第10話 リーダーが欲しい
宿に帰る途中エリザベスは彼女たちのパーティーから男性がけが人ではなく死亡したのが原因だと話した。
この事を打ち明けるられた俺は少し驚いた。エリザベス曰く、彼女たちの責任ではなく運が悪かったと喋った。
ただ彼女たちのパーティーの前衛にはかなりの能力が必要なことをエリザベスは話していた。
宿に戻ると俺は日課の素振りをし、プロテインを飲んで眠ることにした。
プロテインの残量はもう数日分しか残っていない。残りについては何かのために取っておくことにした。
もちろん素振りの最中は魔力が漏れ出さない様に最新の注意を払って練習した。
翌朝朝食をすませると、俺とエリザベスは下級のダンジョンに向かった。
ダンジョンに入る手前のエリアで二人と合流した。昨日は普段着だったので良くわからなかったが、こうして戦闘服を見ると階級の高いことが伺い知れる。
「おはよう」
と俺はにこやかに声を掛けたが全員に無視された。この屈辱は忘れない。
「これからは毎日会う仲になるんだ挨拶など不要さ」
とエリザベスは言ってのけた。
「その通りよ」キャシーも続き
「そうね」とアリスも同意した。
俺は広く海のように大きい寛大な男だ。挨拶くらいしなくたって許してやるさ。悔しさに手を握りしめたが、表面上はにこやかに笑っていた。野球をする男は紳士なのさ。
戦闘フォーメーションについては前衛を俺がやる。中衛はエリザベス 。後衛は残りの二人で行う事にした。
最前衛である俺が戦いのきっかけを作るため『角待ちで一発バックスタブ』の作戦を彼女たちに伝えた。
そんなことをやっていたのかとエリザベスと彼女たちは呆れていた。
まずは1階層に潜る。いつものように魔力の気配察知を使って相手を探る。相手の位置が大体わかったので曲がり角で待ち伏せする。相手はホーンラビットが2匹だった。いつものように俺が2匹を瞬殺していた。
どうだというような顔で3人を見るとダメ出しをされた。魔力が強すぎて逆に相手に場所を教えていること。たまたまうまくいってるが相手の数が増えるほど危険度が増すのでやめたほうがいいという話になった。 せっかく考えた俺の『角待ちで一発バックスタブ』作戦はお気に召さないようだ。
そこで前衛に俺とエリザベスが並ぶように立つ事にした。こうすれば俺の弱点である配合エリザベスが潰してくれているので大丈夫だった。
次にホーンラビットが2匹出た時もエリザベスと俺が一匹ずつも相手することによって安定していた。普通の二人は特にやることもなく前へとどんどん進んでいった。 いつのまにか5階層の中ボスの間まで進んでいた。5層の中ボスはオーク一匹とゴブリンが複数出る。行くぞというエリザベスの掛け声とともにボスエリアへ進んでいった。
エリアに入った瞬間に雑魚のゴブリンを数を減らそうと俺は見えないスイング繰り出していた。雑魚のゴブリンが狩り終わった時には、ボスのオークはエリザベスと後衛の2人がさっさと片付けていた。ドロップ品はナイフで使用用途の多い俺がもらうことにした。
「随分と振りが早くなったじゃないか全く見えなかったよ」
そうエリザベスは俺を褒めていた。しかし後衛の二人と全くコミュニケーションが取れていないと思う。こういう時は早めにリーダーを決めた方が良い。リーダーの指示に従うことによって全体のバランスが取れてくると思う。この場合はエリザベスだ。彼女がいなければこのパーティーは瓦解してしまう。
「なぁエリザベスはこのパーティーに残ってくれるんだよな」
俺は何気なくそう聞いた。
「いや今日だけ付き添いだよ。明日からはお前らで入りな」
俺は小声でエリザベスに伝えた。
「なぁエリザベス頼むから残ってくれよ。お前がいなかったら壊れちゃうよ。このパーティー」
「言いたい事はわかるが、私はお人好しではないのでな。アラタが一人で頑張るしかないな」
後衛の二人はツンとした感じだ。正直に言って一人でやってるほうが楽だった。女性といると楽しいとかそんなのは嘘だ。彼女たちと話すのは苦行のようだった。俺は野球一筋で生きてきた男だ。
クラスの女子と話をしたこともあるが挨拶がほとんどだ。パーティーとかリーダーとか言われても俺は何もすることができない。彼女たちがリーダーシップを発揮してくれてもいいのだが、まるっきりやる気がないようだ。必然的に俺がリーダーになるんだろうか。
「俺がリーダーということで二人は問題ないかな」
俺は頑張って二人に話しかけた。
「リーダーとか勘違いしてんじゃねー。お前は壁だ」
「壁は黙って戦ってりゃいいんだよ」
二人のきつい言葉で俺は何も言えなかった。これでパーティーとか無理だろ。
なんだよ壁って俺は奴隷じゃねえ。そう思った俺は勇気を振り絞って彼女たちに告げた
「俺がリーダーじゃなければ今回の話はなかったことにしよう」
今度は彼女達が黙り込んだ。ヒソヒソと二人で何やら話し込んでいる。
「リーダーと壁っていうことなら認めてやるよ」
「そうだな兼務だったら認めるよ」
どこまでも高すぎる目線に合わせるのが、きつくなってきた。こいつらタメ口でいいだろうと思い始めていた。
「壁じゃなくて前衛な。認めるのが嫌だったら俺は抜けるぞ」
最初の立ち位置の取り合いというのは人間関係においてとても重要である。誰がボスであるかをしっかりと把握しておかないと後々問題が発生するのだ。
「しゃーねーなーわかったよ」
「キャシーが言うならしょうがないな」
そう言って二人はやっと認めてくれたようだ。3人組のパーティーがやっと完成した。エリザベスは残ってくれないかなと切実に思う俺だった。
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