236話 牢屋からの脱出
前回のあらすじ
アキの罠に嵌って、閉じ込められてしまった紫音。
その頃、アリシアとレイチェルがミレーヌの屋敷にやってきて、PT参加を表明するのであった。
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仲間入りの挨拶を終えた後に、アリシアはため息を付いてこのような事を話し始める。
「それにしても残念です。オーク本拠点侵攻作戦の後、シオンさんへの態度をあっさりにしたのも、こうやってすぐに会えると思っていたからだったのに…。こんなことなら、あの時もっとあんな事やこんな事をしておくべきでした……」
「えっ!? <大人の駆け引き><押しても駄目なら引いてみな! 太陽と北風作戦>じゃなかったッスか?!」
そのアリシアの言葉を聞いたリズは、アキの言っていた策ではなかったのかと聞き返す。
「何のことですか?」
すると、アリシアは何の事かわからないと言った顔で答える。
「何が<太陽と北風作戦>よ! あの駄目なお姉さんコンビ……。帰ってきたら、文句言ってやるわ!」
ソフィーはアリシアの反応を見て、アキ達のいい加減な発言に文句を言ってやろうと思うのであった。
その二人の今の状況を知らずに……
その紫音は、牢屋の扉の前で膝を抱えて座り、アキとの楽しかった思い出を思い返していて一つの結論に辿り着く。
(アキちゃんは、魔王に洗脳されて操られているんだ!)
そう考えると、紫音は力の抜けていた体に再び力が湧き上がりこう呟く。
「ここから脱出して、アキちゃんを助けないと!」
紫音が覇気を取り戻した時、扉の向こうからご飯を入れる穴から手を入れて、紫音の腰のあたりについている猫のしっぽの飾りを掴んで引っ張る者が現れる。
「何!?」
突然尻尾を掴まれた紫音が驚いて、後ろを見るとご飯を入れる穴から伸びた幼女の手が、尻尾を握っているのが確認できた。
そして、その手の持ち主が扉の向こうから、話しかけてくる。
「その声はシオンだな?」
年下ちゃんの声を聞き分ける特殊能力を発動させて、声の主を特定する紫音。
「マオちゃん!」
マオは自分の名を呼ぶ声を聞いて紫音と断定するが、そうなると生じる疑問を尋ねてくる。
「やはり、シオンだな。では、我が握っているコレは何なのだ?」
「それは、メイド服に付いている尻尾だよ」
マオは紫音との受け答えの後に尻尾から手を離すと、穴から手を引っ込めて彼女にこのように話しかけてきた。
「メイド服? 尻尾? よくわからぬが、今扉を開けてやるぞ」
マオはステルスマントを使って姿を消して、盗んできた牢屋の鍵を使って、扉の鍵を開ける。
「シオンよ。何だ、その珍妙な格好は?」
扉が開き牢屋から出てきた紫音のネコ耳メイド姿を見て、マオは少し呆れた感じで質問してくると、紫音はすぐさまこう答えた。
「眠らされている間に、アキちゃんに着替えさせられたんだよ!」
紫音は決して自分の趣味ではない事を強調する。
マオは鍵と一緒に取り返してきた、紫音の女神の鞄と女神武器のうち折れた打刀を、彼女に手渡す。
「ありがとう、マオちゃん」
紫音はマオにお礼をしながら、腰に鞄と打刀を装着する。
マオが言うには壊れていない脇差は、アキが用心のために持っているようで、服は見当たらなかったらしい。
紫音は侵入してきたマオの案内で、牢屋に繋がる長い廊下を出口に向かい歩いていた。
「ところで、ここはどこなの? アキちゃんの屋敷ではないようだけど…」
紫音の質問にマオは説明を始める。
マオの説明によると、ここは紫音が修業していたアキの屋敷の裏山を逆方面に降りた場所で、そこには200年前に前魔王が建設したオークの本拠点であり、今は放置され廃墟となっていた所らしい。
「どうやら、アキはその廃墟を自分の秘密の拠点とするために、ゴーレムを使って一部を修復していたようだな。もしかしたら、かなり前から魔王と繋がっていたのかもしれんな」
マオの意見に紫音は、ムキになって反論する。
「アキちゃんは…、アキちゃんは、きっと魔王に操られているんだよ! アキちゃんが、私を…人類を裏切るわけはないよ!」
その紫音の反論というより、幼馴染を信じているだけの感情論を聞いたマオは、冷静な顔でこう話してくる。
「そうかの……。操られているようには見えんがな…」
マオのその言葉に、アキを信じたい紫音は更に感情的に言い返す。
「マオちゃんに、アキちゃんの何がわかるの! 私はずっと一緒に過ごしてきたから、アキちゃんの事はわかるの!」
マオは感情的になっている紫音には、何を言っても無駄だと思って黙っていることにした。
紫音達は牢屋のあった建物から外に出ると、どこからか声が聞こえてくる。
「せっかく、牢屋に匿ってあげたのに逃げ出そうとするなんて、シオニャンもそれを手伝うマオちゃんも悪い子だね…。悪い子はお仕置きしないとね!」
声のする方を見ると、四方を囲む城壁の上にいかにも悪者といった黒いマントをつけたアキが、立っているのを紫音は見つける。
「アキちゃん!」
紫音が城壁の上にいるアキに呼びかけると、彼女は紫音に指差してこう言ってきた。
「逃げ出そうとするなら…、残念だけど紫音ちゃんを斃すしかないね! そして、その戦闘力をその控えめな胸と同じ様に控えめにして、私達の野望の邪魔にならないようにしてあげるよ!!」
アキは指差していたひと差し指を、紫音の胸にずらして差してからそう言い放つ。
そして、紫音が「誰が控えめな胸だよ!」とツッコミを入れる前に、「さあ、荒神の登場だ!!」と叫んで、エメトロッドを天高く掲げて魔力を込めるとゴーレムを呼び出す。
アキがエメトロッドに魔力を込めると、元オーク本拠点の地面全体に巨大魔法陣が現れ輝き始める。
「これは!?」
紫音が足元に現れた巨大魔法陣に驚いていると、マオが紫音の腕を掴んで門の方に走り出しながらこう叫ぶ。
「このままでは不味い! シオン、城壁の外まで逃げるぞ!」
「えっ、うん!」
二人はその快速で門から出て、元オーク本拠点の外に逃げ出すと、巨大魔法陣から元本拠点の廃墟を壊しながら、八つの頭と八つの尾を持った巨大な蛇のゴーレムが出てくる。
「ヒュドラか?!」
「違うよ、マオちゃん。あれは八岐の大蛇だよ…」
紫音は、八つの鎌首をもたげた山のように巨大な八岐の大蛇型ゴーレムに、圧倒されながらマオにそう答えた。
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