第14話 ギルドのお仕事 2

「スカートはこれでいいのか」


 着てみたのはいいが、女性の服の勝手がわからない。ブラウスはいいとしてスカートこれであってるのだろうか。なんか足がスカスカして落ち着かないが。

 それと、スカートを履いてるのときに思ったのだけども、それにしてもこの体の腰はすげえ細えな。俺の半分くらいしか無いんじゃないか。いや、今は俺のウエストだが元の身体のというか、ややこしいなもう。

 というか、いまどういう状態なんだろう鏡は、鏡っと。

 俺は部屋に置いてある化粧台の鏡を覗き込んだ。


「これが俺?」


 殺れる。童貞とか余裕で殺れる。なんなら無双できる。清楚な感じに何処と無く醸し出される女性らしさ。やばい、惚れそう。こんな人と付き合ってみたい。

 ちきしょう、なんで、なんでこれが俺なんだ。一番近い存在なのに、逆に遠い存在みたいな。俺のこの振り上げた拳はいったいどこにおろせばいい。


「メリッサさんどうですか?」


「はい、着れました。今行きます」


 俺がやり場のない感情に振り回されてたらイリーナさんに呼ばれた。あんまり待たせるのも悪いな。部屋をでてイリーナさんがまっている一階まで階段を降りる。


「あら、とってもお似合いですよ」


「ありがとうございます」


 とりあえず、ありがとうとは答えたが俺自身が褒められた気がしない。そもそも今の感情を嬉しいのか、照れるのか、悔しいのか、喜怒哀楽のどの感情に入れればいいのかわからないぞ。

 とりあえずこの気持ちを瓊と名付けよう。


「それじゃあ、メリッサさんの着替えも終わりましたし、仕事の説明をして行きますね」


「はい、よろしくお願いします」


 よし、何事も最初が肝心だ。気持ちを切り替えて気合を入れていこう。


「まず、初めになんですけど、言葉使いをなんとかしましょう」


「言葉使いですか?」


 なんだろう、あんまり人と話す部署で働いてたわけでわない。だから、いい歳して敬語に自信がある方ではないが、そんなに変だっただろうか。それともこの世界の言い回しとかあるのだろうか。


「メリッサさんって喋り方が男の人みたいですから」


 ああ、そういうことか。でも女性ぽい喋り方は抵抗がある。何より恥ずかしい。


「やっぱりまずいですか?」


「いえ、まずくはないです」


 えっ、まずくないの?


「ですが、アキムから大体の事情は聞はききました。メリッサさんは、ただでさえ珍しい転移者ですのに、性別まで変わってらっしゃるではありませんか。もしそれが魔道士ギルドの方々に知られてしまいましたら最悪……」


 魔道士ギルドとかもあるんだ。やっぱりこの世界はなかなかファンタジーしているな。


「最悪どうなるんですか?」


「研究のためにとバラされたり、開けられたり、してしまうかもしれません」


 なに、その怖い話。というか世間一般的にはそれまずいことだと思います。そんな狙われる様な状態だったら普通に生活するのも危険なんじゃないか。


「でも、それって街を歩くだけでも危ないですよね」


「いえ、脅す様なことになってしまいましたが、知られなければ平気だとはおもいますし、何より冒険者ギルド所属していれば、魔道士ギルドの方々は簡単には手を出しこないとおもいますので一応は大丈夫だとはおもいます」


 なんだ、お互いの領域には干渉しないみたいなルールでもあるのか。少し安心した。


「それでも、用心したほうがよろしいかと、研究熱心な方もいらっしゃいますから」


 それでも、ルール的なものを守らない方々もいるのか。たしかに用心しよう。


「分かりました。言葉の方は努力します」


 そうは言ったもののいきなり、口調を変えるのは難しそうだな。なんかオカマぽくなる未来しか見えない。でもやるしかないか。これも仕事だと思って割り切ろう。


「はい、それじゃあ朝のお仕事から説明をさせていただきますね。そろそろいらっしゃる頃だとおもうのですが」


 いらっしゃるって誰のことだろうか?


「あ、ちょうどいらっしゃったみたいですね」


 えっ誰が? というか音も何もしないのになんでわかるの?

 するとギルドのドアが開きだした。本当に誰か来た。


「おはようございますっす」


 開いたドアから一人のカワウソの獣人が、ギルドの中に入って来た。

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