第12話 明日の事は明日の俺に任せる
星が綺麗だ。湖に星の光が降り注ぎ幻想的な風景を作り上げている。
とういか周りが暗い。果てしなく暗い。星以外の光がほとんどない。
日本も昔はこんなふうに夜は暗かったのだろか。
今、俺はギルドの二階の部屋の窓から外をみていた。部屋の明かりにはランタンが一つ置いてある。
昔住み込みで働いていた冒険者の部屋だったらしい。一応家具はそろってるし、今は誰も使っていないからそのまま住んでいいとアキムに言われた。
「ラッキーだったな」
そんな一言で済ましていいのかわからない。ほんとうに今日はいろいろありすぎだ。
わけもわからず洞窟で目覚めて、いきなりゴブリンに襲われたときはどうなるかと思ったし。ここに来るまで、見るもの何もかもが現実離れしていた。
しかし、初日にして住むところと仕事を見つけられたのはかなり幸運だった。元の世界ではリーマンショックだのなんだのとかで何十社と面接を受けて、やっと就職できたというのに。あれと比べればかなりイージーモードだ。まぁ、でも全部アキムさんのおかげなんだけど。
でも、なんで、アキムさんはあんな所にいたんだろう。冒険者のだから? 本当にそれだけなんだろうか。俺が目覚めてダンジョンが崩れる前。タイミングが良すぎないだろうか。それに親切すぎる気もする。
「いや、むやみやたらに親切にしてくれた人のことを疑うのはよくないな」
それとは別に自分の体のことも気にかかる。俺は確かに男に生まれたはずだ。でも、今は完全に女の体だし、説得力はゼロだろう。しかも、この身体になってから、なんか身軽なった気がする。あと目は分かりやすく良くなってる。この暗さでも、周りの景色を確認することができる。
「もしかして、この身体に元の持ち主がいたりするのかな」
俺はこの身体を奪ったことになるのか。だとしたらかなり申し訳のないことをしてしまっている。
「まあ、考えても、しかたないか」
情報が少なすぎる。俺はこの世界のことはほとんど知らないし。それに返せと言われても返しかたもわからないし。
「寝るか」
窓を閉めて、ベッドに横になる。少し硬いがそこまで悪くない。夜になると特にやることなくなるな。ランタンの灯りを消す。ちなみに、このランタンも魔道具で触ると魔力に反応して光る物らしい。使い過ぎると疲れるから気をつけてくれっていわれた。
イリーナさんとはいろいろ誤解があったが明日から受付嬢として、働くことになっている。イリーナさんが産休に入る前までに仕事を引き継ぐかたちだ。正直言って不安だ。今までの人生で接客業というのはやったことはない。
「なるようになるか。明日のことは明日の俺に任せよう」
とりあえず楽観的になった俺は、そのまま夢の世界落ちていった。
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