第26話 盗賊団とレスラント公国軍
それは地平線と空の境界線に 土煙が舞い、数十の騎馬と数百の兵が見て取れた。それらを最初に見つけたのは従者見習いのユージーン達だった。領主の館に戻ってきたユージーン達から報告を聞いた。
「報告します敵兵およそ200その内騎馬が20程度です。北西側から現れました。軍団を示す旗は何も揚っていませんでした」
ユージーンは矢継早やに言葉を繋いだ。周りががやがやと騒然としてきた
「敵がこちらに着くまではどれ位かかりそうだ?」
俺は神妙な趣で尋ねた。
「はい、約半日ぐらいでこちらに着くかと思います」
規模からして盗賊を装ったエスラント公国軍であろう。これからの対策について考えねばならなかった。
「俺が出ようと思うんだがどこかを敵を誘き寄せるような場所はないかな」
「それならばダンジョンが良いかと存じます」
そうラロが教えてくれた。
「ラロとユージーン達従者見習いは住民を館に避難させる様に頑張ってくれ。あと一人はエリザベスに援軍と事の経緯を伝える様に伝令に走ってくれ」
「領主様かしこまりました皆聞いたな。ジョスリンはエリザベス様に伝令に行け。他の者たちは避難させるぞ」
ラロはテキパキと指示を出していった。
「アーノルドの従者隊は借りるぞ。敵をおびき寄せるのに使いたい」
俺はそう言うと戦の支度を始めた。といっても特に鎧を着る訳でもない。ただバックパックを背負うだけだ。馬ではいかない事にした。馬上での戦いは経験した事が無いので、できれば石を拾って投げつけてやりたい。
「準備できました領主様」
そう言ってアーノルドの従者見習いたちは整列していた。
「緊張しなくても大丈夫だ。アーノルド達はダンジョンに潜っているだけだと思っていればいい。ラロ、館の方は任せるぞ」
「お任せください領主様こちらはやっておきます。ご武運を祈ります」
ラロやサブリナたちに全てを任せて俺は敵兵に向かった。向かう途中にありったけの石を拾うようにアーノルド達へ指示していた。簡単に説明すると俺の作戦はシンプルだった。敵を見つけたら石をぶつけて注意を引く。その後ダンジョンにおびき寄せて全員を中に入れる。ダンジョンの中では数の有利が働かないので細かく各個撃破していく。
正直に言って野球しかやってこなかった俺にとって戦法などというものは何一つ知らないので、こんなことぐらいしか考えつかなかった。 エリザベスには援軍の依頼を出したが来てくれるかどうかは分からない。俺がやられた時に敵が引いてくれれば、良いのだが… そんなことを思いながら望遠鏡を使い敵の姿を探していた。
「敵発見しました1時の方向です」
アーノルドに言われて1時の方向を見ると確かに200人ぐらいの団体がいた。 俺はアーノルド達に石で騎馬を狙うように指示しておき前に進み出て名乗りを上げた
「ここは俺の領地だ貴様ら何者だ名前を名乗れ」
俺はアーノルドたちを後ろに控えさせて敵から50 M ぐらいの位置で石を持って佇んでいた。名乗りを上げようと出てきた男に対して俺は卑怯にも持っていた石を全力で投げつけた。
「ぐぁうあ、卑怯だぞ。全軍攻撃しろ」
名乗りを上げようとした男はそう叫びながら石の当たった腹部を抑え倒れ込んでいた
20人ぐらいの騎馬が先頭に立ち追いかけて来たがアーノルド達と石を投げつけてやった。落馬した相手をバットで止めを刺していく。乗り手のいなくなった馬はケツを軽く叩いて逃がしてやる。最初の20人の騎馬はあっさり倒すことができた。やはり身体強化魔法の影響で200 km 近いスピードで飛んでくる石を交わすのは容易ではなかった。
しかし手持ちの石も今のでもう無くなってしまった。敵を引き付けつつ俺たちはダンジョンへこもって行った。
俺の背後をカバーすることだけをアーノルド等に指示しダンジョンで気配察知を巡らし人数の少ないところから順々に攻め入って行く。最初に狙うのは敵の剣だった。剣を神の加護のある俺のバットで叩き折る。折れた瞬間に見えないスイングで敵を叩きのめすのだ。 ダンジョンの中では敵は集団では入ることはできないので5-6人に別れて行動している。こちらのほぼ狙い通りと言っていいだろう。
相手も領主が子供だと侮っていた。何人やられても彼らは俺達が子供だと侮ることをやめることなかった。 40回ほどの戦闘で相手は居なくなった。ダンジョンでモンスターを相手に40回対戦することなど普通のことだったので別段強いとも思わず、ついつい200人倒してしまった。だが時間は夜半を過ぎておりダンジョンを出た時は外は真っ暗だった。
ダンジョンを出ると真っ暗な空の中に一箇所赤く燃えている場所があった。領主の館だ。拭えぬ不安と共に俺は皆と一緒に領主の館へと引き返していくのだった。
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