第13話 エリザベスの理由

俺の提案した荷車(大八車)は大変人気が出た。人が引けるし、馬にも付けれる、火急の折は矢盾としても使用可能ときては人気が出てもしょうが無いだろう。ただ現代の荷車の様な軸受が異世界の精鉄では限界があった。その為グリースの使用で誤魔化している。


この日は下級ダンジョンの10階層のボスに挑む予定である。大八車を引きながら下級ダンジョンへ向かった。ボスに挑む予定なので今回はエリザベスに同行してもらった。

俺は自信満々で大八車の開発を自慢していた。

「まあ悪くはないが次元鞄が出るのが中級ダンジョンの上層で出る。今は次元鞄も値崩れしたので金貨100枚あれば買えただろう」

そのようにエリザベスは言っていた。


「そんなことはないぞ。あの大八車は農村部で非常に売れているそうよ」

キャシーがそう答えた。

「そんなに売れているのか。アラタは今後そういった話がある時は私にも一声かけてもらいたいものだ」

お金のために目がギラついている。


俺は以前から思っていたことを空気を読まずにちょっと聞いてみた

「エリザベスは何でそんなにお金にがめついのさ」

「あー実は弟が借金のせいで奴隷になってしまって買い戻すお金を貯めているのだ」

「そうだったのか辛いこと聞いてしまって悪かったな謝るよ」

俺はそう謝罪の言葉を口にしてダンジョンに向かった


下級のダンジョンではほとんど相手にならない。俺が強くなりすぎてしまった。ほとんどの相手を見えないスイングで一撃で倒していた。相手の攻撃のほとんどを金属バットでブチ折っていた。背後のカバーさえして貰えれば安心だった。


10階層のボスはミノタウロスだ。初心者キラーとも呼ばれている。斧を担いで、その圧倒的な膂力と体の大きさは異様とも言える。俺との相性も悪かった。相手の方が背が高くリーチが長いためバットが届きにくかった。アッパースイングで倒すしかないと考えていた


「 このボスは俺一人でやらさせてくれないか」

「アラタにはあまり相性のいい相手ではない。 私の火魔法で効率的に倒した方が早いよ」

そうアリスは話しかけてきたし、正論なのだろう。


「 あいつを打撃で倒せれば、何かが掴めるような気がするんだ」

「 そこまで言うならやらせてみればいいさ もしもの時は私が 割り込んで制圧してみせる」

エリザベスは 言って俺を後押ししてくれた

「 分かったわよ気をつけるのよ」

「 しょうがねえなあ、譲ってあげるからきちんと倒してきなさい」

「 ありがとうみんな、俺やってみせるよ」

俺はバット握る力がみなぎったのを感じた


俺はボス部屋に一人で入った。ふごーふごーとミノタウロスは鼻息荒く臨戦態勢のようだ。俺は見えないスイングを相手の顎付近へアッパースイング気味に全力で振った。

すると相手の頭が310°以上回転してズドンと倒れた。念のため頭部へもう一度放ち決着はついた。俺の圧勝だったというか楽勝だった。期待はずれなモンスターだった。

「なんか弱い相手だった。ごめんな」

みんなにそう謝った時全員がぽかんとした顔をしていた。


「普通は初心者が苦労するダンジョンのエリアボスなんだぞ。いくらなんでも変だろ。お前」

キャシーが俺に対して毒を吐いている

「そうねー初心者のはずなのにおかしいわ。アラタちゃんは」

アリスもそう言い放つ。

「ミノタウロスを単体で倒すとはなかなかやるな。今日からミノタンと読んでやろう」

「それだけはやめてくれ。俺の故郷の食いもんなんだ」

そんなたわいのない話をして後にみんなで戻った。


宿の食堂には珍しくリタさんがいた。

「こんにちはリタさん」

「あら、こんばんわアラタ君」

「珍しいですねこんな時間にエリザベスに用事でもあったんですか」

「えぇまぁそんなもんよ」

「それよりもあなた最近エリザベスと仲がいいわね」

「まあパーティー組んだりそれなりにはやってますよ」

「そお恋仲的にはどうなの」

「そんなのありませんよ。大体エリザベスが弟を奴隷から救うための借金が大変だって言ってましたよ」

「あら、エリザベスに弟はいないわよ。変ね・・・」


くそう。またエリザベスに騙された。その悔しさにその晩は枕を濡らしながら寝た。

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