第2話 お目覚めは洞窟?の中で


 薄暗い部屋で目が覚めた。

 意識がまだはっきりとしない。今わかることで、確かなのは俺が仰向けになっているということだ。


「助かったのか?」


 まじか、あれだけの事故に巻き込まれて生きているのなら本当に奇跡だ。

 いまだにぼーとした頭で天井を見た。

 あれ、俺はこんなに目がよかったか?薄暗い明りなのに天井のごつごつがよくみえる。


 えっごつごつ?


 おかしい、確かに俺は病院に運ばれたはずだ。なのになぜ、天井はあんなにごつごつしてるんだ。ていうか土だ。


「どこだ、ここは」


 そういえば気を失う前まであった全身の激痛は消えている。麻酔のせいで、おかしな幻覚でもみているのか。


 状況を整理しよう。たしか俺はいつものように出勤するため道を歩いていた。いつも通りパンダの看板のところを右に曲がり会社まで、あと100メートルってとこでだ。


 ドゴォーン


 爆発に巻き込まれた。

 多分ガス爆発か何かだと思う。映画みたいだなあとのんきに思った記憶はある。

 三十年間生きて、まさかこんなことに巻き込まれるとは、全く想像してなかった。走馬灯を一通りみながら救急車で病院に運ばれた。


「先生、出血がひどくてバイタルが低下しています」


 そんな声がかなりぼんやりだか聞こえたのは覚えてる。


 たがら俺は病院のベットで寝ているはずで、天井が土のはずがないのだ。ためだ余計に混乱してきた。


 右手を上げてみる。あんなにおかしな方向に曲がっていたのに、どうやらちゃんと動く。ギプスなんかもしてないようだ。え、こんなにすぐ治るの? 現代の医療技術はここまで進んだのか。

 左手も確認してみる。点滴なども繋がれていない。手術服だろうか白い服を着ている。ていうかあれ、俺の指はこんなに細かったか。まるで、女の人の指みたいだ。

 いや、まさかな、確かにさっき声を出した時にも違和感はあった。でもそんなことある訳ないし。


 「あーーーー、」


 うん、女性の声だ。いや、ちょっとまってまだ決まった訳じゃない。恐る恐る手を胸に当ててみる。


 ふくらんでる。


 えーーーまさか寝ている間に、タイとかに連れていかれた? だめだ意味がわからない。


 胸に当ててる手に何か硬いものがあたった。なんだこれ、なんかもう確かめるのが怖いが視線を胸にやる。


「医療ミスってレベルじゃねえぞ」


 刺さってる。まじで刺さってる。え、何がって、そりゃナイフが。

 え、何、誰がやったの。血も出てるし、もう色々盛り込みすぎだよ。カオスだよカオス。

 だめだ一回落ち着こう。パニックになるのはよくない。よし、まずは上体を起こして深呼吸しよう。


 スーー

 ハーー

 スーー

 ハーー

 ヒッヒッフー


 ってラマーズ法かい。

 一人でやってて悲しくなってきた。でもくだらない事をやったおかげで気持ちにだいぶ余裕がでてきた。

 ていうか、確かにナイフは刺さってるのに全然痛くない。血もよく見れば乾ききっている。

 ナイフを掴んでみる。やっぱり何も感じない。ちょっと引っ張ってみる。血が出てくる感じもしない。いけそうだ。俺はナイフを引き抜いた。

 やっぱり何も感じない。ナイフの刺さってた場所をさわってみる。傷口もなく刺さってたあとは消えていた。

 分かった。これは夢だ。そしたら全てのつじつまが合う。ほらこうやってほっぺをつねっても。


「痛い」


 あれ普通に痛い。え、なに、夢じゃないの? じゃあなんなの? それならここはどこなの?

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