第11話 ようこそハリーリクへ 4
アキムは馬車をギルド前に止めた。
ギルドの横には湖があるが広がっている。そして、その湖に面してひらけた場所があり、訓練所なのか、人ぐらいの大きさの藁人形が何体かたてられていた。
「はい、着きましたよ」
アキムと一緒に馬車を降りる。太陽が湖に沈みかけてもうすぐ日が暮れそうだ。
「それじゃあ、今いるみなさんに紹介しますのでついてきてください」
自己紹介か、やっぱりこういう場面はいくつになっても緊張する。
アキムとドアを開けてギルドの中に入る。
中にはいくつかのテーブルがあって、そこで冒険者ぽい方々が談笑していた。
そして部屋の奥にはカウンターがある。
おっおー。美人だ。美人の受付嬢はんや。容姿端麗。窓から差し込む光を受けて金色に輝く長い髪。それに宝石のように透き通る白い肌。彼女が身にまとう黒色のローブがそれらをさらに際立たせ大人の色気を醸し出している。やっぱりエルフとかなのだろうか、アキムみたい耳が長い。
「イリーナ今戻りましたよ」
アキムが受付嬢に声をかける。街の門のところで話していたイリーナという人はこの美人の受付嬢さんのことだったのか。
「あらあら、アキムさんおかえりなさい」
笑顔でイリーナがカウンターから出てきた。あ、カウンター越しでは気づかなかったけど、お腹が大きい。妊婦さんだ。
そのままイリーナは笑顔を崩さず、スタスタ歩いてアキムに抱きついた。一見、二人は仲の良いカップルのように見える。アキムの首元に抜き身の剣さえ当てられてなければ。えっなにこれ修羅場?
「それで、アキムさん。貴方の臭いがする、そちらのお嬢さんはどちら様でしょうか」
臭いとかわかんの。顔はわらっているのにイリーナから殺気が送られてくる。やばいここで返答を間違えば確実に死ぬ。
「イリーナ違います。そういうんじゃないです」
アキムさん、もうちょっとちゃんと説明を。
「あらあら、私は怒ってはないんですよ。妻の妊娠中に旦那が浮気なんてよく聞く話ですから」
ほら、完全に変な誤解を受けてる。
「ちょっとまって俺の服が汚れてたから、アキムさんのローブを借りてただけで」
「あらあら、その服はなんで、着替えなければいけないほど汚れたのかしらね」
ごめん、アキムさん余計に話がこんがりました。
「イリーナ、落ち着いてください。この人はイリーナの代わりに……」
「あら、私の代わりになんなのかしら」
イリーナの持つ剣にさらに力が込められる。誤解が誤解を呼んで行く。なんとかしなければ。
俺はポーチから服を取り出す。
「アキムさんに、血まみれの所を助けてもらいまして。それに、いくあてがなかったからここで働かないかとお誘いを受けたんですよ」
イリーナが剣を下ろす。アキムの首すじからちょっと血が出てる。
「あらあら、それならそうと最初に言ってくださればよろしかったのに。」
いやいや、問答無用だったよね。なんの迷いもなく剣を突き付けたよね。
「なにか?」
「いえ、なんでもないです」
笑顔なのに殺気がハンパない。下手なことは言えないです。はい。
アキムは首元に手を当てて、なんか光っている。
「状況はよく分かりませんが、それじゃあ自己紹介をしないとですね。私はギルドの受付をやっているイリーナ・ロージンです。そしてアキムの妻です。よろしくお願いしますね」
先ほどの殺気をはなっていた笑顔とは違う素敵な笑顔だ。
「メリッサです。よろしく」
アキムは光ることをやめた。首の傷が無くなっている。回復魔法とかだったのかなあの光は。
しかし、こいつギルドマスターなのに美人の受付嬢に手を出してたか。ただの優男かと思っていたのにやることはやってるんだな。
「メリッサさん、今ものすごく失礼なこと考えてません?」
「いや、別に」
ん、とういうかイリーナさんの代わりってもしかして。
「あの、アキムさん人手不足の事務職って?」
「はい、ギルドの受付です」
まじか、それっておっさんがやっても良いものなのか。いや確かに受付をおっさんがやっている場合もあるだろうけど、なんかテンション下がらない? これから冒険だって時におっさんに見送られるの。
ハッ!忘れてた。俺は今美少女になってるのを。
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