第13話 ギルドのお仕事

俺は日の出ともに起きた。まだ昇りきらない太陽を求め窓を開けると。


「綺麗だ」


 思わず声が漏れた。まだ寝ぼけている俺の目に朝日の映える湖美しい光景が飛び込んできたから。

 本当に綺麗だ。この景色だけでも観光地と成立しそうだ。これであと温泉でもあれば最高なんだがな。ないものをねだっても仕方ないか。

 よし、ひととおり景色も堪能したし顔でも洗おう。

 俺は気持ちのいい気分のまま、洗面所に向かう。そこには流し台と小さな鏡、流石に水道は完備されず、湖から汲んだ水を水瓶に溜めているようだ。その水を桶にくみあげ顔を洗った。

 冷たくて気持ちいい。

 冷たい水で引き締めらさっぱりとした顔を上げ鏡をみる。

 そこに映っているのは見覚えのない銀髪の美女だった。


「誰だ。お前」


 後ろを振り返る。誰もいない。もう一度鏡をみる。そこに映っているのは一人だけ。


「誰だって、俺か」


 しかし、慣れないな。俺はこれから毎日、鏡をみるたびにこのゲジュタルト崩壊を起こしそうな現象を体験しなければいけないのか。

 しかも、自分の顔を見るたびに可愛いとかおもってたらとんでもないナルシスト野郎だ。

 実際、可愛いからしかたがないのだけども。

 顔を拭きながらギルドの受付カウンターのあるロビーにいく。


「掃除でもするか」


 昨日いろいろ、助けてもらったししこれぐらいはやっておかないとな。それに、これからここで働くのに少しでも心証をよくしておかないと。感謝と打算のハーフアンドハーフだ。

 掃除道具は洗面所の所に置いてあったからそれを使って、とりあえず床を掃いてテーブルでも拭いておこう。

 掃除をし出してから、多分15分くらいだろう。時計がないからあくまで体感だけど。ギルドの正面ドアから昨日と同じローブを着た、イリーナさんがやってきた。


「おはようございます」


「メリッサさん、おはようございます。あら、掃除してくださったのですか。ありがとうございます」


「いえいえ、お世話になってるからこれくらいは当然です」


 イリーナさんは朝から綺麗だな。あれ、でもアキムさんがいない。イリーナさんひとりなのかな。


「アキムさんは一緒じゃないんですか?」


 二人は夫婦だからてっきり一緒に通勤してるもんだと思ったけど。


「メリッサさんに渡さないといけないものがあったので、先に来ました」


 そういうと、イリーナは手に持っていた物をテーブルの上に置いた。


「私が着ていたもので申し訳ないのですが、これギルドの制服です」


 イリーナさんから差し出されたのは、

 白いブラウスにハイウエストのコルセットスカート。あれ、これ知ってる。童貞を殺すやつだ。


「制服って、これを俺が着るんですか?」


「はい、もちろんです」


 これ着ないといけないかんじなのか。まだ流石にこんな女性らいしい格好をするのに抵抗がある。スカートなんて履いたこと無いし、なりより恥ずかしい。こころ準備ができてない。いや、でも待てよ。イリーナさんが着てるのって普通のローブだよな。


「イリーナさんはこれ着てないですよね」


「私は妊娠しているので、お腹を締め付けるデザインのものはちょっと」


「ですよねー」


 だよね、そういう理由だよね。じゃあやっぱり着ないとダメか。まじかー、まじかー。


「これ、どうしてもですか?」


「はい、どうしてもです」


 あーもう、覚悟を決めるか。


「じゃあ、着替えてきます」


「はい、お待ちしております」


 人生初の女装? なんかもういきなり前途多難だな。これから、上手くやっていけるだろうか。

 胸に不安をかかえ俺は、イリーナさんから受け取った服を持って着替えに向かった。

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