第4話 道具屋と人を見る目
先ほど取られた冒険者登録料金貨4枚、宿代4日間で金貨1枚、初心者講習料並びにダンジョン講習金貨2枚。つまりは合計で金貨7.5枚で使っていることになる。残るは金貨2.5枚。宿代が飯を含まれているのか確認するのを忘れていた。プロテインで過ごすことも考えられるがそれは避けたい。つまり宿代がもう金貨1枚ぐらいかかる可能性がある。もうこれ以上の浪費は危険だった。俺は物は買わず見るだけと言う貧乏くさいウィンドウショッピングを始めた。
昔でいう駄菓子屋のような大きさの雑貨屋に入った。 ドアではなく引き戸だったのでまだそこまで文明的に発達してないというのはよくわかる。
「しけたツラしてんね。冒険者ギルドでぼったくりにでもあったのかい」
見た目若い女主人が俺にそう声をかけてきた。
「初めて会ったのによくわかりましたね」
「そりゃそうだよ。冒険者ギルドからまっすぐここに来る奴は100%そうだからな」
くすくすと笑いながら女主人は俺に言った。
「おおかた登録料と講習料で金貨6枚くらい取られたかい」
「何でわかるんですかそんなことまで・・・」
「この辺の奴なら知ってるさ。ダンジョンまで直接行って登録した方が安いってな。金貨2枚で済むからな」
えっ…と固まっていると続けて店主は話した。
「ただ買取金額はギルドの方が高いから長く潜るんだったらギルドの方が安く済むかもな」
つまりはそういうことなんだろう。長く潜るんだったらギルド、短く稼ぐんだったら直接行く。地元の人間はそういうことを知っていたということだ。大方自分は鴨が葱を背負って鍋に向かって歩いていたようなもんだったのだろう。
「そんな可哀そうな冒険者には特別セットを金貨一枚で売ってやるよ」
そう女店主は言いながら、回復薬や毒消しなどをセットにした小道具を見せてくれた。
「これ後で確認してからでも良いですかね」
すると女亭主はみやりと笑いながらこう言った
「坊主、目利きっていうのはね、確認してたらできないもんなのさ。次に来るときにはきっと金貨2枚になってるよ」
俺は正直に言って騙されたくないと思った。だが回復薬や毒消し草など必要なものは揃えておきたいというのは当たり前の話だ。問題はその値段が妥当なのかどうかを俺が知らないということだ。そしてもっと問題なのが、俺が妥当な値段を知らないということをこの女店主は知っていて俺を試して遊んでやがる。
「はい毎度あり」
女店主はにこやかに手を振っていた。結局俺はわからなかった。なので金貨一枚で買った。もし宿屋が食事代が別であった時はプロテイン生活で過ごすしかない。いやダンジョンで稼げるかもしれない。残り金貨は既に1.5枚となっていた。
俺が心の中でサブさんと呼んでいる宿の店主に聞いてみた。
「薬草類は使える期限がありますがそれが少々短くなってますので安く売ったんでしょう。新人のうちはバンバン使いますからお得でしたね」
ふーというため息とともに、俺はあの女店主のことを信用できるやつかもしれないと思った。ちなみに宿代は飯付きでの値段だった。このお店とサブさんはきっと信用できるだろう。
しかしたった3日で財産の80%を失うというのはどう見ても使い過ぎだ。収入のあてもなく残り金貨2枚でいるということは非常に不安でもあった。そのため一度捨てたグローブを取りに戻って売却することを考えた。金属バットとヘルメットをかぶって俺は捨てた外野グローブと球を捨てた付近へ舞い戻った。
捨てた外野グローブと球は特に問題なく見つかった。途中でモンスターとかに合うとかもなく大丈夫だった。こちらの世界では使い物にならないかもしれないがあの道具屋の店主ならこの外野グローブと球を買うかもしれない。なぜかそう思えたので、この二つを拾いに戻った。
俺は道具屋に舞い戻るとこう言った。
「目利きの道具屋さんならこの道具の良さがわかってもらえると思って持ってきたんだよ」
そう言ってボールとグローブを見せる。
「どうだい。いい出来だろう」
女店主はじっくりとグローブを見ていると何やら考え込んでいた。
「あんたはこれをいくらで売りたいんだい」
そう女店主はそう聞いてきた。
正直に言うと売値を考えてはいなかった。だが最近の損失を埋めれる金額であればそれでよかった。
「金貨8.5枚だ」
「ふーん。それはそのたまっころも含めての料金なんだろうね」
女主人は確認するようにそう言った。
「ああもちろん。その球も含まれるよ」
「使い道はよくわからないが金貨8.5枚以上の値打ちはありそうだね。いいよ、買ってあげるさ」
そう言いながら女主人は金貨8.5枚を俺に手渡した。
俺はこれから多少損する事があってもこの女主人を頼りにしようと思った。こういうのが信頼なんだなあとしみじみ感じた。
金貨が元に戻ったので、講習を受けて身体強化魔法について検証を始めたいと思う。
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