第3話 お目覚めは洞窟?の中で 2

どんな時も冷静を失ってはいけない。自分の置かれている状況を確認しよう。

 まずはいま座っているところからだ。

 なんだろう石の台座かな。

 台座の下には、なにか台座を中心にして模様が描かれている。漫画とかでみたことあるような魔法陣みたいだ。

 ここでなにかしらの儀式が行われていたのだろうか。ていうか生贄か、俺は生贄にされていたのか。

 部屋を一周見渡してみる。

 魔法陣のまわりに松明が五つほど燃えている。この部屋を薄暗く照らしている明かりこれだろう。壁も完全に土だ。洞窟の中にいるとみて間違いなさそうだ。そして部屋の入口には緑色の小さなおじさん…… え、なにあれ、いつの間に現れたんだ。というか、あの緑色の小さなおじさん絶対に人じゃない。しかも、こっちを見てる。完全に目が合ってしまった。


「目覚メタ、目覚メタ、宵闇ノ女神」


 宵闇の女神。なにを言ってるんだこいつは。


「ミンナ、コイ、目覚メタ、ミンナ、コイ」


 緑色の小さなおじさんは、そう言うと走り出した。仲間を呼びに行ったぽいな。ヤバイ、どうしよう。


「コッチダ、ハヤク、コッチダ、宵闇ノ女神、目覚メタ」

「儀式シッパイ、オウガ様、イッテタ」

「ソト、ハレテル、ネエ、アソブ、アソブ」

「オ前、ウソヨクナイ」


 うわーなんかぞろぞろやってくる。こうなったら奥の手を使うしかない。


 奥義蛇睨蛙擬死


 俺は台座の上に仰向けになり蛇に睨まれた蛙のように動かない。そう簡単にいうなら死んだふりだ。


「ホラ、目覚メゼメテル、ン、アレ、目覚メテナイ」

「ヤッパリ儀式シッパイ、オウガ様、ウソツカナイ」

「ナンダ、ココデアソブノカ、ココクライ、ソト、ソトデアソブ」

「オ前、ウソツキ」


 なんとか誤魔化せたか。

 薄眼を開けて様子を確認してみる。一、二、三、四。緑色の小さなおじさん、もう長いから緑おじさんでいいや。緑おじさんが四人いる。しかも四人とも剣ぽいもの持っている。このまま上手くやり過ごせればいいのだが。


「オカシイ、タシカニ起キテタノニ、ナイフダッテ抜ケテル」

「本当ダ、ナイフ抜ケテル、刺シナオス、オウガ様、オコル」

「ナンダ、ナイフデアソブノカ、サシテアソブノカ」

「オ前、早ク刺シナオセ」


 なんかまずい展開に、緑おじさんの一人がこっちに近づいてくる。ええい、こうなればやけよ。俺は一気に立ち上がった。


「え、えーと、我は宵闇の女神である。控えおろう」


 緑おじさんの動きが止まった。


「目覚メテタ、ヤッパリ目覚メテタ」

「オキタ、アソブ、アソブ」



 近づいてきていた緑おじさんの一人が喜び出した。つられてもう一人飛び回ってる。残りの二人は固まってしまている。

 このまま勢いでいけるか。


「ええい、静かにしろ」


 はしゃいでいた二人もしゅっと大人しくなる。言うことをきくみたいだ。これなら今の状況のことも聞けるかもしれない。


「我はまだ目覚めたばかりで状況が分からぬ。お前たちは何者でここでなにをしている。」


「俺タチハ、ゴブリン」

「ココ、見張ル、オウガ様、イワレタ」

「オレ、アソブアソブ」

「・・・・・・・・・」


 ゴブリンってあのゴブリン。チュパカブラ並みに伝説の存在だと思ってたけど、実在したんだ。あとなんだ、急に一人だ全く喋らなくなったけど、人見知りなのか。


 「そのオウガとはなんだ?」


 さっきから名前がでてるオウガについてきいてみた。

 緑おじさん改めゴブリンは答える。


「オウガ様、トテモ強イ、逆ラエナイ、殺サレル」

「オウガサマ、アソブデキナイ、スグオコル」

「オウガ様、今日デテイカレタ、シバラクハ戻ッコナイ」

「・・・・・・・・」


 オウガとか言う奴はゴブリンのボス的な存在だろうか。とりあえず居ないみたいで助かった。

 あとは、ここから脱出しなければ。


「我は外に出たい案内せよ」


「外マダ太陽デテル、暁光ノ女神ノ時間」

「宵闇ノ女神、太陽、キケン」

「ソト、アソブ、デキナイ」

「・・・・・・・」


 暁光の女神。また知らない単語がでてきた。でも今は、そんなことよりここから早く外に出たい。多少強引だが。


「かまわぬ。外に案内せよ」


 これで外に出してくれればいいんだけど。

 あれ、なんか固まって相談し始めたぞ。


「ナンデ、太陽デテル、外デタガル」

「オカシイ、太陽アタル、宵闇ノ女神、シヌ」

「モシカシテ、ニセモノ」

「ソウダ、ニセモノダ」


 え、宵闇の女神は太陽にあたると死ぬの。しかもゴブリンたち武器を構えてこっち向き始めるし。再びピンチか。


「いや、待て我はそのことは我も忘れてた。だから武器をしまえ」


「ウソダ、モウダマサレナイ」

「ニセモノ、ユルスナ、ユルスナ」

「ニセモノ、サシテ、アソブ」

「オ前ラ、イクゾ」


 ゴブリン達が一斉に襲ってきた。絶体絶命か!

 俺は台座から飛び降り逃げようとした。

 その時だった。


「インフェルノフレア」


 その声が聞こえたのと同時に、部屋全体が爆炎で包まれたのは。

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