは禁止ですからね?

さて、とりあえず乾杯しましょうか!』


「待ってました!俺のソウルドリンク!

大好きなビールと、串カツに隣には、美しいはるさん…。もう最高ですね!」


『……稜さん?私の順位はビールと串カツよりも低いということでよろしいですか?』


「……!そ、そんなわけないでしょ?この世で一番大切なのは、はるさんです!」


普段は俺の話なんて、聞いてるか聞いてないかくらいの返事しかしてこないのに、こういう時だけ突っ込みを入れてくる…。


『知ってるけどね~。』


知ってるんかい!まぁいい…。

「はるさん、明日はどちらに行く予定ですか?わたくし一ヶ所だけ行きたいところがあるのですが。」


『ん?明日は奈良県に行こうかと

思ってますけど、どこに行きたいの?』


運ばれてきた出来立ての串カツをソースに

一度だけくぐらせて、頬張る。

う、うまい!


「はるさん、串カツ美味しいねー!ビールのお供に最高でございます。あ、行きたいところ?それはですね…。」


『何を勿体ぶっているの?早く言わないなら

行きませんけど、よろしい?』


「だ、ダメー!!言います!拙者、幸村に

縁のある場所に行きたいで候。」


『…拙者?幸村?幸村って真田幸村?』


「そうでありんす!はるさん、それがし

昔から、深く知識がある訳でもありませぬが、何故か真田幸村にひかれるのであります。」


『…あ、ありんす?それがし?稜さん…

そろそろビールやめますか?』


ヤバい若干彼女がひいている…。

でも、幸村についてもっと喋りたい…!


チラッと彼女の顔を見てみると落ち着いた

様子で串カツを頬張り、微笑んでいる。

機嫌もよさそうだしまだイケる!


「やめません!もっとね、面白い話があるの!はるさんは知ってるかな?幸村に関する逸話としては真田十勇士とかが有名なんだけど…。後はね、誰が言ったかはわからないけどさ"日ノ本一の兵"って呼ばれてたくらい凄い人だったんだよね。わたくしもそんな強い男になりたい!幸村に関する話しには、本当男のロマンしか感じないのです!いろんな武将に仕えながら、最後は豊臣に尽くして大阪を守ろうとした。だから大阪の人々にも愛されているんだろうね?」


『へー、何となく単語は聞いたことあるけどさ内容まではよく知らないかな。』


「まぁ特別興味なかったら知らないよね~。学校でここまで習った記憶もないしさ?はるさん?まだ続きがあるんですけど話してもよろしいでしょうか…?」


『稜さんの奢りなら後、十分我慢します!』


奢りを出してくるとは…

お主なかなかやりおるな。

でも、俺の口はもう止まらない!!


「拙者!喜んでお支払いたします!さて話の続きね?…実は幸村はね長野県の生まれなんだよ!運命に翻弄されながら、大阪の地にたどり着き、故郷ではなくここ大阪で死ぬ。幸村のトレードマーク、赤い兜の六文銭にも痺れますよね~!!あの当時はね三途の川を渡る時に、六文のお金を払うって信じられていたんだって。俺はいつでも死ぬ覚悟はできている!そういう現れだったんじゃないかって言われているの。もう本当…カッコ良すぎますよ~!…ね?はるさん?」


アルコールの所為で少し赤みを帯びた

頬が何とも愛くるしい…。

少し上目がちにこちらを見つめてくる表情が

また、堪らない!!


『…稜さんの幸村愛はよーくわかりました!

何となくしか知らないけど、幸村のお墓が

あるってテレビでこの前やってたんだけど

そこに行くってことで納得頂けますか…?』


なんて素敵な提案。

もう今すぐに抱きしめたい気分だ!


「もー!!最高じゃないですか!

そこに是非連れていってください!」


『わかりました。稜さん?まだ飲みます?

幸村行ってからの奈良県は早起きしないと

厳しいから、もう要らないならうちに帰りますよ?』


そうか今日は、はるさんの家にお泊まりできるのか!思えば泊まるのは初めてだな?

なんて最高な日なんだ…。


「…はるさんの自宅!!わたくしもうビールは要らないです!急いで帰りましょう♪いっぱいちゅーしてね?」


『…ばーか。』


横腹に肘打ちを喰らったが

今の俺は無敵状態だ!

支払いを済ませると、通天閣に投げキッスをして別れを告げ、新世界を後にした。

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