221話 オーク本拠点攻略終了
前回のあらすじ
オークの王カリュドーンを倒した紫音であったが、心を一緒に連れて行かれて、放心状態になってしまった。
「きらきらひかる~、おそらのほしよ~」
四肢を失った伍ータムの胴体からアキが出てくると、紫音の異変に気づき一人こう呟く。
「紫音ちゃん…。いくら希望を見出しても、結局はこんな悲しみだけが繰り返されていく…」
そして、紫音とこのような会話をしたことを思い出した。
㋐「一昔前の男性の同性愛を楽しむ女性達は、ホモ乙という言葉に耐えながらヤオイを楽しんだわ。彼女達はカプにこそ希望の世界があると信じたからで、自分達を日陰に追い込んだ者達を憎むより、そのほうがより建設的だと考えたからよ。そして、世間からの偏見を振り切った腐女子達は、ボーイズラブという社会にも影響を与える文化をつくりだした。そういう意味では確かにカプには希望があったのだ」
㋛「よく分かる話だね…。私もその希望を見つけるよ」
(※全てアキの妄想で、新訳EDが好きな作者の意向で紫音は精神崩壊EDになっていません)
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ユーウェインは大爆発によって、廃墟と化したオーク本拠点を調査して状況を確認することにした。
「派手に壊れているな。内部から吹き飛んだという感じだな…」
彼はオーク本拠点の建物の壊れ方と、その残骸が周囲に飛び散っている様子を見て、感想を述べた後に魔法の知識に明るいエドガーに尋ねる。
「エドガー、やはり何かの魔法か?」
「どうでしょうか…。風属性のトルネイドで吹き飛ばしたのなら、この様に焦げ跡は残らないはずですが…。我々の知らない魔法なのかも知れませんね」
爆発魔法を知らないエドガーは、そう答えることしか出来なかった。
同行していたカシードが、このようなことを言い出す。
「この建物の壊れ方…、自分見た事ありますわ」
カシードは負傷して回復魔法を受けているクリスと、それを自分の責任と思って心配そうに様子を見ているスギハラの代わりに、ノエミと共に調査に同行していた。
「どこでだ、カシ―ド君?!」
ユーウェインが彼に尋ねると、カシードは記憶を遡って答える。
「自分の田舎です。小麦粉を貯蔵する貯蔵庫が、爆音と共にこんな風に吹き飛んだ事がありましてね。これほど大きな建物ではないんですけどね。あっ、因みにうちの田舎は小麦と小麦粉の一大生産地でして…」
「ここにオーク達が、大量の小麦粉を貯蔵していたのでしょうか? 魔物に食欲は無いはずですが……」
カシ―ドの話を聞いたリディアが、そう言って考え込む。
「この本拠点にも、魔物を作り出すかもしれない例の装置があるのか調査したかったのだが、この瓦礫を片付けるのは骨が折れるし危険も伴う…。今回は諦めるしかないな…」
(アキ君のゴーレムを使えば、楽に瓦礫を片付けられるかもしれないが、彼女にあまり頼り過ぎる訳にもいかない……)
ユーウェインはそう考え、撤収を決断する。
紫音達が休憩をしていると、アキがマオに質問をおこなう。
「ところで、マオちゃんって何者なのかな?」
「アキよ。それは、我が敵かどうかを聞いているのか?」
アキは明らかに自分より年下の幼女が、年上の自分を呼び捨てした事に引っかかったが話を続ける。
「紫音ちゃんを何回も助けてくれたから、敵ではないとは思っているわ。だけどサタナエルとの戦いを見ていたけど、あの戦闘力はただの幼女じゃないよね?」
「アキちゃん…。マオちゃんが何者かなんてどうだっていいじゃない。マオちゃんは、私を何回も助けてくれたいい子だよ。そんな子を質問攻めするのはどうかと思うよ?」
紫音はアキに対して、マオに質問攻めするのを辞めるように促す。
そして、マオを後ろから脇の下あたりを持って抱えあげ、アキとマオの目線が会うように持ち上げる。
「それにこのマオちゃんの目が、信頼できない目に見える?」
アキはマオのルビーのように紅い瞳を見ると、何故か逆に少し不安を覚え、目を合わせるのをやめて顔全体を見ることにした。
すると、彼女はマオの顔が誰かに似ているような気がしてくる。
(誰だろう…? 誰かに似ている……)
アキは誰だったか自分の記憶の中の人物とマオの顔との照合を始めた。
彼女が考え込む横で、マオに子供のように持ち上げるなと怒られた紫音が、しょぼんとなって彼女を下ろしていた。
そして、今度はリズがマオに質問する。
「マオちゃんは、年齢は今いくつッスか?」
「何だ、リズよ。我の年齢が気になるのか?」
年齢を聞かれたマオは、逆にこのように聞き返した後に、少し考え込みこう答えた。
「120歳までは数えていたが、そこからは数えておらんから正確な年齢はわからぬな…。多分190歳ぐらいかの~。あっ、このことは誰にも言うでないぞ? 色々とややこしくなるからな」
(あっ、この子はアレだ…。クロエちゃんと同じタイプだ…)
マオの答えを聞いた一同はこう思った。彼女のことをクロエと同じ中二病だと……
「そっ、そうッスか~。約190歳ッスか。長生きなんッスね」
「貴様! その言い方、信じておらぬな! 自分から聞いておきながら、何なのだ!」
「大丈夫だよ、マオちゃん。信じているから。闇の炎に抱かれるんだよね? 右腕が疼くんだよね? 夜目が効くんだよね?」
紫音は、怒るマオに中ニ病を理解しているとフォローする。
「闇の炎? 右腕が疼く? 何の話だ? 確かに夜目は効くが……」
だが、マオはそのフォローに出てきた言葉を、夜目以外はあまりピンときていないようであった。
「マオちゃんって邪気眼系の中二病なの?」
記憶を辿っていたアキは、耳に入ってきた中二ワードを聞いて、思い出すのを中断して話に入ってくる。
「アキちゃん、中二病って何?」
隠された力が自分にはあるという設定で、キャラを作って演じているもしくは信じている者へのスラングだねとアキは説明する。
「へぇー、そういうのがあるんだ。アキちゃんが、小学生6年の時に一時期怪我もしていないのに、眼帯や包帯巻いたりしていたことだね」
すると、その説明を聞いた紫音は、昔のアキの事を思い出して話し始めた。
「なっ!? しっ、紫音ちゃんだって小4ぐらいに片目に眼帯をつけて、「拙者は柳生十兵衛でござる」とか言って道場で木刀を振り回していたじゃない! 色々な剣豪のマネをしていたじゃない!」
アキは恥ずかしい過去を暴露されてやり返す。
「やめてよ、アキちゃん! そんな昔の話!」
紫音の方は年相応と思えなくもないが、彼女的には過去の恥ずかしい事を暴露されて恥ずかしかった。
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