第6話 魔力解放
「バカだなお前は。こんな美女が無料でワンツーマンで指導してくれるわけがないだろう。普通のおっさんでも有料だよ」
エリザベスにそう言われて、なるほどと納得してしまった。
呆れた顔をしたエリザベスは俺に座るように促すと魔力操作について説明を始めた。
「魔力というものについては誰もが持っているものだが、操作に関しては練習する必要がある」
俺の両手を掴んでお互いに手のひらを合わせて握り合った。
人生16年野球一筋の俺が初めて女性の手を握ったその瞬間だった。もうちょっと柔らかいと思っていたが、エリザベスの手はゴツゴツしていた。
エリザベスの手をふーんとかあーんとか見てると
「何をやっとるのだ貴様は。真面目にやれ。いいかこれから私の両手を使って、魔力を貴様の体に流してやる。右手から出た魔力は貴様の体を通じ左手に回収される。これを5回ほどしてやるからその時に魔力を検知できなければ一生できないと思え」
神様がチートをくれると言っていたので、大丈夫と安心しきっていたが、神様といえども間違えることはあるのかもしれないと少し不安になった。
「次で2回目だぞ1回目は検知できたのか?」
えっ、何も感じなかった。やばい集中しようとするとエリザベスの胸の谷間が目の前にあって集中できない。くそ俺は目を瞑る事にした。
「次で4回目だ。これで魔力を感知しなしなかったら、駄目かもしれないな」
俺はエリザベスの手とか胸の谷間を全て忘れ魔力にのみ集中して検知しようと試みる。右手からわずかに動いている何かがあるこれが魔力なのだろうか?
「今魔力のようなものを感じたんだけれども最後はちょっと強めに行ってもらっていいかな」
「分かった。次で最後だ、行くぞ!」
最後の魔力検地の結果、俺は魔力というものを感じることができた。
「身体強化魔法はその魔力を強化したい部分に展開させることで体が強化される。魔力を常に動かして感じることがこの魔法の第一歩だ」
そうエリザベスはアドバイスをしてくれた。
俺は魔力を感じることができるようになったので、調子に乗って一日中トレーニングしていた。バットを素振りしながらそれに身体強化魔法を合わせて使う。するとたまにだが爆発的なスピードでバットスイングが進んで行く。それが気持ちよくてどんどんどんどんトレーニングしてしまった。疲れ果てた俺は晩食後にプロテインを飲んでさっさと寝るのだった。
実はこのプロテインが神の悪戯によって魔力が増える特別なプロテインだったことは誰も知らない。神様ももう忘れていることだろう。
バットスイングがどんどん早くなる。その気持ちよさにつられてどんどんどんどん魔力操作をして練習していく朝から晩まで疲れもせずにどんどんやって、プロテインを飲んで寝る。そんな工程を10日ほど経ったあたりでスイングが見えなくなった。
これくらいあれば大丈夫だろうとエリザベスに新たなアドバイスを求めて聞いてみた。
「エリザベス。魔法が、だいたい出来た感じだと思うんだけど、一度見てくれないか」
「特別講習というやつだないいぞ。一回銀貨2枚だ」
このがめつささえなければ、綺麗で優しくていい女なのに何故こんなにがめついのか。
俺とエリザベスは中庭に出て俺のバットスイングを見てもらった。ふっっと息をつく間にスイングは終わっていた。
「どうした早くやれ」
今のスイングが見えていないらしくエリザベスは早くするように催促してきた。
「今やっただろう。見えなかったのか」
「何だと!!もう一度やってみろ」
少し離れた位置に立ったエリザベスは俺の動きを見ていた。
俺はまた最速スイングを見せつけてみた。
「正直に言うと少し侮っていたようだ。ここまでやるとは思っていなかった。これならば一度私とパーティーを組んでダンジョンに進んでみてもいいかもしれない」
「本当か!?」
人生であまり褒められたことのない俺は、嬉しさのあまり絶頂に達していた。
「貴様が前衛で、私が後ろから槍でフォローしよう。明後日ならもう一人私の知り合いの魔法使いが暇だと思うから声をかけてみるよ」
「ありがたいな。エリザベス本当に助かるよ、ありがとう」
「いや何だ、ダンジョン付きの特別講習だから講師二人で金貨1枚だな」
どこまで行ってもがめついエリザベスだった。だがもうそろそろダンジョンに入って生計を立てないとやばいほど自分も追い込まれてきた。 今月の宿代は既に支払っているが銀貨2枚が 30日間で金貨6枚だ。講習代も約金貨1枚使っており、このまま収入が途絶えた場合宿を追い出されて野宿の民となるだろう。まだ一回あたりのダンジョンでの攻略できる金額もわからないのだ。心の中では焦っていた。
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