第9話 金髪幼女と元勇者
和馬とバカな話をしながら自分の席とマリーの席を教えてもらい、クラスの面々を懐かしい思いで見渡す。
うん……誰一人として覚えていないな。
俺の席は教室の真ん中の列の一番後ろ。
残念な事に陽菜の席は離れているが、すぐ前に座るのが和馬なので、何かあったら助けてもらおう。
ちなみに俺の左側の席がマリーで、右側は……金髪の小学生?
「おい、和馬……ちょっと良いか」
「あぁん!? リア充様が、彼女の居ない可哀そうな俺に何の用だよ」
「いや、キレ過ぎだろ。というか、俺だって未だ彼女は居ないっての。そんな事よりさ、俺の隣の席に座っている金髪の女の子って誰だっけ?」
教室の一番前から、後ろに居る金髪幼女を眺めているのだが、どう見ても高校生に見えない。
正直、中学生だと言われても、どうかと考えてしまう程の幼顔で、誰とも喋らずジーっと数学の教科書を読んでいる。
予習は偉いが、時間割を見る限り、今日の一時間目は現代文なのだが。
「颯太。お前、記憶喪失にでもなったのか? 昨日来た転校生だろ」
「あー、転校生な。うん、転校生。でも、転校生ってマリーの事じゃないのか?」
昨日、教室にカバンを置いて帰り、手ぶらで登校してきたマリーが、自分の話だと分かったのか、突然俺の腕に抱きついてきた。
その瞬間、熱い視線や、白い視線が教室中から突き刺さる。
「きゃぁぁぁーっ! 長年の想いがついに届いたんだねー! マリーちゃん、おめでとー!」
「幼い頃の想いを胸に海外から転校……良かった。良かったよー」
「巨乳美少女が幼馴染で彼女だと!? 死ねば良いのに」
クラスの女子たちが黄色い声を上げる中、すぐ隣から物凄く恨みがましい声が聞こえてくるんだが。
一先ず、熱い視線はマリーを応援していた女子たちで、白い視線は和馬を始めとする男たちだろう。
その中で、自分の席にカバンを置きに行った陽菜は……困った表情を浮かべている。
「ちょっと待った! 俺は確かにマリーの幼馴染だが、彼氏彼女とかじゃないからなっ!」
マリーには悪いが、これはずっと言っている事だし、陽菜に勘違いされるのは困るので、結構大きな声で叫んだのだが、
「ねぇねぇ。早川君のどういう所が好きなの?」
「これから早川君と毎日デートだねー。最初はカフェとかで幼い頃の思い出話とかを語り合うのかな? それとも夏だし、いきなりプールとか? いやん、大胆ー!」
「畜生! その左腕に押し付けられている膨らみは何カップなんだよ! 高校一年生ってレベルじゃねーぞ! Fか!? Gか!? せめて大きさだけでも教えてくれよっ!」
誰も俺の言葉に耳を貸さねー。
和馬に至っては、普通にセクハラだからな? それ。
せめて陽菜には俺の思いが伝わって欲しい。
そう思って目を向けると、目が合い、小さく笑みを浮かべてくれた。
それが俺の思いが伝わったのか、それとも苦笑いだったのかはわからないが、一先ず俺の言葉は届いたのだと思う。
小さく安堵した所で、マリーが未だに俺の腕に抱きついていた事に気付いたので、それを引きはがそうとしていると、遠巻きに俺たちを取り囲んでいた女子たちを掻き分けるようにして、小さな女の子――先ほど見かけた金髪小学生が近づいてきた。
だが近づいてきたものの、何も言わずに、ただ俺の顔をジッと見つめてくる。
何だ? 俺に何か用でもあるのだろうか。
勉強の邪魔だから静かにしろとか、不純異性交遊はダメだとか言われるのだろうかと思っていると、金髪小学生が自身のスカートをギュッと握りながら、
「わ、私も……私もソウタが好き」
突然よく分からない事を言ってきた。
今、この女の子は何て言ったっけ?
確か、ソウタが好きだって言ったよな?
ソウタって誰だよ。とりあえず、早く返事してやれよ。
ソウタ、ソウタ……って、あれ? まさか、俺……なのか!?
「えぇぇぇっ!?」
何故だ!? 俺に小学生の知り合いなんて居ないし、子供と接した事なんて殆どないから、子供に好かれるような要素なんて何一つ無いはずだ。
本当に、どうして!?
だが、戸惑う俺を余所に周囲が騒ぎ始める。
「キャンベル……さん? え……でも早川君にはマリーさんが、でも……きゃぁぁぁっ! 早川君モテモテじゃない!」
「昨日は殆ど喋らなかったキャンベルさんが……けど、何この三角関係。どうしよう。どうするのっ!? 二人の転校生を両方ともゲットだなんてっ!」
「お前……どうして、皆の癒しであるキャンベルちゃんまで持って行くんだよっ! マリーちゃんかキャンベルちゃん、どっちか俺にくれよっ! どっちでも良いからさっ! 巨乳美少女とロリ幼女……あぁぁぁっ! 俺もどっちも欲しいっ!」
とりあえず、金髪小学生の名前がキャンベルだって事は分かったけど、俺は陽菜一択だ。
だから、キャンベルちゃん……小さく震えながら、俺を見上げるのは勘弁してくれ。
マリーには以前から伝えているし、幼馴染という仲だからハッキリ言ったけど、この女の子にはどうやって断れば良いんだよっ!
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