【山梨県】
【11】ドライブと葡萄畑と求婚と①
高速道路を走りだし、途中で寄った
サービスエリアの売店でノンアルコール
ビールと静岡の地ビールである
【御殿場高原ビール】や眠気覚ましの
アイスコーヒー、静岡銘菓のお菓子を
買い込み車に戻る。
土地勘がない私には全くわからないが
到着するのは夕方以降になるだろう。
千葉県からずっと運転してくれている
彼の満腹感からくる眠気を防止するために
テンション高めのロックを流し買ってきた
ノンアルコールビールを開けて渡す。
「はるさん、さすが!俺の今ほしいもの
完璧にわかってますね~♪」
『命預けてくれるなら私運転しても
いいよ?ペーパーだけど。』
「一緒に死ぬのは全然いいんだけどさ?
今はその時ではない!!
さーて、安全運転で行くよ~」
※
しばらく道なりに走ったのち、道路沿いの
標識に山梨県という看板があるのに気づく。
ようやく山梨県に入ったようだ。
「はるさん、山梨県に突入ですよー?」
ん?山梨県?
『……、山梨忘れてたー!!!』
「はるさん~、本当土地勘ないね~。」
彼の言葉を無視してスマホを取り出すと
【山梨県 ワイナリー 高速道路沿い】
と検索してみる。
あるじゃないの、ワイナリーが。
彼はビール派だが、私は二杯目以降は
ワインのほうが好きなのだ。
『ねぇねぇ、山梨のワイナリー行って
みたくない?運転もそろそろ疲れたよね?
一回降りて休憩しようよ?』
中央道双葉SAから十分ほどで行くことが
できる場所に日本の超有名酒造がやっている葡萄畑まで見れるワイナリーがあることを
知り、一気にテンションが上がる。
「双葉から十分か!なら全然問題ないよ♪
夕方には松本に着く予定だから休憩がてら
寄り道しましょ!」
彼は、カーナビに話しかけると目的地を
ワイナリーへと変更してくれた。
やはり彼は優しい。こんな我儘な私には
本当に勿体ない人だと思う。
初夏の空の下、目の前に広大な葡萄畑が見えてきた。高所にあり一日の寒暖差が大きく、周りを高い山々に囲まれている為、年間を通して降雨量が少ないこの丘は、ワイン用の
葡萄を栽培するのに最適な環境なのだ。
眼下には甲府盆地、遥か彼方には富士山を
望むことのできる正に絶景な葡萄畑。
『稜さん見て!富士山見えるね~!さっき
まで近くで見てたのに不思議な感じ~。』
……返事が返ってこない。
彼の方を見てみると何やら難しい顔をして
腕組みをしながら考え事をしているようだ。
数分観察していると突然明るい表情を浮かべこちらを見た彼。何か思い付いたようだ。
「はるさん?ワインって熟成されれば、されるほどいい味になるでしょ?二人で美味しいワインの様な夫婦になりませんか?
……俺と結婚して下さい!!」
まぁ予想はしてましたけど。
『数分考えてそれですか。…さて綺麗な景色も見たことだし、そろそろワインの試飲に
行きますよ♪あ、稜さんは匂いだけだよ(笑)飲みたいなら私運転してもいいけどね?』
「……、あれ?流しましたね?も~。俺は
匂いだけで酔える!(笑)運転はさせない!」
諦めてくれたようなので、早速ワインの
試飲に行くことにした。
ワインは好きだが別に詳しいわけではない。
試飲した感じの直感でこれなら飲んでも
頭が痛くならなさそう!というワインだけを日頃から買うことにしている。
赤と白それぞれのお気に入りを見つけた私は
満足気な顔をして彼に報告し購入する。
「稜さんこのワイン、どっちも本当に美味しいから楽しみにしててね♪宿着いたら一緒に飲もうよね~!」
『ずるいな~。アルコールほしいな~。』
飲まないとは言ったものの、目の前で私が飲んでいる姿を見て、試飲できないことに若干拗ねている彼の腕に飛び付くと車まで顔を
見つめ手をからめて歩く。
『何見てるんだよ~?
恥ずかしいからやめてよ~?』
逃げ出した彼を追いかけ車の中に入ると、
彼の名前を呼び、連れてきてくれて
ありがとうのキスをした。
うん、機嫌は治ったみたいだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます