第3話
そしてそろそろ感覚がつかめてきたかなってところで今度は次のステップに移行する。背中側からシャツとズボンの裾を掴んで実際に新入生らにバク転をさせる。
「1にまずバンザイして2で手を振り下ろして3で地面を蹴って飛ぶ、ちゃんと手を振り上げてね!」
「じゃあ1,2,3って声掛けするからそのタイミングでやってみて」
「イッチ、ニー、サン!」
新入生が飛んだのに合わせて掴んだ腕で押して背中をそらして回す。
「地面に着手するときちゃんと手をついて曲げないようにする!」
まあ今のは初めてにしてはまあまあってとこかな
「次っ!!」
1,2,3で飛ばして手を突いたところであ、今のはまずいっ……
すぐに部長は腕で押し上げるのをやめて引き戻した。
「あっぶねぇなあ……」
大声を上げたせいで周りの視線はバク転しようとした新入生に集中している。
バク転を止められた子は驚いて茫然として何がどうなったかわからない状態である。
少し落ち着いたので声をかける。
「今の着き手の形あぶないよ、親指を外側に出すようなやり方で勢いよく手を突くと肘を痛めたり最悪脱臼
することになるから、みんなもよく聞いてて。親指は中に入れて手はハの字に見えるような形にして着くこと!!」
「先生、なんでそんな当たり前のこと最初に言わなかったんですかー?」
部長があきれ果てた顔をして尋ねる。
「言い忘れてたのよ、でも何事も一度経験してみないとどれだけ危ないかなんてわからないでしょ?」
「それで取り返しのつかないことになったら洒落にならないっすよ」
「アンタを信用してたのよ、危なくなったらとっさの判断できっと止めてくれるってね」
「俺はそんな万能じゃないっすからそういうの勘弁してくださいよ……」
もちろん口から出まかせなのは言うまでもないのではあるが。
そうしてなんどかやっていくうちにそれなりにできてきそうな生徒も出てきた。
部長も当然それに気づいてくるので補助の力を緩めていく…………しかしそうするとやはり手を着いたあと
うまくいかず着地で膝を着いたり頭をマットにつけてしまうようなことになっていくのであった。
「バク転は上向きじゃなくて後ろに飛ぶよう意識するのよ!」
言っては見たもののまだなかなか感覚がつかめず苦労しているようだった。
じゃあもうちょっとヒントをやるか……
「はーい、いったん止めてちゅうもjぉおおーく!!」
「チョット、アンタこっちに来なさい!」
バク転練習していたうちの一人を私が座っていた椅子に座らせてみた、一応書いておくが別にそういう趣味がある
とかいうわけではない。椅子に座らせるとすかさず
サッ!!
思いっきり座らせていたパイプ椅子を引いた。
「わあっ!!」
当然そのまま転げそうになる新入生の尻を地面に強打しないように支えた。こういう遊びで尾てい骨を骨折したり最悪人工肛門になったとかいう話も聞いたことがあるから私も必死だ。
「ちょっとぉ、何すんですか先生!?」
「こういうことなのよ! わかった?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます