第21話 木こりと賦役

新たな家事手伝い及び事務員としてジョスリンという領民を雇った。領民の年収が平均で年に金貨24枚なので、倍の金額で雇ったところ夜伽は出来ないと言われた。慌てて俺は夜伽の必要はないと説明し、 ラロにもパワハラしないように注意しておいた。


ジョスリンはドイツ系の顔立ちといえば良いのだろうか。目鼻立ちがスッキリした美人だ。女性に年齢は聞かないことにしているが、たぶん18歳くらいだろう。簡単に簿記について説明した。まずは品目と収入と支出についてまとめ方について、教えていった。自分自身が簿記という資格を取っていないので、あまり詳しくは説明できないが品目と収入と収支は分けて計算するようにという風に教えて行った。またその収支の計算については各事業ごとに行うことにし例えば賦役で収入がいくらで支出がいくらと言ったような形だ。


この話を説明し終わった時にジョスリンの目は輝いていた。

「こんなやり方あったんですね。領主様は子供なのにすごいです」

16歳で子供扱いもちょっと困るが、まあいいだろう


ジョスリンには他にも家事や料理洗濯なども一緒に行ってもらっているが働き者で明るく人気もある問題のない女性だった。料理に関してもまずいといったものはなく普通の味付けの料理だった。調味料の少ない異世界においては頑張っている方だろう。


俺とラロは賦役についてどうやって運用していくかについて考えていた。賦役の期間は明確にはしていないが基本1年とし、1年後に金貨1枚を持たせて放り出される。賦役後に木こりとしての2年目を過ごしたい場合は、木こりとして村民の扱いを受けることが可能とする。


俺はラロと賦役を行う者を連れて北の林に入った。まずは念入りに魔力で周辺の察知を行い魔物が居ないことを確認する。その後で木こりとしての見本をまず見せてみる。確か自分の記憶では最初に半分ほど斧で刻みを入れて、その後に反対側を斧で切り倒し刻んでいくことによって自分じゃない反対側に木を倒すことができる 。要は最初に倒したい側に切り口を低めに入れ、今度は反対側から少し高い位置に斧を入れていくと木は自分の反対側に倒れた。


スイング自体は普段使っているバットとあまり変わらないので、見えないスイングで斧を入れていくとわずか3スイングで太い木が倒れていった。これは全部俺が斧で倒して囚人に運ばせた方が早いかななどと思っていると、ラロに猛反対された。


囚人と領主では立場が全然違うということを理解させなければいけない。あまり近しい位置関係にいると後ほど困る事になるだろうと、はっきりと発言された。囚人は50人いるので反逆でも起こされると大問題になる。普段から恐怖である程度しばっておく必要はあるというのがラロの考えだった 。ラロの説明にも一理あるので採用することとした。確かテレビドラマでは従業員の意見を採用することも重要な上司の仕事であるとやってた気がする。


囚人から奪った馬を木材運搬用として利用し、街の木こりと一緒に乾燥場へ運ばせた。木材を乾燥させる場所だ。


木材は湿気っているとなにかの際に曲がってしまうので、乾燥させる必要があった。そこで乾燥場で日差しを当てて乾燥させる。乾いた木から皮をはがし木材へと精製していく。


ここまでが囚人の賦役とさせてもらった。今更だが賦役とは普通は税金のかわりに農家がする公共事業なものだが、まれに囚人に課す仕事のことを指す。ただ、このまま賦役を行ってもやる気がでないと思うので、2年行ったものの中で2名に新しい家の権利を抽選で与えると伝えると大喜びしていた。


囚人が50人がかりで家を立てても月に2つが限度だろう。囚人の管理や賦役の管理はラロに全て一任することにする。監視用の笛のようなものを作って囚人が逃走したり、魔物が出た時は笛を鳴らすようにラロに十分に気をつけるようにと笛を与えた。


笛は道具屋から買って来たものだ。この笛と見張り台、狼煙が防衛には不可欠になると思うので見張り台用の木材を最優先で確保するようにラロには指示した。また領地の地図づくりなどやりたいことはたくさんあったが人手が足りなかった。 とりあえず従者は後二人は雇わないと話にならないだろう。


そんなテキパキと指示を出していく俺を見てエリザベスは感心していたようだ。

「やるではないかアラタ。普通の領主になって家宰や従者に任せきりというのが多いのだが、教育なしでちゃんとできるのは、その年ではすごい」

エリザベスに褒められてちょっと照れくさかったが、まあこれくらいはやらないとね。異世界だし簡単に死んじゃうよね。俺の安全もかかっているので当然しっかりやるのは当たり前である。


「やはり礼儀作法については心配なところがあるから若い家宰候補を送ることにしよう」

そうエリザベスは言葉を残し自分の領土へと帰って行った。

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