237話 猛襲ヤマタノオロチ
前回のあらすじ
逃げ出そうとした紫音達に対してアキは、八つの鎌首をもたげた山のように巨大な八岐の大蛇型ゴーレムを呼び出して、戦いを挑んできた。
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アキは巨大な八岐の大蛇型ゴーレムを呼び出し、城壁の上から不敵な笑みを浮かべながら、紫音達を見下すように見ている。
そんなアキに対して、紫音はこのように話し仕掛ける
「アキちゃん! 今魔王の洗脳から助けてあげるからね!」
その紫音の言葉を聞いたアキは、不思議そうな顔でこう言ってきた。
「魔王の洗脳…? 何を言っているのかしら、紫音ちゃん?」
そして、その後にアキは悪い笑顔でこう話を続ける。
「私はね、紫音ちゃん。自分の意志で魔王側に付くことに決めたんだよ」
紫音はアキを説得するように語りかける。
「魔王に洗脳されているから、そう思っているだけだよ!」
「紫音ちゃんがそう思うのなら、そうなんだろうね。 紫音ちゃんの中ではね…」
だが、そんな紫音の説得をアキは、とても冷たくあしらってくる。
紫音はアキの冷たい返しから、魔王の洗脳を解かなければ、会話にならないと判断する。そのためには、立ち塞がる巨大な八岐の大蛇型ゴーレムを倒さなければならない。
紫音はそのために折れた打刀を構えて、オーラの刀を作り出すと目の前にそびえ立つ八岐の大蛇型ゴーレムと対峙するが、よく見ると八岐の大蛇型ゴーレムは可愛らしい外見をしていることに気付く。
八岐の大蛇型ゴーレムは、岩でできているために全体的にゴツゴツとしているが、丸みを帯びていて目は丸くつぶらで可愛らしい外見をしている。
「このやまたのおろち、意外と可愛いかも……」
可愛いものが好きな紫音が、やまたのおろちを見て心が和んでいると、アキがやまたのおろちに攻撃命令を出す。
「やれ、おろち! 紫音ちゃんを体の一部と同じように、ぺったんこにしてやれ!」
「私はどこもぺったんこじゃないよ!?」
紫音が強がって反論していると、おろちの8つの頭の内の一つが、彼女めがけて突進してくる。
「!?」
紫音は突進してきたおろちの頭が、予想以上に大きいことに近づいてきてから気付くと、オーラステップで急加速しサイドステップをして間一髪で回避する。
(これは、オーラの刀の長さでは、大きなダメージを与えるのは無理だ…)
アキに脇差を奪われている為に、女神武器の特殊能力もハイパーオーラバスターも恐らく半分の力しか出せない。そこで紫音は、その状態でやまたのおろちを斃しきれるかわからないので、薬でオーラを回復しながら“蒼覇翔烈波”で一つずつ頭を破壊する作戦に出る。
紫音は打刀に“蒼覇翔烈波”を放つためのオーラを溜めながら、次々に襲ってくるおろちの頭攻撃を回避する。
「蒼覇翔烈波!!」
そして、オーラが溜まるとおろちの首の一つに向かって、“蒼覇翔烈波”を放つ。
“蒼覇翔烈波”は、見事におろちの首の一つに命中して、消し飛ばすことに成功する。
「よし!」
紫音は手応えを感じて、次の首を破壊するためにおろちの攻撃を回避しながら、オーラを溜め始めた。そして、“蒼覇翔烈波”で二つ目の首を撃破すると、アキに対して話しかける。
「アキちゃん! すぐにおろちを斃して、洗脳を解いてあげるからね!」
その紫音の言葉を聞いたアキは、笑みを浮かべながら余裕の態度でこう言ってきた。
「フフフ…。紫音ちゃんは、可愛いなぁ。もう勝ったつもりでいるの? じゃあ、こっちも本気で行くね!」
アキは紫音にそう言うと、エメトロッドを掲げて魔力を込めると、消し飛んだやまたのおろちの首の一つが再生されていく。
「このゴーレムは岩でつくっているから、防御力はあまりないけどその代わりに、こうやって回復させるのが簡単なんだよ!」
「そんな!?」
紫音は再生していく首に驚くが、すぐさまこう言ってオーラを溜め始める。
「それだったら、回復するよりも先に首を全部壊してやる!!」
「さあ、そう上手くいくかな? 紫音ちゃん、今度はもっと激しく攻めるから、気合を入れてね。やれ、おろち!!」
アキはそう言うと、首を再生させながらおろちに紫音への攻撃を命じる。
紫音はオーラを溜めながら、おろちの攻撃を跳躍して回避して着地すると、そこに次の首が襲ってくる。
「ひゃぅ!?」
紫音はそれを何とか回避すると、さらにそこに次の首が襲う。
おろちは残った6つの首で次々と紫音を襲い、彼女にオーラを溜めるどころか回復も許さない。そして、7つ目の首が再生され攻撃に加わると、ついに紫音は避けきれずに攻撃を受けそうになる。
(やられる!)
紫音が咄嗟に防御態勢を取ると、彼女の前に大きな魔力の鎌を持ったマオが現れて、その首を一刀両断にした。
「マオちゃん!」
紫音が守ってくれたマオに感謝の顔で呼びかける。
「退くぞ、シオン!」
マオはそう言って、フラッシュの魔法を放ってアキと紫音の視界を奪うと、その間に紫音を抱えてその場を離れる。アキの視界が戻った時、すでに目の前から紫音とマオの姿は消えていた。
「まあ、いいわ…。どうせ、紫音ちゃんは私を取り戻すためにすぐに戻ってくる…」
彼女はそう一人呟くと、消し飛んだおろちのもう一つの首の再生を始める。
その頃、マオは紫音を抱えては遠くまで逃げられなかったので、近くにあった洞窟に逃げ込んでいた。
オーラを回復させる為に、オーラ回復薬を飲みながら紫音はマオに先程のお礼をする。
「マオちゃん、さっきはありがとう」
「別に礼はいらぬ。それより、シオンよ。一度街まで撤退して仲間を募り、人間を裏切って魔王側に寝返ったアキを斃しにくるべきではないか?」
そのマオの言葉に紫音は、つい声を荒げて反論してしまう。
「マオちゃん! アキちゃんは斃さないよ! 斃すのはおろちだけだよ! それに、アキちゃんは人間を裏切らないよ!」
その反論に、マオと紫音は言い合いを始めてしまう。
「本人がそう言っていたではないか?」
「あれは、操られてそう言っているだけだよ!」
「本当に操られているのか? 紫音よ、冷静になってよく考えてみよ。アキに人間を裏切る程の動機や恨みはないのか?」
「アキちゃんに人間を裏切る程の動機や恨みがあるわけな……」
マオのその問いに紫音は、そこまで言って”ハッ”とする。
(ある… アキちゃんには、人間を裏切る程の動機や恨みが…)
アキは、元の世界で通り魔にわずか15歳で、その生命を奪われてしまった…
やりたい事も将来の夢もあったであろう…
それを罪もなく理不尽に一方的に奪われってしまったのだ…
(別の世界とは言え、それを奪った醜い人間を恨まないはずがない…)
紫音がアキの動機に気付いて悲壮感を漂わせた顔で沈黙していると、それの表情を見たマオが察して声を掛けてくる。
「どうやら、思い当たる節があるようだな…」
マオの質問に対して、暫く思いつめた顔で黙っていた紫音は、何かを決意した顔でマオにこう言い放つ。
「だとしても…私が……、私がアキちゃんを説得してみせる!」
紫音は幼馴染であり親友のアキを助けたい、できれば元のアキに戻って欲しいという気持ちでいっぱいだった。例えそれがどれほど困難なことであったとしても……
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