第5話 フルルの、嘘?
「第6ゲームを始めるのですよ。」
プリンセスは復讐を果たし、コウテイは嵌めたはずの者に嵌められた。フルルは組んでいた仲間が機能しなくなり、ジェーンはそんなフルルを迎え入れた。イワビーは一人一人を見てはため息をついている。
沈黙を破ったのは意外にもフルルだった。
「みんなー、ちょっと聞いて?」
「なんでしょう?」
先ほどまでのように集まることはないが、皆フルルのほうを向いた。
「今、博士いないよねー。」
「『?』」
「な、なんなのですか!?」
一斉に博士がいるはずのところを見る。が、そこに姿はない。
「いや、なんでもないわ。」
「それで、それがどうかしたのかー?」
「ずっと見てて気づいたんだけど、博士、結果発表か始まる頃に来て、結果発表が終わるといなくなっちゃうんだー。それで、さっき助手とフウチョウたちに理由を聞いたんだけどー。」
「何だったんだ?」
「このゲーム、実はここだけじゃなくて、いろんなところでやってるらしいんだー。」
「それがどうしたっていうの?」
「それでね、このゲームで勝った人たちが集められて、もっといいものをかけてゲームをするんだってー。」
「『!?』」
作り話のようだが、本当だったら…。
「フルル、言いたいことは分かった。みんな続けたくないだろうから、私に優勝させてほしい、だろう?」
この話をした瞬間、皆が勘弁してほしい、と言わんばかりの顔をしていた。
「さすがにうますぎるわね。その話。コウテイの判断に賛成するわ。」
「嘘、ってことですか?」
「さすがにこれは嘘くさいぜ。」
「違うの。勝たせてほしいのは、私じゃなくて、イワビー。」
「えっ?」
「オレ!?」
「うん。ジェーンでもいいんだけど、イワビーはずっと落ち着いてたから。」
どうも話がうますぎる。自分じゃなくて誰かを勝たせろ、とは。
「さすがに信じられないぜ。」
「うーん、あっ!助手!しつもーん!優勝者が3人いたらどうなるの?」
「その場合は3人で山分けなのです。そういうときのために150個なのです。我々は賢いので。」
150は4では割り切れない、とイワビーは言いそうになったがやめておいた。
「3人で優勝しようよ。このまま全員バラバラに投票していけば大丈夫だよ。そしたらコウテイ達もマイナス脱出だよ?」
「確かにそうだな。もう私は勝たなくてもいい。借金さえなければ。」
「私も乗るわ。もう疲れたもの。」
「ジェーンはどうすんだ?」
「わたしは…乗ってもいいかなと思ってます。本当はプラスで終われればそれでいいんですが…。」
「そうか…」
みんなが乗る以上、自分も乗らなければ損しかしない。
「じゃあオレも乗るよ。さっきまでみたいに入れたやつを言えばいいんだろ?」
「ありがとー!」
どうせこの投票の結果発表でいろいろわかる。
投票は順調に進みあっさりと6ゲーム目が終了した。
結果発表の時間になり博士が現れた。ここまではフルルの話通りだ。なにやらひそひそと話し始めた。
(博士、感づかれ始めているのです。どうしますか。)
(何も言わず、仕事をしていれば問題ないのですよ。)
「待たせたのです。」
「結果を発表するのです。」
バナナ 1
リンゴ 1
メロン 1
モモ 1
イチゴ 1
パイナップル 0
A 5
B -8
C 5
D 5
E -6
「もう半分もないのです。頑張るのですよ。」
とは言われたものの、すでに消化試合の様相を呈していた。
「なあ、コウテイ。どうやってプリンセスの票を入れたんだ?」
「あれは…。」
プリンセスの表情をうかがう。
「何よ、もう怒ってないわよ。仕返しができてすっきりしたもの。」
「じゃあ…。あれは練習の時のカードで、あの時は全員分のスタンプが投票室にあっただろう?その時に作っておいたんだ。」
「そんなことしてたのか!」
「まあ、時間がかかると怪しまれるから、プリンセスのカードしか作れなかったんだけどな。」
「あなたって…」
ごめん、と頭を下げる。
「そういえば、イワビーさんもどうやって投票を見ていたんですか?」
「あれか?カードを全部出してみればわかるぜ。」
「カードを?」
投票室でカードを全部出してもらった。すると、一番下のカードの表面にはイワビーのスタンプが押されていた。
「縦積みだったから分からなかったのか。」
「普通全部なんて出しませんからね…。」
「じゃあ誰が投票したのかはどうしてわかったの?」
「それは嘘だよ。嘘ついちゃダメなんて言われてないだろ?」
「ですよね。なんとなく感づいてましたけど。」
和気あいあいとしたまま、第7ゲームも投票が終了した。投票時にフルルが先ほどの話から「本当に分かるのか見てみたい」と言って最後に投票した。投票室から出てきて第一声は投票したフルーツではなく、「イワビーすごいねー。」だった。
「結果発表なのです。」
バナナ 1
リンゴ 1
メロン 1
モモ 1
イチゴ 1
パイナップル 0
A 7
B -6
C 7
D 7
E -4
「次が第8ゲーム目なのです。」
「ふあぁ…。」
コウテイが欠伸をする。序盤張りつめていたのがここにきて弛緩しているのだ。無理もない。
「もう砂時計なんて気にせずに投票してしまいましょう?」
「そのほうが早く帰れますしね。」
「忘れてたけど、私たちはレッスンの時間を蹴ってここに来てるんだったな。」
「マーゲイ、怒ってないかなー。」
「でも、そのマーゲイが『大丈夫』って言ってたんだ。大丈夫じゃないか?」
「そうね。とりあえず、私から投票してくるわ。」
プリンセスに続いて、投票室の前まで来た。
しかし、投票室に入ろうとすると助手に注意されてしまった。
「二人以上同時に入ったら反則なのです。」
「二人?誰か入ってるの?」
プリンセスは自分の後ろに続く列を見る。ジェーン、コウテイ、フルル。
…イワビーがいない。
その時、投票室の出口からイワビーが出てきた。
「どうしたんだ?イワビー。」
「ああ、ちょっとな。いらないものを処分してた。」
「投票室で?」
プリンセスはドアを開ける。いらないものとは。一見変わった様子はない。
「何かありました?」
ジェーンものぞき込んでみる。
「パイナップルだよ。」
背後から声がする。
「パイナップル、もう使わないだろ?もし間違って投票すると危ないと思ってさ。」
「なにを…いや、確かに要らないな。でもそれじゃあゲームが…」
「それなら大丈夫だぜ。このゲームはカードが3種類あれば問題ない。だよな?」
「間違ってないのです。」
「じゃあ、大丈夫か。」
「それと、オレはモモに投票しといたぜ。」
それを聞き、プリンセスは投票室へ入っていった。それに続いて、各々が投票を済ませた。
「結果なのです。」
心なしか助手の言葉も短くなっている。疲れたのだろうか。
バナナ 1
リンゴ 1
メロン 1
モモ 1
イチゴ 1
パイナップル 0
A 9
B -4
C 9
D 9
E -2
「次に行くのです。」
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