第13話 ゲームにおける摂理
「おおっ、勇者とその一味よ! 度重なる苦悩の末、ようやく暴れ馬とやらを捕まえたのだな? おおおおーっ、これが噂に聞く暴れ馬なのか……よしよし」
「がーぶっ」
王様への報告を兼ねて再度城へと暴れ馬ことジズさんを引き連れて訪れると待ち構えていたかのように王様が手を広げ、俺達が女神様のお告げを達成したことに喜び振るえジズさんの頭を撫でようとしている。
だがしかし、何を思ったのかジズさんは王様の頭から齧り付いていた。
「おーおーっ。これは元気な暴れ馬であるな! これならば、西の砂漠にも耐えられるであろうな。勇者達よ、次なる目標として西の砂漠を越えてみせよ。だが、西の砂漠はそなた達が思っているほど甘いものではないぞ。なんせ一面砂の海であり、そこにはなんと地球温暖化先駆けで……」
「もぐもぐ」
「…………」
(王様、食われてる。アンタ、今まさにソイツに食われてるんだよ。何で普通にセリフ続けて喋っていられるんだよ……口ん中に唾液とか入ってきやがっても平気なのか?)
絵描写的には、もはや王様の顔はジズさんに啄ばまれモグモグされている最中であるのだが、何食わぬ顔……いや、捕食されながらもセリフだけはしっかりと続けている。俺はそんな王様の演じる心意気に感服しそうになってもいた。
「今度は西の砂漠なのかぁ~。きっと砂漠というからにはきっと暑いのだろうなぁ~。日焼け止めのためにサンオイルとか必要になるんじゃないのか?」
「ええ、なんせ西の砂漠と言えば昨今の地球温暖化の“走り”ですからね。暑さ対策は元より水の確保が重要になるかと思われます」
ここに至ってアマネもシズネさんも極普通に会話を続けているのだが、目の前で王様が捕食されているというのに本当に良いのだろうか?
そうして次の俺達の目標は『西の砂漠を越える』というものらしい。
砂漠を越えるためには、まず街で必要な水や食料それと日焼け対策などのアイテムを入手することになった。
「これでよし。結構時間はかかってしたまったが、砂漠を渡るのに必要なものは大体揃ったな! あとは西の砂漠へと向かい越えるだけだっ!!」
そして道具屋でそれっぽい道具の類を金も払わずに強奪すると、西の砂漠に向かう準備が整い街を出て西の方角へと向かうことになったのだが、ふとそこで疑問が生じていた。
「なぁアマネとシズネさん。俺達さ、さっき水や食料を大量に買い込んだ……というか、強奪してきたよな? でもさ、誰一人としてその荷物持っていないようにしか見えないんだけど……大丈夫なのかよ? あとから誰かが運んでくれるってわけなのかな?」
そう俺達は道具屋などで店の在庫が無くなってしまうほどの水や食料を購入したにも関わらず、誰も持っている風にはとても見えなかった。
「もしかして後ろに積んでいるのかな?」っと思いジズさんが牽いている荷馬車の中を覗き込んでみたのだが、やはりどこにも荷物らしきものは存在し得ない。それどころかむしろ馬車の中はからっぽである。
「うん? 荷物のことか? それならちゃんとここにあるだろう」
「……へっ? ど、どこに???」
「ほら、ここの道具袋の中にだ」
アマネは不思議そうな顔を浮かべながら、自らの左腰に携えている茶色の麻袋を軽く叩いている。
だがとてもじゃないが、その見た目薬草数枚が入れば上出来といった容量が無いようにしか見えず、また袋もそれほど膨らんでいるわけではない。
「いや、アマネ。そんな冗談とか抜きにしてさ、マジで砂漠に行くなら水と食料は大事なんだぞ」
「うーん。何だかキミとは話が合わないなぁ~」
「話が合わないのは俺のほう……」
「それなら取り出してみるか? ほら」
「……って、はあぁ~~~っ!? なんだよ、そりゃ!?!?」
ドッゴーン!
見れば手の平ほどの小さな袋口から人の背丈半分ほどの樽が飛び出してきた。
そして見れば見るほど不思議な光景ではあるが、アマネはそんな驚き戸惑っている俺を尻目に袋の中からドンドン物資を出し地面に広げ始めている。
「ほらほらほら」
「あっ……あっ……ああ……」
まるで露店商店が如くいくつもの樽や干し肉などの食べ物が地面へと広がっていく。
「どうだ? これでキミも信じただろう?」
「いやいやいやいや、その袋一体どうなっていやがるんだよ! 絶対にありえねぇよ!! 大体その袋口よりも大きなものが次々と飛び出しまくってんぞ!! 完全におかしいだろうっっ!!」
「うん??? 君が先程から何を言っているのか、分からないなぁ~」
だがそのことをアマネに訪ねると不思議そうな顔をされてしまい、首を傾げられてしまう。
(完全に物理法則無視しまくりじゃねぇかよ! いや、まぁゲームの世界だから矛盾っつうか、そもそも可笑しいのが当たり前なのか?)
そこいらの見世物パンダに負けないほど俺が目を白黒させていると、右の肩を軽くポンっと叩かれてこう言われた。
「まま、ユウキさん。これは“あくまでも”ゲームの世界ですからね。細かいことは気にしないで下さいな♪」
「ほんと……そうだよな。うん……」
この世界を作った女神様にして管理人であるシズネさんからそう言われてしまえば、もはや反論の余地すら俺には残されてはおらず、納得というか頷きゲーム世界の
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