栃木県
【66】ドライブと瀑布と求婚と?(前)
『稜さん起きてー?ご飯できたよ?』
「…?はるさん?今日休みだよね…
おはようございます。休みなのに俺より
早く起きるなんて…、どうしたの…?」
ベッドの中でこちらの様子を伺っている
彼に近寄って、布団を剥ぎ取った。
先日の一件から、私達の絆はさらに深まったような気がする。
まだ、プロポーズは断っていますけど…。
『誰かさん、夜中までテニスとか見てるから
せっかくの休みなのに起きれないんだよ?』
「……。はるさーん?こっちきて?」
無駄に甘えてくる彼。そういえば前に私も
同じようなことをしたことがあるな。
彼の言葉には答えずに黙々と出発の準備を
一人始めている私を見て彼は慌てた様子で布団から出てきた。
「えっ?はるさん?もう着替えまで終わってるし!どこ行くつもりなの?また一人でどこか行っちゃうとかやめてよね~?」
朝から騒々しく起きてきた彼のコーヒーを
入れ一緒にソファーへと座る。そろそろ、
本日の行き先を発表しようではないか。
『稜さん?この前【久能山東照宮】に行ったでしょ?私、どうしても【日光東照宮】に行ってみたくなったの!もちろん連れて行ってくれるよね…?』
コーヒーを飲みながら、サンドイッチを
食べていた彼を見てお願いする。
いや、お願いではない、命令だ。
「えっ?今から栃木ですか?全く朝から無茶振り絶好調だねー?しょうがないなー。今から関西まで行くってわけでもないし、行きましょう!その代わり…おはようのキスするんだよ?」
顔を近づけてきた彼の口に
プチトマトを突っ込む。
「んもぉ~、そんなところも大好き!」
彼は今日も朝から上機嫌のようだ。
「それでは、はるさん?ご唱和願います!
日光東照宮に向かって…レッツらゴー♪」
『……』
「はい!出ましたスル~!もう…連れて行かないわよ?なんちゃって~、というかはるさん?昨日の夜から決まっていたのよね?わかってたら朝早くからばっちり準備できるのに突然言うとか…本当びっくりだよね~?」
『ん?だってさ~?稜さん夜テニスに夢中だったじゃないですか?だから朝でいっか~と思ったの~。どちらにしろ、年寄りは朝早いじゃない?』
「むむっ!どこに年寄りがいるのだ?!」
本当、昼夜問わずこのテンション…
私に同じテンションを求めないことが
彼の良いところである。
【日光東照宮】までは、三時間かからないくらいで到着予定と出ていた。二人で大好きな音楽を聴きながらご機嫌ドライブの始まり始まり。二人を乗せた車は、首都高速から東北自動車道へと進む。渡良瀬川を越えると、
栃木県の看板が見えてきた。
「はるさん?栃木県を観光するの初めてなのよね?栃木県と言えば何を思い浮かべますか?」
そうだ…私は日光東照宮に行きたいとは言ったものの、それが栃木県にあるということは知らなかった。
『稜さん?私は恥ずかしながら出発するまで日光東照宮が栃木県にあるということを知りませんでした。だから全然思い付きません!あ…、一つあった!イチゴ有名じゃない?』
「もぉ、栃木県と聞かれてイチゴとは…どれだけ可愛いのよ~!それも正解!だけどね聞いたら知ってるような名物が実はたくさんあるのよ?例えば…鬼怒川温泉!聞いたことあるでしょ?華厳の滝に佐野厄除け大師、レモン牛乳とかも有名かな!まぁ俺の一番は宇都宮餃子にビールだけどね?」
確かに聞いたことはあるな…。
さすが稜さん!なんて言葉を発したら
残りの車内は彼の独演会と化すだろうな…
宇都宮までの距離を示す看板が見えしばらく走っていると、突然驚きの光景が表れた。
「はるさん、こっち見てて?」
ふと呼ばれ彼のいう方向を見ていると、
なんと…私の大好きな東北新幹線のはやぶさが、秋田新幹線のこまちを引き連れて走り去ったではないか!
『ちょっと~!!稜さん!見ました!?
何でもっと早くにこのポイントを教えてくれないのよ~!!はやぶさに追い付けないか?というか何これ~!最高じゃないですか~!はぁ…やっぱ新幹線早いな~!グランクラスとか最高なんだろうな~。はやぶさもこまちも本当綺麗だよね~?』
突然テンションの上がった私に少しひいている様子の稜さん。もしかしたら、彼と出会って一番くらいのテンションを見せてしまったのかもしれない…。
まぁ嬉しいものは仕方がないのだ!
「…え?はやぶさに追い付く…?はるさん、時速何百キロの世界は流石に無理です!!
でも、はるさんがこんなに早口で話せる人だとは思いませんでした、新しい一面を見せてくれた、はやぶさこまちに感謝だわ!それより、そろそろ、東北自動車道から日光宇都宮道路に入るよ!もうすぐ東照宮だけど、はるさん?わたくし、華厳の滝を見た帰りに東照宮に寄ろうかと思ったのですがどうかな?」
稜さんが行きたいと言うくらいだから
きっと素晴らしい場所なのだろう。
『稜さんに任せる!』
「はるさん?今から通る"いろは坂"は
色々ヤバいから覚悟しといてね?」
はやぶさこまちで完璧にテンションの上がっていた私は、彼の呟いた"ヤバい"という言葉を全く聞いていなかった。
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