223話 侵攻作戦終了の夜
紫音達が友情を確かめて、マオが居なくなったその頃―
「あわわ…、お姉さまが団長とあんなに仲良さそうに、お話しているわ……。これは、マズイわ……」
ソフィーは、傷が回復したクリスとスギハラが話をしている姿を、複雑な心境で距離を置いて見ていた。
「仲良しなのは…モグモグ、いいことだよー モグモグ…」
一緒に見ていたアフラが、バナナを食べながら能天気な感じでそう言う。
「いいことだけど、駄目なのよー!!」
「ややこしいなー、ソフィーちゃんは…。バナナ一緒に食べる?」
アフラはそう言って、やきもきしているソフィーに呑気にバナナを勧める。
「この状況で、呑気にバナナを勧めてくるんじゃないわよー! この能天気バナナ娘~!」
だが、ソフィーはそう言いながら、八つ当たり気味にアフラの両肩を掴んで体を激しく前後に揺さぶった。
「うわ~、やめてソフィーちゃん! 食べたバナナがシェイクになって出てきちゃう~」
「誰がうまいこと言えって言ったのよ! いや、うまくないけど!」
とはいえソフィーは、バナナシェイクにされても困るので、アフラを解放するとヤキモキしながら遠くから二人の様子を見ている。
二人が仲良く話しているのを意図的に邪魔するほど、ソフィーも空気の読めない痛い子ではないので、二人の仲が進展しない事を祈りながら、大人しく見ているしかなかった。
オーク本拠点侵攻作戦が終了し無事生存した者達は、物資を載せた馬車を待機させている拠点キャンプに戻り、前回の侵攻作戦と同じ様に野営して一晩を過ごす為に、テントの設営と夕食の準備に取り掛かる。
その夜、ユーウェインとスギハラが前回と同じ様に、キャンプファイアーを囲んで話し合っていた。
「ついに二つ目の本拠点を攻略できたな」
「残り半分か。次もうまくいくと良いが…」
スギハラの感想に、ユーウェインも自分の感想を述べると、続いてスギハラは小耳に挟んだ話をする。
「大手ギルドは暫く残って、本拠点の残骸を片付けて埋まっている宝を探すらしい」
それに対して、ユーウェインはこのように願望を交えて答えた。
「そうか。宝が見つかれば、次の本拠点侵攻作戦も参加が見込めるのだがな…」
そして話は今回の戦いの内容になる。
「それにしても、やはり三義姉妹が戦いに加わると、一気に戦況が厳しくなるな。今回は途中で退却してくれたから、何とかなったがもう少し粘られていたら、どうなっていたことか…。これで、リーベが加わればどうなることやら……」
スギハラは自分の意見を述べるが、その内容に辟易といった顔をしている。
「そうだな…。シオン君も女神武器を壊されてしまい、代わりの武器が手に入るまで戦力低下は否めないだろうな。次の本拠点侵攻作戦までには、新たなる女神武器が女神から授けられればいいが……」
ユーウェインは自分の意見を話しながら、“本拠点2つを攻略したが、状況はむしろ悪くなっているのではないか…?”と、考え始めていた。
「私… サタナエルにとどめを刺すことができませんでした…。すみませんでした!」
ユーウェインがそのように考えていると、紫音が二人の元にやってきてサタナエルを見逃したことを二人に謝罪する。
「気にすることはない。誰だって相手が人間かも知れないと思えば、殺すのは難しい。かく言う私も、ケルベロスに本気で斬撃を打ち込む事が出来なかった…」
自分もケルベロスと戦えなかった事を告白して、ユーウェインは紫音に罪の意識を持たせないようにする。
「俺もヘラ相手に戦えなかった。しかたないさ、俺達は魔物としか戦ってこなかったんだから、急に人を殺せとなっても無理なことさ」
スギハラも、自分がヘラと戦えなかった事を語り、ユーウェインの意見に賛同する。
二人の話を聞いた紫音は、サタナエルを逃した罪の意識が少し和らいだ。
そして、その三人が話している姿を遠くから見ていたアキとエレナは、勝手にアフレコを始める。
エレナ演じる紫音(男体化)(受け)
「ユーウェインさん。僕はサタナエルに止めを刺すことが出来ませんでした。申し訳ございません」
アキ演じるユーウェイン(攻め)
「しょうがない奴だ…。だが、オマエのそういうところ…、オレは嫌いじゃないぜ…」
エレナ演じる紫音(男体化)(受け)
「ユーウェインさん……」
アキ演じるユーウェイン(攻め)
「だが、罪は罪だ。これから俺のテントに来い。罰を与える…」
エレナ演じる紫音(男体化)
「はい…」
アキ演じるスギハラ(攻め受け)
「おいおい、コイツは俺が先に目をつけていたんだ。いくら、オマエでも譲れないな」
アキ演じるナレーター
「こうして、三人はテントに入り熱い夜を過ごすのであった」
物語の流れを18禁に持っていきたいために、最後は物語の展開が激しく雑になるアキであった。
「激しい夜って… 何?」
「さあ…、一晩中トランプでもするんじゃないッスか?」
アキとエレナの会話を聞いていたミリアが、リズにそのような質問すると彼女はジト目でそう答えた。
その頃、リーベ達の隠れ家に帰ってきたエマ達は、三日三晩徹夜でBL漫画を描いていた魔王とリーベが原稿を描き上げて、机の上で燃え尽きているのを発見していた。
「ふえ~。真悠子お姉さんと魔王様が死んじゃったの~」
「いや、死んでないから…。アンネ、クロエと一緒にベッドに真悠子さんを運ぶのを手伝って」
三人は手分けして、魔王とリーベをベッドまで運んでいく。
こうして、オーク本拠点侵攻作戦は終了し、その波乱ずくめの一日が幕を閉じた。
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