第15話 あだ名と勇者の噂
ここ一月で俺たちの金銭がどうなっているか確認してみると、俺は金属バットを主体にして戦っているので、武器防具費用が全くかからない。小手や具足などの防具を買ってもいいんだが、全ての攻撃をバットで叩き折っているため必要性をあまり感じない。
キャシーとアリスは良家の出なのか武器防具が高い物を使われており更新の必要は感じられない。 そんなわけで消耗品もどこで使うこともなく、パーティー資産を除いても1日あたり金貨5枚は稼いでいた。そしてボス戦で得たゴブリンキングのソードは金貨100枚で売れた2本なので合計200枚になる5x20日=100枚、200/3=67枚で合計167枚の金貨持ちで懐には余裕があった。がめつい女性の行動と、せこい道具屋の女主人にはあまり気にならなくなくなってきた。余裕って大事だなと、つくづく思った。
この間ボス戦を2回制したことが影響したのか俺には二つ名がついていた『ライトニングハンマー』が俺の二つ名だ。結構格好良いので気に入っている。ハンマーのような打撃武器と雷のように見えないそのスイングがライトニングと名付けられた。
しかし街中では二つ名があるからといって偉そうに出来るわけでもなく普通に「小僧」とか「そこのガキ」とか呼ばれているので、大した事では無さそうだ。
キャシーとアリスにも渾名について聞いてみたが、恥ずかしがって教えてくれなかった。さて、これから中級ダンジョンの攻略である。下級は何とかなったが中級では仲間を増やしたいと考えていた。前衛は俺一人でも構いまないが、後衛の火力がちょっと不安だった。
「キャシー、アリス後衛の火力って低くね」
「失礼ね、あんたはこないだボスやっつけたばっかじゃないの。十分よ」
言われてみれば確かにその通りだ。
「それじゃあシーフやポーターを雇うってどうよ」
「あなたの作った大八車があるじゃない。それで十分よ」
どうやら戦力増強無しで中級のダンジョンに挑む必要がありそうだ。まあ何事もやってみなければ分からない事もあるし、見てみない事には何とも言えない 。
宿に戻り亭主のオリエンタルさんと今月の支払いと世間話をしていた。
「何やらアラタさんもライトニングハンマーとか凄いらしいじゃないですか」
「自分なんかまだまだ、ただ棒振ってるだけですから」
「またまたご謙遜を、今は世間じゃライトニングハンマーと勇者のどっちが強いのか話題になってますね」
「勇者ってどんな人ですか」
「何でも全属性の魔法を使える、すごいお人だそうで、ちょっと嫌なお話も入ってきますが強いことは確かです」
「嫌な話って何かな」
「ここだけの話ですが女性の奴隷を戦闘に使っているようで、私なんかは、あんまり好きではないタイプですね」
「あーそれは何となくわかりますね。できるだけ関わらない様にしますよ。良い情報をありがとうございます」
「毎度あり」
その後、僕は宿を出た。今日は女性陣の女性の日らしいので休日だ。いくら冒険者といえども月に1度ある女性の日はお休みとこの世界でも決まっていた。なので休みの間はウィンドウショッピングを楽しんでいる。
「最近流行りの石鹸だよ。勇者様がお作りになったんだどうだい一つ」
道具屋さんがそういって俺に勧めてきた。
「普通の石鹸と何が違うんだい」
「そんなん知らんし、勇者さんのブランドなんだよ。これは」
「高そうだから遠慮しとく、ごめんね」
俺はそう言うと道具屋さんから離れていった。この地域で石鹸が流行らない理由はクリーンという魔法があってそれで一回で体がきれいになるので風呂に入る人は少ない。
ただ石鹸を使ってチートっぽいことをしているのは、僕の前に送られた人じゃないだろうか。確か神様が僕の前にチートと叫んでいた人を送ったと言っていた。僕は普通の魔法しか貰っていないのでチートの人には勝てないと思うのだ。
なのでよほどのことがない限りは異世界人というのは内緒にしないといけない。
早速エリザベスに口止めに向かった。
「…というわけで俺が異世界人というのは内緒にしたいんだ」
「分かったよ。しょうがないわね。口止め料は金貨2枚ね」
この辺がお金でしっかりしてる分口約束よりも信用できそうで、がめついのも時には役に立つんだなと感心していた
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