第4話 僕とあいつの決勝戦
競輪選手になって、初めての決勝戦進出。とはいえ、競走得点0点なので、今日も僕をあざ笑うようなメロン色の勝負服を着る。
昨日のインタビューでは、こう答えた。
「手強い同期もいますからね、彼の6連勝を阻止できるように頑張ります。僕にとっては地元開催ですし」
9連勝での特別昇班なんて、させるもんか。
***
3日目7レース、チャレンジA級決勝戦。
僕は6号車、5連勝中のあいつは4号車。
うっかり裸逃げで準決勝戦を勝利してしまった僕には単騎戦以外の選択肢がなく、並びは4127/35/6で、本命オッズは――あいつの同県、千葉の選手の1号車を示していた。
なんだ、あいつの6連勝はそこまで期待されていないんだな。僕は少しニヤついた。
***
誘導退避直後から逃げ始める3号車。
新人選手が二人もいるのにこんなに早く仕掛けるのか、と少し慌てた。このままでは僕の脚では届かない展開になってしまう――無論、たれてくれる可能性もないとは言えないが――ひとまず僕は、3号車の三番手に切り替えた。
ふらふらと7番手を走ることだけは、したくなかったのだ。
ジャン前で振り返ると、水色の勝負服のあいつがカマして、前に出ようとしたところだった。
くそったれ。僕の完全優勝のことなんかより、あいつの6連勝の方がイヤだ!
そう思った僕は、あいつの番手に飛び付いて、番手競りをすることにした。自信など、全くなかった。だが、やるしかなかった。
***
横から激しくぶつかってくるあいつの先輩。僕もやり返す。
ふと気付けば、目の前にあいつの姿はなかった。
そして、僕も競り合っていた相手も脚をなくしてしまい、後方へと流されて行ってしまった。
***
当然のようにあいつの6連勝。僕は、大差での7着。昨日の勝利者インタビューであんなことを言わなければよかった、と恥ずかしくなりながら、あいつのインタビューを聞いた。
「狙うのはもちろんデビューから9連勝の特別昇班です! 皆様応援よろしくお願いします!」
自信満々にそう言えるあいつが、少しだけ羨ましいと思った。
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