第6話 PPPPP
フルルはどうしても疑念をぬぐえなかった。イワビーは、どうしてあんなにも頭が回るのにこの作戦に従っているのか。第6ゲーム、私はこの作戦を提案した。ジェーンを言いくるめる自信はあったし、動きを見ていてもそこまで警戒するほどではなかった。だが、イワビーはもっと拒否してくると…いや、勝ちたいならば何かしら手を打ってくると思っていた。それどころか、彼女はこれまでのネタばらしを始めた。そして、さっきのパイナップルの処分…。
「フルルさん、呼びました?」
「うん。ちょっとお願いしたいことがあってねー。」
手を打つならばここしかない。
イワビーはプリンセスと組んでいる。5ゲーム目、プリンセスが発狂したふりをして、私かコウテイのパイナップルを入れたと言い、それを彼女は確認しに行った。そして彼女はそれを肯定した。本当はプリンセスの分以外は投票されていなかったのに。
「今回の投票で、そうすればいいんですね?」
「うん。おねがい。」
「わかりました。」
先手は打った。パイナップルがない今、プリンセスに減点覚悟で動いてもらうのは不可能だろう。コウテイならなおさらだ。そして、ジェーンはもう私と組んでいる。泳がせてるつもりだったのかもしれないが、一手遅かったな。
考えている間に、コウテイとプリンセスは投票を済ませたようだ。ジェーンも投票室から出てきた。イワビーは…ジェーンが投票室から出てくるのを見て動き出した。
「イワビーさん、私はバナナに入れました。」
「じゃあ、あとはリンゴとイチゴだな。」
ジェーンはイワビーを見送るとこちらに向かってきた。
「フルルさん!約束通りやってきました。」
「ありがとー。」
そのとき、一つの可能性がよぎる。
もし、パイナップルを処分していなければ?
それならば、プリンセスに手伝わせることは可能だ。だとしたらかぶせてくるのか?しかし彼女たちはすでに投票を…じゃあ、まさか私のパイナップルを?
「次、フルルの番だぜ!私はリンゴに入れた!残りはイチゴだぜ!」
イワビーが投票室から出てきた。
「あ、うん。」
「ん?どうした?」
「え?あ、うぅん、みんなマイナスにならなそうでよかったなーって。」
「そうだな。初めはどうなるかと思ったぜ。」
「じゃあ、行ってくるねー。」
まずは予定通りに事を進めなければ。ジェーンから受け取ったスタンプを使い、メロンに投票する。
「…。」
この時点で、投票は終了しなかった。
ということは、私のカードは投票されていない!
「勝った!」
満面の笑みなのは自分でも感じた。カタカケフウチョウに苦笑されてしまう。
もし彼女らが投票してなくて、私を後から刺しに来たとしても、あちらは最終ゲームでパイナップルを何としても揃えなければいけないのだ。それに対して、こちらは最終ゲームまで攻めることができる。勝ちだ。
指定通りイチゴを受け取り、投票して投票室を出る。
「結果発表なのです。」
まさかの無策!完全勝利!
「フッ、アハハハハハ!」
「どうしたんだ!?」
「ごめんね、みんな。」
バナナ 1
リンゴ 2
「何!?なんでリンゴが2なんだよ!」
「私の勝ちだよー、イワビー。」
「フルル!?」
「どうしても独り勝ちしたくて、ジェーンと組んだんだー。」
「そうなのか!!?」
ジェーンは下を向いていた。
「続けていいのですか?」
「ごめんねー。つづけてー。」
メロン 1
「ジェーンも何か言ってあげたらー?」
「…イワビーさん、」
モモ 1
イワビーの表情も、空気も凍り付いていた。ここまできて、唐突なフルルの攻撃。この場面で来るとは思いもしなかった。
ジェーンの一言を待つフルルの目は輝いていた。やがてゆっくりとジェーンが口を開く。
「お疲れさまでした。」
イチゴ 0
パイナップル 1
「今回は一人だけパイナップルを投票したプレイヤーがいるのです。それはフルルなのです。」
「そう!このパイナップルが証拠だよ!これで私の勝ち!私だけパイナッ…プル!?」
A 10
B -3
C -1
D 10
E -1
表情が一気に青ざめる。なぜだ?スタンプはしっかり私が管理していた。どうやって?
「フルル?いいこと教えてあげようか?」
声の主はイワビーだ。彼女の顔は先ほどとは真逆で、微笑んでいた。
「一回しか言わないからよーく聞くんだぞ。このゲームで勝つのは、オ・レ・な・の。」
「う、嘘だよ!私はパイナップルなんて入れてない!」
「間違いないのです。我々はディーラーなので。」
「まだ分からないのか?お前は自分でパイナップルを入れたんだよ。」
「でも私はイチゴを受け取って…」
「本当にイチゴだったか?」
ポケットから1枚のカードを取り出しフルルに放る。
「…これって!?」
そのカードは、表が真っ黒く塗りつぶされていた。
「パイナップルだよ。絵柄が隠れていても投票はしっかりできるのが確認できたからな。あとはこれを箱に戻してもらえば終わりなんだ。勝ちが近くなって、確認を怠ったんだよ。」
「…いや、まだだよ!まだジェーンが並んでる!」
得点はあと1ゲームを残してジェーンとイワビーが並んでいる。たとえマイナスで終わろうと、ジェーンが優勝すれば借金は返済できる。
「気づいてくれよフルル。オレが行動するたびに、必ず確認してたのは誰だ?1ゲーム目、コウテイの策で点数を減らしたのは?投票を見る方法を聞き出したのは、誰だった?」
1ゲーム目。コウテイの策でジェーンの記号を暴こうとして阻止された。その時、点を減らしたのはAとDだ。イワビーの手口を聞き出したのも…。
「ジェーン…!?組んでたの!?」
初めから、イワビーの掌の上だったのか。
「さすが、イワビーだね。」
「?」
「そんなに早く、組んでいたなんて。」
「勘違いしないでくれよ?この作戦を考えたのは私じゃない。」
「私です。フルルさん。」
理解できない。したくもなかった。
「警戒すらしてなかったジェーンに、負けたんだよ。」
「うぅぅぅぅぅそぉぉぉだぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
普段からは考えられないようなフルルの叫びは、むなしく響き渡り、やがて消えた。
「最終ゲームなのです。」
砂が最後の仕事を始める。
長いようで、あっという間だった。ただし、疲労はちゃんとたまっている。皆が豹変したこの悪夢のようなゲームも、もうすぐ終わる。
「パイナップルはもう処分してもらっちゃいましたし、結局コウテイさんだけマイナスになっちゃいますね。」
「いいんだ。実はな…、私は、博士たちの指示で動いてたんだ。」
「え!?」
「知ってたわよ。」
「ええ!?なんで教えてくれなかったんですか!」
「最初に博士たちが出てきたときに片言で話してて、その時にみんな気付いたと思っていたわ。」
「あれは自分でも恥ずかしいよ…。でも、とりあえずそれで博士たちになしにしてもらえるらしいから…」
「その必要はないぜ。」
3人が囲んでいたテーブルの上に、3枚のカードが飛んでくる。
「これは?どういうことだ?」
「ポケットに入ってた。」
そう言い残して、イワビーは投票室へ消えていった。
残すはフルルの投票のみとなった。
「フルルさん。私たちは全員、パイナップルを投票しました。信じろとは言いません。」
「それは…卑怯だよ。信じても信じなくても、危険だもん。」
「確かにそうです。でも…、私たちはみんな、フルルさんを信じています。」
「…やっぱり卑怯だね。」
フルルはゆっくりと立ち上がり、投票室へ向かった。
「それでは、結果を発表するのです。」
バナナ 0
リンゴ 0
メロン 0
モモ 0
イチゴ 0
パイナップル 5
A 15
B 2
C 4
D 15
E 4
「そろった…。」
「そろったぜー!!!」
「フルルさん!」
「迷ったんだけど、やっぱりみんな揃ってPPPだから。」
「ありがとうございます!!」
少しの間、全員で喜び、祝福し、ねぎらいあった。
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