【12】ドライブと葡萄畑と求婚と②
ワイナリーの駐車場で突然されたキスを思い出し、ニヤつきながら再び高速道路へと戻る。いつもクールな彼女だがキスだけは驚くほど情熱的だ。日頃俺に対して、9割ほどツンで生活しているはるさんの、1割のデレを感じることのできるキス!つまるところの、ツンツン多めで何をされても彼女のことが愛しくて仕方がないのだ。
『稜さん、何故運転しながらニヤニヤしているの?ちょっと気持ち悪いんですけど~!』
「何?褒めてくれてます?だってさ~、はるさんが突然ちゅーしてくるからだよ?こんな可愛い女子にキスされてニヤつかない男なんていない!……あ、はるさんこれから道のり長そうだし…と、トイレ休憩しようと思うんだけど…近くにないかな~?」
はるさんに、気持ち悪いと言われたからなのか?これまで順調にきていた俺のお腹は、突然ゴロゴロと雷のような音を鳴らし内部から挑発を始めようとしていた。
『本当、気持ち悪いくらい褒めてくるよね?お世辞はその辺にして、トイレの看板出ていないか見とくから運転に集中してよね~』
や、ヤバい…これは本格的に
体内の暴れん坊が動き出している…
額には冷や汗が滲みだしてきた。
はるさんに本気でヤバいことを伝えたいがきっと彼女は大きい方ではなく小さい方を我慢していると思っているに違いない…
ここは正直に言うしかないか…
「……は、は、はるさん…?
わたくし…漏らしそう……」
『へ、何を?……もしかして、大きいほうですか?というか汗凄いんですけど!!何で道のり長いって知ってるくせにワイナリーで行ってこなかったのかな…我慢できないなら自分の車だしもう漏らせばいいんじゃない?私は長野から電車で帰ることもできるし全然いいのよ?』
「…それは嫌だ…許して下さい……!」
隣にいる可愛い彼女が初めて
悪魔に見えた瞬間である。
口を閉じ、運転に集中して気を紛らわすしかないと悟った俺は少しだけスピードを上げてひたすら走り続ける。口数が減った俺の様子に危機を察知してくれたのか、彼女は俺のお腹に手を置き冷房の風が当たらないようにガードしてくれていた。彼女の手の温もりで少しだけ落ち着きを取り戻してきた。
"手当て"とはよく出来た言葉だと思う。それから十分ほどでPAを発見。事なきをえた俺はコーヒーを二つ買って車へと戻った。
「あー本当危なかった!一生の汚点を見せるところでしたよ…。これで多分後一時間は大丈夫だからね♪あ、はるさんお土産どうぞ♪」
『もぉ、びっくりさせないでよね?流石の私も大量の冷や汗と口数の少なさに本気の危機を感じとりましたけど。間に合ってよかったね~。稜さん松本までどれくらいかかるの?運転疲れてるだろうし、県境ギリギリまで走ってそこら辺で適当に泊まる?』
話し合った結果、今日は山梨県の適当な宿(ラブホ)に泊まり明日の朝から松本城へと向かうことにした。ずっと運転している俺への彼女なりの気づかいなのだろう。
自分が早くワインを飲みたい
だけかもしれないが…。
「はるさん、ホテルついたら
またちゅーしてね?」
『……ばーか。』
この、ツンデレ女子め。
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