第2話 冒険者の町アルス

森を少し進んで抜けると少し開けた野原に出た。俺はここで自分の所持品の確認をすることにした。試合後なので荷物が多すぎる。移動が大変なのが理由だ。使わないものなどを予備としてここに隠しておくのは、ひょっとしたらいいアイデアかもしれない。


持ち物---

・ビクトリー 金属バット Wコング(神の加護あり)

先ほど折れないように神様にしてもらった俺の愛用のバット W コングだ。


・ 軽量級:FRPバット

これは FRP でできている軽量級のバットだ。スイッチヒッターである俺は利き腕ではWコングを使用するが左ではこの FRP バットを利用している軽いのが特徴だ。


・練習用:打撃できないスイング用1kg

振り子の原理でカシャーンと重心が移動するタイプの練習スイング用のバットだ。正直使い道はないが、バットケースに余裕があるため持って行くことにしよう。


・グローブ:野球 バッティンググラブ インパクト 両手用

今後の消耗を考えると一番不安な手袋だ。バッティングにおいて経験者はわかると思うがスイングを素手ですると、あっという間に豆だらけになりバットを正常に持てなくなる。バッティングセンターにも軍手が置いてあるぐらい必要性は高い。この世界でもグローブが見つかるといいんだが・・・


・ジャージ、試合用ウェア、冬用ジャケット、硬式打者用ヘルメット、

試合用のウェアとジャージとジャケットはもちろん必須だ。ヘルメット持ってきたの大きかった。今後戦闘が起きる際に絶対に必要になるものだ。


・野球用 ポイントスパイク ゼロ、練習用ジョギングシューズ

靴は2種類持ってきた。試合用のスパイクと練習用のジョギングシューズ。今現在はジョギングシューズを履いているがスパイクは街中で履いていたら、すぐダメになってしまうだろう。すぐ捨てるのはもったいないが、使いどころがあるかもしれないのでこれも持っていく。


・硬式球、外野グローブ

残念ながら外野グローブは捨ててことにした。硬式球は2個あれば十分だろう。石で代用することが可能なのでムリに持って行く必要はない。


・プロテイン、飲料ボトル

今日の朝母親に無理やり持たされたものだったが、今日ほど母親に感謝した日はない。プロテインが20食分飲料ボトルに2L

入っている。水はどこかで補給しなければいけないがプロテイン20食はいつ食事が取れるか分からない現状では非常に助かった。


いつでも戦闘できるように金属バットは右手に持ち、バットケースは左手に持っていた。ありとあらゆるものを詰め込んだバックパックはかなりの容量だが持って歩く以外に方法はない。


バットの気の向くままに街を目指して歩いて行く。おおよそ2時間ほど歩いた程度であろうか、食事時間のようなので、かまどの煙が少し離れた位置からでもわかった。そこに集落があるというのは明確なことだった。


俺はいきなり町に入るということをせず、一旦外周付近を回って中の様子を伺いその後に入るということを選択した。


たどり着いた街は中世を思わせる街づくりではあった。二人の衛兵が立ち、外周に沿って壁が作られていた。衛兵と一度目は合わせたがそのまま外周をぐるっと回りもう一度戻ってきて衛兵と話をした。外周では出口は四つあったがどれも同じようなものだった。


「すいません始めまして。旅人のような者です。今晩の宿にこの街に泊まりたいと思うのですが可能でしょうか」

衛兵はこれでもかとすごい睨みを利かせた目でこちらを見ていた

「おう、兄ちゃん。珍しい格好してるな。入りたいなら身分証明書と人頭税銀貨1枚だな」

自分の今の格好は試合用ウェアにヘルメットと金属バット思っていた。試合用ウェアは少し泥だらけにしといた。


「ちょっと待ってもらって頂いていいですか。確かあったはずです確認しますんで」


そういった俺は神様からもらったお金の入った袋を確認した。中には金貨は入っていたが身分証明書が入っていなかった。気が利かない神様だ。名前すらも覚えていないと言うか、聞くのを忘れていた。何も知らぬ神様よ。無慈悲なことはするな。

ある程度神様のせいにしてすっきりしたところで、衛兵に話し始めた。

「すいません。どうやら身分証明書を無くしてしまった様で、どうにかならないでしょうか」

いかつい筋肉が隆々とした男が俺の方を睨みつけながらしゃべった

「身分証がないんじゃ、人頭税は金貨一枚だ。ギルドで発行して貰えれば差分は返金される」

「わかりました金貨1枚ですね。払いますので入れてください」

「へへ、毎度どうも。ようこそ冒険者の町アルスへ」

いかついおっさんが笑うと気持ち悪いが、 せっかくの笑顔なので俺も微笑んでおこう。


荷物を背負いながら街にグングン進み宿を探した。何をするにもまず荷物を置ける宿を探さなければ何もできない。あまり高すぎず、ボロ過ぎない中間の宿を探さなければいけない。こういう時は女性が使っている宿の方が安全性が高いと思う。


道を尋ねながら、情報収集を行う。どうやら女性に人気の宿というのがあるらしく、そこが良さそうだが入れて貰えるかどうかは行ってみなければわからない。 早速店に入って料金を確認すると銀貨5枚と言われた。金貨の価値がよく分かっていないがとりあえず金貨1枚を出してみた。すると銀貨5枚が戻ってきたのでどうやら銀貨10枚で金貨1枚の価値になっているようだ。


「本来は女性専用の宿なので男性の方を止めることはないんですが、今回はたまたま空きが出ましたので、短期間との話なので倍額でお泊めすることにしました」

どうやら通常では銀貨2枚だったようだ。支払ってしまったものはしょうがない。部屋の鍵を渡され部屋に入るとベッドがひとつあるだけだったが、物を置くスペースもあったので問題もなかった。疲れきった俺はプロテインを飲んでぐっすりと眠ってしまった…

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