第14話 最前線アタッカー
結局のところエリザベスの素性については、わからないままだった。
女の一人や二人は秘密を持っていて当たり前ということなのだろう。
このことについてはまた別のチャンスが来た時に調べたいと思う。
さて我がパーティーだが、完全に自分が最前線で戦うスタイルに落ち着いていた。エリザベスのいる場合は若干異なるが基本的には最前線で俺が切った張ったをやっている。
後ろの二人は俺の取りこぼしや死角となる部分のフォローに終始してもらっている。
「楽な分には問題ないっすよ」
「手が汚れないのでとっても良い事だと思います」
そうキャシーとアリスは答えていたが、パーティーとしてあまり役に立っていないのは悔しいのだろう。たまに裏庭で魔法の練習をしているのを見る。
これは最前線アタッカーと呼ばれる戦法で、あまり好まれている訳ではない。ギルドの資料の説明によると、最前線のアタッカーに掛かる負荷と技術量が非常に高くなるため現在では使うパーティーが少ないのだそうだ。
そんな中二人と喋りながらどんどん進んでいくと、ついに下級ダンジョンのラストボスの前に着いた。
下級ダンジョンのラスボスはゴブリンキングと聞いている。次から次へと湧き出すゴブリンと連携してくるゴブリンキングの攻撃は厄介だと言われている。通常であれば弱い個体から各個撃破していくのが兵法の常である。
だが今回のような場合はそれには当てはまらないと思う。ゴブリンキングを倒しゴブリンが湧き出さなくなったら各個撃破で倒す。パーティーの作戦としてはゴブリンキングに自分が相手取り抑え込む。その間に残る二人が雑魚のゴブリンを減らしていくそんな方法で進むとダンジョンのボス部屋の前で話合った。
「じゃあ123で突入ね」
「「分かった」」
指で3秒のカウント行うとすぐさま俺は扉を開けて入りゴブリンキング目指してバット振り回して行った。左右にいるゴブリンには魔法使いの二人が魔法でどんどん削っていっている。ゴブリンキングへと、どんどん間合いを詰めていく。バットの間合いは思いの外短く、先に出てくるゴブリンキングの剣を弾き返しながら間合いを詰め射程距離に入った瞬間には見えないスイングを顎目掛けて放っていた。結果としては余裕の討伐となった。ゴブリンキングの攻撃は全て弾き返すことができていて、間合いに入れば一撃で叩き潰していた。その後雑魚であるゴブリンの掃討を手伝っている。
今回のドロップ品はゴブリンキングの剣だった。特に必要とする人もいないので売却することとした。
「別な杖類のアイテムとかだったら欲しかったけど剣じゃいらないね」
「私も魔法系のアイテムだったら欲しかったけど剣はいらないわ」
そんなわけでこのゴブリンキングの剣はギルドに売ることを決定した。
「あんまり強くなかったから次からは中級のダンジョンに潜ろうかと思うんだけどもみんなはどう思う」
「弱すぎて私達の出番がない」
「死体の処理ばっかで飽きた魔法使いのする仕事じゃないよ」
どうやら二人とも中級のダンジョンに進んでも問題ない認識のようだ
下級ダンジョンといえどもボスを討伐した場合はギルドへの報告が必要であるということで受付に報告していた。
「あれ、アラタさんって登録してから1月以内ですよね」
「年齢にもよりますがギルドの最年少記録とあとは、登録からの最短記録を更新している可能性がありますね。どっちも更新している場合はちょっと目立ってしまうかもしれません」
俺は金貨1枚をギルドの職員に握らせて後にこういった。
「私はあんまり詳しくはないんですが、こういうことで目立ってしまうと妬まれるとよく聞くんですよね。できればそういう事は避けたいという風に考えているので何とかなりませんかお願いします。やっかみって大変そうなので・・・」
ギルド職員は金貨をポケットにしまいながらこう話した。
「冒険者の方がそうおっしゃるんであれば、しょうがないですね。ですが討伐に対しては金一封が出ますので式には出なくても公には発表されることでしょう」
俺は後ろを振り向きパーティーの二人に同意を得られるように話をした
「そんな面倒なのパスパス」
「そうですね下級のダンジョン程度では威張ってられないですよ」
そんな二人と帰り際に少し話になった。
「あなたが強くなる分には良いのだけれど、私たちが全然成長できていないわ」
「あーそれ。全然つまんねー仕事ばっか」
「次からは壁に徹してもらって私たちの熟練度を上げていかないといけないわ」
アリスからのまっとうな提案に対して俺は何も言えず頷くだけだった。
それから数日間は壁役として前線に立ち全ての攻撃をバットで叩き落としていた。その間にキャシーとアリスが攻撃をして倒していくというスタイルだ。本来はこのスタイルで戦うのが普通なのだろう。キャシーとアリスの魔力が続く限り進んでいったら下級ダンジョンのボスのエリアについてしまった。
「ここはボス部屋だからみんなで協力してやろうよ」
「いいえ、ここも同じように壁役としてやって下さい。後は私達でボスと雑魚は片付けます」
先手必勝とばかりに魔法使いであるアリスが雑魚に向かってファイアーボールを連発していた。キャシーは何をやっているのかと言うとバフをかけていた。魔力増幅系の様だ。バフで威力を上げた魔法でボスを一撃で倒したいのだろう。俺の仕事はもちろん壁役だが、仲間の支援も含まれているはずだ。軽くボスの足へ折れる程度の攻撃は見えない様にやって置いた。
巨大なファイアーランスに貫かれたゴブリンキングの胸板は大きな丸い穴が開いていた。危ない所もなく見事な戦いぶりだった。
「このパーティーは私たちがメインであなたはあくまでも添え役です 」
このアリスの意外なプライドの高さは驚きだった。これほどプライドの高い女性だとは思っていなかったよ。次からはうまく立ち回らないといけない。俺が目立たず彼女が目立つのは俺のプライド的には問題なかったが、彼女の危険度というものを考えるとあまりお勧めはできなかった。だが、どんな奴が来ても彼女たちを守るということを、できる自信は最近は芽生えつつある。
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