第23話 ダンジョンと村の様子

村の集落は領主の家から少し離れた場所にある。以前の領主が反乱を恐れて場所を離したのか。理由はうかがい知ることはできないが、ある一定の距離をおいた方が良いことは確かでもある。


集落は北側の林を背に中央に走る川に沿ってまばらに家が散らばっていた。しばらく歩いてみると領民は子供と老人が多く。実際に働ける年齢層が少ないことが分かった。つまり働ける年齢層は奴隷としてさらわれたに等しいのだ。


俺はここに来て一つの間違いに気づいた。領民のさらわれた家族を探し出すということを怠っていたのだ。しかし、買っていったであろう貴族連中に喧嘩を売ることになってしまう。買い戻しに応じてもらった人たちだけでも帰してやることはできないだろうか。


俺はずるいかもしれないが、この事については ラロとサブリナに任せる事にした。サブリナは了承してくれた。年齢を言い訳にはしたくないが、こういった交渉の類は大人であるほうが有利に働くのも事実であった。


ダンジョンは集落の東側にあった。そこは隣国であるレスラント公国との境界線にあるので、都合が良かった。 モンスターが氾濫しないのか疑問が残ったのでラロに聞いてみた。

「ダンジョンは潜らなければモンスターが増えるんじゃないのか?」

「入る人がいなければダンジョン内に充満する魔力は増えないので、モンスターも増えないと言われています。ですが何十年かに一度はやはりモンスターが溢れ返る時があるようです」

「モンスターが何をドロップするのかわからないし、中の様子も見たいので近いうちに一度ダンジョンに潜ってみないといけないな」

「そうですね。領民の訓練がてらダンジョンに潜るというのも一つの方法として考えてみては如何でしょうか」

「先ほど見てきたが集落は子供ばかりだ、それは厳しいのではないかな」

「子供というのはあながち侮れません。成長が早く数年で立派な騎士となる者もおります。そういった領民を指導していくのも領主の役目でしょう」


ラロは民に厳しいなあ。そんなこと思いながら、領民の自主性に任せようと思った。募集して一緒に入りたいというものがいれば一緒に入る。それではどうだろうかとラロと話し合った。


数日のうちに集落にはおふれが出された。


『ダンジョン攻略希望者求む。達成者には騎士への叙勲を検討する』


元々中級のダンジョンを攻略すれば、騎士の資格は得られるので、後は俺とエリザベスの元で雇うか雇わないかの問題だった。そして同じ雇うのであれば、若くて成長が見込める若い世代の方が都合が良かった。


成人未満の十歳程度の子供達が10人ほど集まった。聞けば親を奴隷狩りで失ったり、両親が他界してしまった食い扶持のない子供が多かった。俺は彼らを従士見習いとして雇うこととした。給金は1日あたり銀貨1枚とダンジョンでのインセンティブになるだろう。いきなり無手でダンジョンに挑めというのも無茶というものだろう。彼らが欲しいと言う武器と簡易な鎧は準備させてもらった。彼らが成長すれば領軍の一員となるだろう。


初めてのダンジョンをいきなり潜るのは危険なので、俺が引率という形でついて行った。 10人居たので、隊を2つに分け一番年長の者をリーダーとして据え置いた。名前をアーノルドとユージンという共に12歳だった。身寄りは既になく、領地で雇うことがなくとも、冒険者になったであろうことは分かり切っていた事だった。彼らにしてみれば得物と鎧を準備してもらえる分マシだと思っていることだろう。


二人共小汚い格好をした子供だが、浮浪児よりはマシではある。ギラついた目をしてやってやるという気概に満ちていた。ラロの言っていた事はこういう事なのだろう。


引率しながらホーンラビットを一瞬で狩って行く俺を見て子供達は囃し立ていた。

「領主様強ええ」

「全然振りが見えない」

「人間じゃないよ。きっと」

「3年であの領域に届くわけがない」


そんな子どもたちを見て俺は少し偉そうに笑っていた。子供から憧れの目で見られるのもたまには悪くない。村の居心地はそれほど悲観するものでも無いのかも知れない。


冒険者ギルドのようなものはないので、必ず引率として、ラロか俺が居るときに限りダンジョンに入ることができること。倒した獲物のをドロップだったり売却する部位は領主の館で買い取ることを取り決めた。


従者見習いとなった彼らは少しだけ明るくなった未来に対して希望を抱いていた。彼らの中には妹や弟といったダンジョンに入ることも出来ない更に幼い子供もいた。その子供たちをまとめて教育する施設も考えていかなければいけなかった。やることはいっぱいある、けれど人手は全く足りなかった。

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