第11話 パーティ結成

エリザベスによるとパーティーを結成したからといって何かをするわけでもなく、ギルドへ登録用紙を持っていくだけだという話だ。


そこで重要になってくるのがパーティー資産というものだ。パーティーで使うお金と個人で使うお金とは別で管理するという。今後僕たち3人で倒した魔物の売上金から10%をパーティー資金として扱うと三人で協議した。


えっ・・・ボス戦のお金は全部エリザベスが持って行ったよ。紹介料として…


パーティー資産についてはギルドが預かってくれるらしい。リーダーが持っていた場合に、その人が行方不明になるとパーティー資金がなくなるからだ。


資産の預り金にはギルドにも一定の利点がある。パーティーが全滅するとギルドが貰えるのだ。 故にギルドでパーティーを登録しようとするとコレを勧められる。


この世界でもお金は重要だ。ギルドに来るたびに思う。ホントに気を付けなければいけない。


「アラタはどこに泊まっているんだ」

キャシーが突然そう聞いてきた。

「バカ勘違いすんなよ。パーティーで泊まっていた方が運用しやすいんだよ。いちいち待ち合わせとかそういうのが必要なくなるんだよ」


なるほどそういうことか一瞬勘違いしそうになってしまった。

「えーと確かサブの宿??」

「違うわ!銀の小鳥亭だ」

エリザベスに頭を叩かれてそう指摘されてしまった。 そうだったのか全く知らなかった。こっちの世界に看板というのが無いのでなかなか分からないんだよね。

「ご主人はサブさんだよね?」

「違う!オリエンタルさんだ。間違えるな」

またもや盛大なツッコミを喰らってしまった。


「へぇ割といいとこに泊っているわね。あたし達も移ろうかしら」

「俺の部屋は狭いから無理だぞ」

「「「一緒なわけないだろ」」」

女性陣にそう一斉に批判された。

「一緒の方が宿代浮くんだからそう勘違いしちゃうじゃないか 」

俺は金銭面での理由に言い訳をそう伝えた。

「なるほどそういう考え方もあるんだな」

とエリザベスだけは理解してくれた。



話し合いの末にパーティーは明後日に再集合とし、それまでに必要な物を各自準備すること。宿を移動する者は移動すること。 エリザベスは臨時参戦のためボス戦などの必要な時に予め頼むことにした。それらを決めた後で全員で一斉に解散した。


宿に戻り日課の素振りを行なっている時に気がついた。通常はバットを振った時にブーンと音がする。最近はバットを振り終わった後に音がする。これはひょっとしてバットのスイングスピードが音速を超えていたのではないだろうか。最近早い早いとは思っていたが音速を超えていたらものすごいスピードである。確か打球の速度が200km/hもあれば早い方だったはずだ。どおりでスイングが見えないはずだと思った。


しかしボス戦では気が付いたが相手の頭部や急所の位置がレベルスイングでは届かないので、今後はアッパースイングに変えて行かないといけない。 素振りの中にも取り入れているがアッパースイングを行った後にダウンスイングで戻るといった一連の動作をしている。素振りの中にも取り入れているのだがこれを燕返しスイングと名付けた。


そしてもう一つ、偉大なる打者の中には上段の構えの様な位置からレベルスイングを行う打者がいる。これをフェイントのように使えないかと考えている。上段から打ち落として振ると見せかけて胴を抜く。これをかんぬきフェイントと名付けた。


この二つを新たな技として素振りの中に組み入れていく。確かに自分は野球バカだが異世界では野球をしに来たわけではない。生活がかかっているのだ。好き嫌いは選べないということなのだろう。 いつの間にやら夜の帳が下りている。残り少なくなってしまったがプロテインを飲んで今日も寝るとしよう。


翌日キャシーとアリスは銀の小鳥亭へ引っ越してきた。やはり同じ宿の方が便利ということだろう。俺は引っ越しの手伝いではなく道具屋へ赴いた。

「道具屋さん聞いてくださいよ」

俺は異世界知識チートというのを試してみようと思った。


「聞くだけなら聞いてやる。言ってみろ」

寛大な道具屋さんは聞いてくれると言っている。


「バックパックの上に鉄板を仕込むと背中の盾にならないすかね。盾と言いますか防具と言えばいいのか」

「確かに悪くはないアイデアだ。けれども、誰も買わないだろう。ただでさえ荷物は重いんだ。その上に鉄板を背負うなんてバカの考えることだ。機動力も削がれるからな無理だ商品化はできない」

まさしく正論だ。筋トレ以外で重量物を持って歩く馬鹿はいない。

浅はかな知識チートは失敗した。しかし翌日商品化された盾型バックパックは売りに出されていた。アイデアだけパクられのだ。正直者が馬鹿を見ると言うか、異世界でも商売の世界は厳しいものだ。

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