第19話 ハリーリクの観光案内 2
ギルドを出てトテトテと歩くアナスタシアの後ろについていく。
空は快晴で絶好のお散歩日和だ。今この世界の季節は春ぐらいなのだろうか、頬を撫でる風も心地よい。
「ねえ、アナスタシアさん」
「アナでいいですよ」
「じゃあ、アナちゃん」
アナスタシアはテテテテっと小走りだす。ちょっと距離を取ると、くるっと振り返った。そしてニパーと笑って答える。
「ハイなんでしょうか」
ちょっとやめて、そんな太陽みたいな笑顔を向けられたらおじさん照れてしまうよ。
大丈夫おじさんはロリコンじゃない、ロリコンじゃない。平常心平常心。
「アナちゃんはこの街はながいの?」
前を歩くアナスタシアに追いつくように早足で歩きながら尋ねた。
「生まれも育ちもこの街ですよ。生粋のハリっこ。ハリーリクの申し子とは私のことですよ」
えっへんと腰に手を当てる彼女。威張ってる姿がおかしくて、ちょっと笑ってしまった。
「あっなんですか」
「いや、ごめんなさい。アナちゃんがあまりに可愛らしくて」
アナスタシアは照れて赤くなる。
「アナちゃんはこの街が好きなんだね」
「もちろんですよ」
アナスタシアは再び笑顔になって答えた。ころころ変わる彼女の表情を見ているとこちらまで楽しくなる。
アナスタシアに追いつき横並びに歩く。少し進んだところでアナスタシアが足を止めた。
「まずそこが、冒険者たちの宿、馬の尻尾です」
アナスタシアが指をさした先をみる。他の建物と比べて大きい。看板にベットが描かれてわかりやすくていいな。
「この町に定住していない、だいたいの冒険者の方はこの宿に住んでます」
「さっきイリーナさんが言っていたのってここのこと? アップルパイがどうのって」
アナスタシアが興奮して目を輝かせながら近づいてくる。ていうか近い。
「そうなんですよ。ここの一階にある食堂なんですけど、出てくる料理はどれも美味しいんです。そして、その中でも女将さんの焼くアップルパイが絶品なのですよ。天女の羽衣のように薄く伸ばされた生地が作り出すサクサクの食感。宝石のような輝きを放つりんごは甘すぎずそれでいて適度な酸味。その出会うべくして出会った生地とりんごが作り出す完璧なハーモニー。それはもはや芸術なんですよ。芸術!」
すごい熱意だ。
「はっ!ごめんなさい、つい熱中しちゃいました」
我に帰ったアナスタシアは一歩離れる。
「いえ、大丈夫。そんなに美味しいなら今度食べてみようかな」
そしてまた一歩近ずいてくる。もうおじさんはタジタジです。
「はい、もう絶対おすすめですよ。おすすめ」
「ええ、こんど必ずたべるね。そしたら今度はどこか買い物ができる場所はある?」
「そうですね。それじゃあ次は商店の方に行きましょう」
再びトテトテと歩き出したアナスタシアに俺はついていった。
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