第18話 騎士爵位

今回もらった騎士爵位だが貴族としての地位は最下位で領地を持ってると言っても、それは村のような小さな領地である。今回自分が賜る領地はタゴサ村といい 、人口200人程度の小さな村である。特に特産というものはないが特例としてダンジョンがついている。ダンジョンの規模としては中規模のもので産出するものも、なかなかのものである。だが、現在領主がいないため封鎖されているのが現状だ。


「いいかよく聞け。この領地はこれからライトニングハンマー騎士領となる。」

エリザベスが現状について詳しく説明してくれる。

「この領地はダグラス伯爵家とアルスの町の中間点にある村になる王都とレスラント公国にも隣接しているため立地条件は非常に良い。そのぶん侵略も受けやすく、戦のない年はない」

「えぇ、そんな大変なところ俺にできるかな」

「できるかではない。やってもらわなければ困る。私も推薦している立場になるのでな。だが基本的には強い人がその領地を守れば安定はするだろう。条件は揃っていると思う」


非常に難しい顔をしながら目の付け根をつまみながら難しい顔でエリザベスはこう言った。

「問題はその強い人だが一人で行って守らなければいけない。なぜなら騎士が一人もいないからだ。最後の騎士だったものは先月戦死した。故にアラタが最初にして最後の騎士になる。もちろん領民の中から従者というものを選んでも構わないが、人さらいが跋扈している分、従者となれる人材も限られてくると思っていた方が良い」

「おいおい、ずいぶん酷いな。さしずめ俺は出る杭は打たれるということなのかい」

「そうだな現王太子の強い意向があったと聞いている」

ふぅと深いため息とともに固い場所の椅子にもたれかかる。


「ダンジョンがあるって聞いたんだけどそれはどうなってるの」

「誰も管理できないから封鎖されてるよ」

「ねぇエリザベス、俺が騎士になっても何も良いこと無いんじゃないのこれ。今からでも辞退すること可能かな」

「その場合は職務放棄で死刑だ。残念だったな。だが悪いことばかりではないぞ。発展させればその領地の収入はお前のものだ」


俺はかなり難しい顔をしていた。俺はまだ高校1年生の16歳なのだ。高校1年生の俺に処理できる内容の問題ではない。神様のスキルによって若干強くなってはいるが先行きは真っ暗だった。俺のしょんぼりしている顔を見たエリザベスが申し訳ないと思ったのか、こう切り出してきた


「我がダグラス伯爵家よりしばらくの間だけだが応援という形で家宰と従者を一人出せるかもしれない。支度金は金100枚が相場だ」

「エリザベス、それは本当か。1年位は、それくらいはその人達は居るんだよな」

業務の引継ぎで一か月だけ派遣するなどと言われても困ってしまう。

「ああ、もちろん1年くらいは貸し出しすることは可能だが、ちょっと問題が多い人物であることは否定できないし、覚悟しておいてほしい」

「従業員も問題あるってそれってどうなのよ。逃げ道全部潰されてるじゃん」


俺は怒りのあまり声を少し荒げてしまった。確かにこれらの問題はエリザベスの問題ではないのかもしれない。しかし16歳である自分にこれほどの難題をこなせとは非常に難しいと思わざるを得なかった。


なんとなくだが野球がやりたいと言う気持ちが湧いてきた。200人ぐらい農民がいるということなので野球チームでも作って野球するか。少し投げやりな気持ちでそう思っているのだった。


「アラタ、非常に申し訳ないが、これだけは心して聞いてほしい。貧しい農民というのは一つ間違えれば盗賊になる。盗賊になった農民は我が国の法律では死罪となる。生きることは出来ずにやむをえずに盗賊になるが国に囚われ処分を受ける。つまりその盗賊を捕まえるのはアラタだし、処分をするのもアラタだ。これはゴブリンの時の比じゃないほど心が試されると思ってくれ」


正直に言って俺は騎士叙勲ということで貴族になれたことになる。これに浮かれていたということは否定できない。エリザベスの話を聞く限りかなりブラックな職場になるだろう。そして自分の所の領民を殺す可能性を説明しているのはエリザベスだ。


俺は今後の数年間にわたり無垢な少年のままでいられるのだろうか。大きい不安が俺に圧し掛かっていた。

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