第24話 結局は同じ理由
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくれ。意味が全然理解できないんだけれども……Youが女神様なの?」
「はい♪」
ここは敢えて断って欲しいところだったのが、俺の小粋な英語交じりのジョークはまともな返事で無残にも返されてしまった。
「女神様……ねぇ~」
スライムが自称女神様を名乗った手前、俺は疑いの目でソイツを見てしまう。
何故ならウチの
正直俺自身、シズネさんが女神様だという確固たる物証も、また確認も取れているわけではないのだが、それでも俺と同じく世界を何度もやり直しをしているため、そうであるとの信頼が揺らぐことはない。
だからそのスライムが今口にしたことは俄かには信じられないどころか、到底信じられるわけがなかったのだ。
「あの……もしや、私が嘘をついているとお思いなのですか?」
「うっ。ま、まぁ…それもあるだろうし、そもそもお前はスライム……つまりモンスターなんだよな? その言葉を簡単に鵜呑みにできるわけがないっつうか……」
明け透けもないスライムの問いかけに対し、俺は若干ではあるが言葉を詰まらせながらも肯定した。
「そうですか……ですが、私が本当にこの世界を創造した女神様なのです。今はこのような魔物の姿ではありますが、元に戻ればとんでもない美人なお姉さんです」
「う、うん。そうなのか……」
いくら言葉で自分の本当の姿は女神様、容姿も美人なお姉さんなどと言われても、「はいそうですかー」っと安易に肯定することはできなかった。
「そもそもこの世界の創造主(?)なら、なんでそんなスライムの姿しているんだよ? 自分でなんとかできるはずじゃないのかよ?」
俺は当然過ぎる疑問を思い切ってぶつけてみることにした。
「そうですね……当然そう思われますよね。ですが、とある者によってこのような姿形にさせられてしまい、女神として……また創造主としての力をも奪われてしまったのです」
「力を誰かに奪われたって……それってまさか……」
俺はそう言われ、思い当たる人物一人だけを頭に浮かべてしまう。
心のどこかで外れて欲しい……そう願ったのだが、生憎と早々上手くいく訳がないのが世の中の摂理なのかもしれない。
「えぇ、そうです……あのシズネと呼ばれる少女になります」
「あのシズネさんが……」
やはり……というか、ほぼ「そうなのだ」との確信は確かにあった。
けれどもいざその名前を聞いてしまえば、その疑念は更に深まることになる。
「はい。元々彼女はこの世界の管理人と言う立場でありました。ですが、いつしかNPCという立場から逸脱し自我が芽生え、自らに宛てがわられていた役割について疑問を抱くようになってしまい、そして世界が再構築するまさにそのとき、一瞬の隙を突いて私の女神と言う立場と力を奪い去り、この世界の創造主に収まってしまいました」
「…………」
シズネさんがこの世界の管理人という立場だったことにも驚きはしたが、まさか彼女が他のモブキャラと同じくNPCという立場であったほうに驚きを隠せなかった。
NPC……ノン・プレイヤー・キャラクター。
昔のレトロゲームに当てはめれば、セントラル・プロセッシング・ユニット……いわゆるCPUである。
彼ら彼女らは、あらかじめ設定されたセリフや行動のみをただ遂行するだけの存在であり、自ら自我が芽生え思考して行動を起こすなんてことはまずありえないことだった。
それこそ現代における最高の技術結晶であるAI(人工知能)ですら、成し得るかも分からないほど高性能且つ特異な存在と言えよう。
「…………信じられませんか?」
「あっいや……あまりにも突飛な話すぎて、俺には何がなにやら……」
言葉を詰まらせ、様々な考えが頭の中を駆け巡り無言だったところで自称女神様というスライムからそう問われてしまう。
「あのぉ~……そもそもこの世界は何なんですか? 俺、目覚めたらいきなりこの世界に寝ていたっつーうか、低予算で組み上げられたゲームだかっての中に居るって、シズネさんからは言われたんですけど……」
この世界の創造主たる女神様ならば、俺の疑問に容易に答えることができるはずである。
「そうですね。理由と言いますか、目的は悪魔
「あっ、あっ、ああ……や、やっぱり“それ”なんですね」
ここに至ってなお、目の前の自称女神様とやらはシズネさんと同じ事を口にしていた。
一瞬「もしかすると彼女もNPCなのではないのか?」そう思わざるを得なかった。
世界を救う……そもそもこの世界を救って何の意味があるというのだろうか?
シズネさんと目の前の女神様の言ってることをまとめると、この世界は作られたゲームの世界であり、俺が元居たはずの現実世界から見ればいたってどうでも良い話である。
それなのに彼女達は口を揃えて、「魔王を倒して世界を救う」……その言葉だけをただひたすらに繰り返している。
もはや世界も、そしてこのキャラ達も、等しく誰かによって作られ組み上げられた存在だと疑う余地もなかった。
問題はそれを誰が作り、そして何の目的があったそうしているのか、また俺がそれに選ばれてしまったのか、疑問は尽きなかった。
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