第15話 ギルドのお仕事 3
「おはようございます」
入って来た獣人にイリーナさんが挨拶を返す。街の門にいたカワウソの獣人かな。今は鎧姿ではなく布の服をきている。そして、獣人だから許されるのだろうか、スボンは履かないスタイルだ。背中には自分の体より大きな箱を背負ってい、そのつぶらな瞳も相まって愛くるしい見た目をしていた。
「イリーナさん今日もおきれいっすね」
「あらあら、褒めてお茶くらいしか出しませんよ」
「いえいえ、今日は回るところが多いいのでお構いなくっす」
「あら、そうですか」
イリーナさんが少し、寂しそうな顔をした。
昨日会ったときは、もっと真面目そうなイメージだったけどこんな冗談いったりするのか。それに口調も昨日と違う気がする。もしかして人違い、いやカワウソ違いか。まあ、それはさておきとりあえず挨拶はしておかないとな社会人として。
「おはようございます」
「おはようっす、えーとっ初めましてっすよね」
あれ、やっぱり昨日会った獣人とは別人なのかな。見た目で全く判断できない。まあ、聞けばいいか。
「いえ、あの街の門で会いませんでしたか?」
カワウソの獣人があたまを、ぽりぽりかく
「ああ、多分それおいらの兄貴です。よく似てるって言われるんすよ。」
似てるっていうか同じにしか見えない。多分同じ格好したらみわけつかないとおもう。
「とういうわけで、初めましてっす。」
「ええ、初めまして、おれは……」
しまった完全に油断していつも通りに喋ってしまった。
「おれ? なんすか?」
「イエ、ワタシハメリッサ。キョウカラココデ、ハタラクコトニナリマシタ。ヨロシクオネガイシマス」
危ない、イリーナさんに言われたばかりなのに完全にいつも通り俺って言うところだった。いきなり口調を変えるというのはなれない。でもこれでごまかせたはずだ。
「なんで、急に片言なんすか?」
あれ、誤魔化しきれてない。いや、まだゴリ押せるはず。
「イエ、カタコトニナンカナッテナイ。カンチガイデス」
「なんかよくわかんないっすけど、メリッサちゃんっすね。よろしくっす」
獣人に手を差し出された。身長差があるのでしゃがんで握手を交わす。軽い感じはあるが、とても友好的な獣人のようだ。
「それで、メリッサちゃんはこの街の出身じゃないっすよね?」
「はい、昨日この街についたばかりです」
「やっぱりそうっすね。こんな美人がいたら、オイラが気づかないはずないすからね」
ああ、そうか、もしかしたら今のこの俺の身体の持ち主がこの街の出身という可能性もあったか。この感じだと違うみたいだけど。
「街の女の人に、片っ端からこえかけていますものね」
「美しい人には声をかけなけれ失礼っすからね」
このカワウソは門番の兄とは違ってかなりお調子者なのかもしれない。
「はいはい、それでは、そろそろアイテムボックスの回収よろしくお願いしますね」
そう言うと、イリーナさんがギルドのカウンターからカワウソが背負っている箱と同じ物をもってきた。
「了解っす。早速、中を確認するっす」
カワウソはイリーナさんから箱をうけとり、蓋を開けて顔を突っ込む。というか上半身つこんだ状態でお尻だけ出ている。その仕草がなんともかわいらしい。
後ろから箱の中をのぞいてみる。アキムさんにもらった魔法のポーチみたいに箱の中は広くなっているみたいだ。一体どう行った原理なのだろうか。つくずく魔法とはふしぎなものだ。
そして、中には見たことのない生き物が何匹か入っていた。おそらく冒険者たちが狩ってきたものだろう。全く動く気配はない。
「アイアンラットに、カニに、カッパーベアとカニ、あと、おお、シルバーウルフじゃないっすか。あともう一匹カニ。今日はなかなか大漁っすね」
カワウソは慣れた手つきで服の胸ポケットから紙を取り出すと何やら書き出した。のぞいて見ると、箱に入っていた生き物の名前と数を描いているようだ。あれ、そういえば俺、生まれて初めてこの世界の文字を見るはずなのに普通に読めるな。言葉もそうだが、一体どうなってるんだろう。
別に損をしているわけではないからラッキーで済ませればいいが、なんだか腑に落ちない。
第一に英語だって何年も勉強したというのに、実際に使えるのはハローとか、簡単な中学英語ぐらいなものだ。
「それじゃあ、ここにサインお願いするっす」
イリーナさんがカワウソから紙をうけとるとカウンターに置いてあったペンでサインして、再びカワウソに渡す。
「はい、たしかに承ったっす。それじゃあ、これ新しいアイテムボックスっす」
そういうとカワウソの獣人は持ってきた箱とさっきまでのぞいていた箱を入れ替えて、背負った。
「もう行かなきゃいけないんで、これで失礼するっす」
「お疲れ様です」
「メリッサちゃんもこれから大変だと思うっすけど、頑張るっすよ」
手の親指をグッて立てて応援された。やっぱり門で会ったおにいさんとは違ってのりがだいぶ軽いな。でもその感じ嫌いじゃないぜ。
「はい、頑張ります」
俺も親指グッてたててこたえた。カワウソはそれを見ると微笑えんで立ち去って行った。
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