312話 激戦の後で…
<シェフ ソフィー 畑から開墾して、料理する春野菜スペシャル その10>
㋐「そもそも、自分でパイ生地作ればよかったんだよ」
アキのこの不用意な発言が、ソフィーの心に火を付ける。
㋞「なるほどねぇ。良いこと言うじゃない。おーい! アキさぁーん!」
㋐「いや、だって… そうでしょう?」
㋞「気持ちいいこと言うじゃない」
ソフィーは恐ろしいことを言い出す。
㋞「アキさん… 私はね… これから、アキさんの大切なモノにどんどん… おみまいいしていくわよぉ…」
㋐「大切な者って… フィオナ様には手を出さないでよ! 紫音ちゃんならいいけど」
㋛「紫音も大切にしてよ!」
アキの親友とは思えない発言に、紫音は涙目で突っ込む。
㋞「そんな事はしないわよ! シオン先輩を酷い目に合わせても、アキさんみたいな人には何の効果も無いでしょう? むしろ、先輩が酷い目に合っているのを見て笑うでしょうが!」
㋛「はぅ!? アキちゃん、酷いよ!」
ソフィーの発言を聞いて、更に涙ぐむ紫音。
㋐「いや、そんな事は無いよ?! ソフィーちゃんは、私の事を何だと思っているの? 流石に目の前で、私のせいで紫音ちゃんがソフィーちゃんに酷い目にあわされたら、全力で謝るよ?」
アキはすぐさま弁解する。
親友が目の前で酷い目に遭うのを、黙って見ていられる程アキの心は強くない。
㋞「私はね… アキさんが大切にしている物… そう! アキさん秘蔵のBLコレクションに、おみまいしていくのよ! 選びなさいよぉ 廃版BL漫画かしら? それとも、非売品BLフィギュアかしら?」
㋐「ソフィーちゃん! マニアのお宝コレクションに手を出すなんて、極悪非道だよ!? 大炎上ものだよ!?」
アキの意見はもっともでもあるが、自業自得であることも否めない。
こうして、皿作りは陶芸家に扮したソフィーが、ろくろと一緒に回るアフラに突っ込むなどして問題なく制作する。
<3月15日 午前6時 ミレーヌ邸裏庭>
㋛「みなさん、おまたせしました。シリアスな展開が続く本編に、コメディ要素をという考えで始まったこの茶番<シェフ ソフィー 畑から開墾して、料理する春野菜スペシャル>も今回で最後となりました。それでは、お呼びしましょう。シェフ ソフィーです」
㋞「やっと、料理作るのね! 今回こそ本当に作るのね! 三個目のパイ生地を無駄にしないわね?!」
呼び込まれたソフィーは、三個目のパイ生地を手に持って、執拗に聞いてくる。
㋐「今回は作るよ。そのために、クリスさんも読んでいるしね」
アキの後ろには、クリスが控えている。
㋛「それでは、もう一人呼びましょう。企画当初から一緒に畑を耕し、皿を作ってくれたShiONちゃんです!」
紫音に呼び込まれたアフラは、頭にだけShiONちゃんの形をした被り物を被って登場する。
㋞「あれ? あのいつものキグルミはどうしたのよ?」
ソフィーの質問に、紫音が答える。
㋛「キグルミは王都にある大教会のイベントで、使われています」
㋞「あのキグルミ、イベントに使われているの!?」
㋐「あのポンコツ― フィオナ様が、どうしても使いたいって言ったから、貸し出しているの」
どうやら、フィオナがShiONちゃんを気に入ったらしい。
こうして、畑に向かって野菜を収穫した紫音達は、屋敷に戻ってくるとソフィーは厨房で、料理を作り始める。
㋞「さあ、腕がなるわね!」
ソフィーが腕まくりすると、恐竜の鳴き声のような効果音が入る。
彼女は収穫した野菜やその他の食材を使い、手際よく料理を作っていく。
そして、彼女の作る料理はエレナほどではないが、美味しく無難なモノばかりであった。
パイ料理も美味しくできており、クリスもその味を褒め、ソフィーは念願がようやく叶い嬉しそうにしている。
だが、アキだけは不満顔であった。
㋐「ちょっと、ソフィーちゃん。何を普通に美味しい料理を出しているの?」
㋞「はあぁ!? アナタこそ何を言い出しているのよ?」
㋐「こっちはね、一品作るのにねぇ 2時間待たされた挙げ句に、まずい料理を食べさせらてねぇ それで、『ふざけんなー!』って、ソフィーちゃんと舌戦を繰り広げたいわけだよ。それを、何美味いもの作ってんだよ、このツンデレ!」
㋞「そんな事知らないわよ! それに最初に言ったでしょうが、私は普通に料理を作れるから、面白くも何とも無いって!」
㋐「ソフィーちゃんには、がっかりだよ…!」
㋞「だから、ジト目にでも作らせなさいって言ったでしょうが!」
㋐「そうだね。こうなったら、本編でリズちゃんに頑張って、おみまいしてもらうしか無いね」
本編 <シェフ Oh リズ Me>に続く…
#####
リザード本拠点攻略が終了したその頃、オーガ本拠点では―
「私のターン! 場に一枚カードを出して、ターンを終了させるぜ!」
クロエはそう言いながら、カッコよくポーズを決めトランプを一枚場に出す。
「七並べは一枚しか出せないから、そんな宣言しなくてもいいわよ。というか、さっきから鬱陶しいわよ」
エマはクロエが一々そうやって、無駄に騒がしくトランプを出すため鬱陶しく感じていた。
ただクロエにも言い分はあって、かれこれ1時間トランプばかりしており、こうでもしない飽きて辞めたくなってしまう。
「というか、誰? スペードとハートを5で止めているの。どうせ、エマ姉でしょう? こんな大人げないことするのは!」
「作戦でしょう?」
「暇つぶしのゲームなんだから、楽しくやろうよ」
「アンネ、眠くなってきちゃったの~」
二人が言い争っている横でアンネは大きなあくびをしながら、そう言ってウトウトとしはじめる。
「寝るなら、テントで寝ましょうね」
エマが眠い目をこするアンネをテントに連れて行く。
残されたクロエは、リーベに先程から考えていたことを話し出す。
「真悠子さん… もしかして、冒険者達ってもうここには来ないんじゃないかな…?」
「そうかもね… そうなると中止になったのか、或いは… 」
リーベはここで“リザードを攻略に行ったのかも”という言葉を飲み込む。
例えそうであったとしても、今更間に合わないし血気盛んなクロエやエマが今から救援に行くと言い出しかねないからである。
「まあ、もう少し待ってみましょう…」
そのため、このように言葉を濁してしまった。
舞台は再びリザード本拠点に戻る。
人間達は勝利したとはいえ激戦で疲労しており、本拠点内部を少しだけ探索して、安全を確認すると本格的な探索は明日に回すことになった。
紫音とアフラ、カシードその他の氷でビショビショになった者達は、体を焚き火で温めている。
「温かいね~」
「温かいね~」
紫音とアフラは体を温めながら、呑気にそのような事を呟く。
そして、次第に辺りは暗くなり、料理人の彼女が動き出す事になる…
次回 <ピストル(ビストロ) Oh リズ Me>開店!
~ソフィーちゃん、酷い目にあう!~
乞うご期待!
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