222話 親友



 前回までのあらすじ

 マオの中二病疑惑から、紫音とアキはお互いの恥ずかしい過去を暴露しあう事になってしまった。


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 ヒートアップした二人は、いつまでおねしょをしていたなど、過去の恥ずかしい事を暴露しあってしまい、二人して激しく凹んだ。そして、恥ずかしさで崩壊しそうな精神を安定させるために、紫音がミリアをアキがリズをそれぞれ抱きしめていた。


「今にもハートブレイクしそうなお姉さんのガラスのようなハートは、可愛いミリアちゃんを抱きしめることができて、とても癒やされているよ」


 紫音は、満面の笑みを浮かべてそう言いながら、ミリアを抱きしめている。


「///」


 ミリアは憧れの紫音に抱きしめられて、嬉しさのあまり声も出せずにいた。

 アキに抱きしめられているリズは、いつもの眠そうなジト目を大きく開けて、少し潤んだ瞳で、声もいつもより可愛らしい声をだしてアキに話かけける。


「リズね…。アキお姉さんが元気になってくれるなら嬉しいよ…」


 そのように健気な感じでいるリズの手には、ドラゴンのフィギュアが握られていた。


(フィギュアで籠絡されている!!)


 周囲の一同はそれを見て、リズがアキに抱きつかれ更にあざと可愛くしている事に納得する。


(うーん。あざと可愛くしているリズちゃんには悪いけど、私は紫音ちゃんみたい年下ラブじゃないから、可愛いとは思うけどあそこまで癒やされないな…)

 アキはそう思いつつリズを抱きしめたまま、マオの顔を彼女に気付かれないように見ながら、彼女が誰に似ているのか答えを導き出していた。


(マオちゃんの顔に見覚えがあると思ったら、小学四年生十歳の頃の紫音ちゃんに似ているんだ。柳生十兵衛ごっこしていた頃の事を思い出すまで、髪の色と瞳の色、あと髪型が違っていたから、気づけなかったけど…。)


 アキはそう考えながら、更にその灰色の脳細胞で考えを巡らせる。


(瓜二つというわけではないけど、妹の音羽ちゃんよりもあの頃の紫音ちゃんに似ている…。これは、一体どういうことなの? 他人の空似? とにかく、マオちゃんの正体が解るまでこの事は黙っておこう。こういう場合物語だと下手に正体を詮索すると、口封じで抹殺されるパターンもあるし…)


 アキは触らぬ神に祟りなしということで、この事は暫く黙っておくことにした。

 リズがアキに抱きつかれたことで、頭に乗れずに地面近くで浮遊していたミーはマオをよく見て「ホー?」と、不思議そうな鳴き声を出しそして何かを思い出す。


 そして、その事をリズに言うおうとした時、「ナー」と同じくミリアが紫音に抱きつかれたことで、肩に乗れずに近くにいたケットさんに余計なことを言うなという感じで、鳴き声で威嚇されてしまい黙ってしまう。


 ミリアは紫音に抱きつかれ、リズはフィギュアに夢中であった為に心ここにあらずで、二人はその事に気づかない。


 アキに抱きつかれているリズは、手に持ったドラゴンのフィギュアを、目を輝かせて見ながらこう思っていた。


(カッコいいッス! 今度クロエちゃんにも見せてあげようッス)


 リズはクロエのことを思い出し、あることを思いつく。


「そうだ、マオちゃん。今度クロエちゃんを紹介するッス。マオちゃんと同じ趣味を持っているから、きっと仲のいい友達になれるッス」


 だが、マオからはこのような返事が返ってくる。


「せっかくだが、遠慮しておく。人間の友ができても、長い時を生きる我を置いて皆先に死んでしまうからな…。だから、我は人間の友はつくらぬようにしている」


 そう言ったマオの目は、少し悲しそうに遠くを見ていた。


「もう、マオちゃん。そんな設定を遵守して友達をつくらないのは駄目だよ! マオちゃんの年齢なら、友達を作って一緒に遊ばないと駄目だよ。そうすれば、そのお友達が私とアキちゃんみたいに、それからずっと仲良くできるお友達になるかもしれないんだから」


 そう言って、紫音はアキに背中から抱きつく。


「うわぁ!? どうしたの、紫音ちゃん!?」


 アキは今迄抱きついてきた事が無かった紫音が、突然抱きついてきた事に驚いてしまう。


 紫音は、先程までミリアに抱きついていて、テンションが変に上っていまい、更に先程アキと過去を暴露しあった時に、彼女との楽しかった過去と悲しい別れ、そしてこの世界で再開した事を思い出して、もう離れたくないという思いから親友のアキを抱きしめたくなった。


「アキちゃん…。もう、いなくならないでね…」

「大丈夫だよ。この世界ではそうそう死なないから……」


 抱きつきながら、紫音とアキは友情を確かめあう。


「友情ッスね…」


 リズが二人の友情を見ていると、紫音に開放されたミリアが抱きついてくる。


「ふぇ!? どうしたッスか、ミリアちゃん?」


 紫音とアキのやり取りを見ていたミリアは、自分も親友のリズに抱きつきたくなったのであった。

 そして、その事を察したリズは、彼女の言って欲しい事言いたい事を言葉にする。


「大丈夫ッス。私達もずっと友達ッス!」

「うん…」


 ミリアは嬉しそうにそう返事をした。

 その二組のイチャコラ(?)を見た、例の淑女がこう叫ぶ。


「キマシタワー!!! 大蛇のぬいぐるみに噛まれて死にかけた時は、己の未熟さと不運を呪ったが、まさか回復し終わった後に、このような美少女イチャコラ×2が見られるとは!! 女神様、ご褒美ありがとうございます!!」


 そして、レイチェルがその出来事を感謝して女神に祈りを捧げる。


「レイチェル先輩は、女神様を何だと思っているのですか!?(怒)」


 彼女の回復を手伝っていた女神に使えし聖騎士エスリンが、レイチェルの間違った信仰心に対して怒りながらそう突っ込んだ。


「そういうわけでマオちゃん。お友達はつくったほうがいいー」


 紫音がアキとイチャコラ(?)した後にそう言ながら、マオを見ると彼女の姿はそこにはなく、周囲を見渡してもどこにもいなかった。

 イチャコラ(?)に夢中だった四人は、彼女が姿を消したことに気づけなかった。


「マオちゃん、いなくなったッスね…」

「また、会えるかな…」


 リズとミリアが寂しそうにそう言うと、紫音は少しドヤ顔でそう年下達にこう言う。


「大丈夫、きっとまた会えるよ。私がピンチになったらね!」

(それ… ドヤ顔で言うことじゃないよね……)


 そして、その紫音に対して他の三人は思うのであった。

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