101話 山ガール様の贈り物
山ガールの格好をしたミトゥースは、改めてソフィーに問いかける。
「さあ、アナタが無くしたのは、どのブレードかしら?」
「ソフィーちゃん、今度こそちゃんと答えてね!」
紫音はソフィーに、今度こそミトゥースの望む答えを返答するように念を押す。
「私が無くしたのは、鋼のブレードです」
その答えを聞いた、ミトゥースは笑顔でソフィーをこう評価する。
「アナタはツンデレで、気が強いけど正直者ですね」
<誰がツンデレよ!>
ソフィーは喉まで出かけたが、紫音とアフラが余計なことを言わないように睨んでいるので、その言葉を何とか飲み込んだ。
「そんなアナタには……、私特製のこの双剣をあげましょう!」
ミトゥースがそう言うと、今まで見せていた3つのブレードが輝き出す。
そして輝きが収まった時、一対の双剣に姿を変える。
「ミトゥースのデュアルブレード、略してミトゥデルードよ」
(ミトゥース様ってネーミングセンスないなぁ、しかも凄い略し方だし……)
紫音はそう思いながら、話を黙って聞いていた。
その思いはソフィーも一緒で、突っ込みたいのはやまやまだが、また山ガール女神様が機嫌を悪くして居なくなっても面倒なので、ツッコミ属性である彼女はその欲求を何とか押さえて我慢していた。
「さあ、ソフィー。受け取りなさい」
ソフィーはミトゥデルードを受け取ると、その軽さに驚く。
「軽いわね……、まるで女神武器みたい」
ミトゥデルードは、女神武器と同じ金属の色をしており、片方のブレードにだけ宝玉がはめ込まれていた。
「同じ二振りの剣でも、シオン・アマカワのとは違って宝玉は片方だけなのね」
「紫音というか天音の女神武器は特別なの」
「それと、アフラ。アナタのミトゥトレットの調整をやり直するわ。右手のミトゥトレットを私の方に」
「はい」
アフラはミトゥースに言われた通りに、右手に装着したミトゥトレットを彼女の前に出す。
ミトゥースは自分の前に出されたミトゥトレットに手をかざすと、その手が輝き始めそれに応じてミトゥトレットも輝き出す。
ミトゥースは調整をしながら、アフラに説明を始める。
「前回のアナタの戦いを見ていたけど、流石に反動が大きすぎたわね。自分で設定しておいて何だけど、使用後のアナタの右腕を見て軽く引いちゃったわ……。そこで、ちょっとリスク設定を軽くするわね。威力を少し引き下げる代わりに、三回使えるようにするわ。ただし、一回使うたびに腕に痛みが走るようになって、それが蓄積されていって三回使ったら右腕が暫く使えなくなるようにするから、気をつけて使いなさい」
(リスクを無くすのはしてくれないんだ……)
紫音がそう思っていると、ミトゥースが彼女を見てこう言ってくる。
「紫音、アナタ今、リスクは無くさないんだって顔をしたわね?」
紫音は自分の思考を看破されて、「す、すみません……」と思わず驚いて謝ってしまった。
「別に謝られることでもないけど、強大な力にはリスクを付けておくべきなのよ。でないと、人というものはその力を考えなしに使ってしまうの。それは、この世界のバランスを崩すことになってしまうわ」
「でも、私達は魔物を倒すためにその力を使っています。それでも、ダメなんですか?」
”紫音、ここからはアナタにだけ直接頭の中に話します。いいですか? 私達神からすれば人間も魔物も動物もこの世界の同じ生き物なのです。私達は心正しい者たちの為に、人間が魔物に一方的に負けないように、少しだけ贔屓しているのです。なので、リスクのない強大な力を、与えるわけにはいかないのです”
ミトゥースはそう言ったが、客観的に見れば女神達はかなり人間側に加担している。
「あのー、山ガ―ミ様。私のこのミトゥデルードも特殊能力を発動させれば、当然リスクはあるんですよね?」
「山の女神です。紫音、アナタが山ガール様なんて呼んだから、名前が混じってしまっているではないですか!」
「すみません……」
(何か、今日は謝ってばっかりだなぁ……)
紫音はそう思いながら、ミトゥースに謝った。
「もちろんです、ソフィー。ミトゥデルードの特殊能力とリスクは……」
ミトゥースがそこまで言うと、彼女の腕時計がピッピッピッとアラームを鳴らし、時間を知らせる。
「あら、もうこんな時間……。明日仕事で早いのよね、今夜はここまでということで」
腕時計で時間を確認したOL山ガ―ミ様は、そう言うと光のゲートを創り出しその中に消えていった。
「…………」
残された三人は暫くの沈黙の後
「取り敢えず、私達も寝ようか?」
「そうね、私達も明日早いしもう寝ましょう」
「私もすごく眠いよ、おやすみー」
三人は装備を外すと、何事も無かったかのようにテントの中に入っていき就寝した。
次の日―
辺りが明るくなりテント内も明るくなった為、目の覚めたソフィーは自分の足元に置いてあるミトゥデルードを見て、昨日の夜中の出来事が夢でなかったことを確認する。
「夢じゃなかったんだ……」
ソフィーがひとりそう呟くと、紫音が目を覚まして体を起こし挨拶してくる。
「おはよー、ソフィーちゃん」
「おはよう、シオン・アマカワ」
お互い朝の挨拶を交わすと
「髪がぐちゃぐちゃだよ―」
紫音が寝ていて乱れた髪や、寝癖を治しながらそう言った。
「私も髪がグチャグチャだわ……」
ソフィーもそう言いながら、鞄からヘアーブラシを取り出して髪を梳かし始める。
お嬢様らしく身だしなみを整えたソフィーは満を持してツッコミを始めた。
「昨日の夜中のアレは何だったのよ! 私のブレードを盗んだと思えばそれで小芝居して、ソレを突っ込んだらへそ曲げてどこかに消えて、それで何故か私が謝罪させられて!」
ソフィーのツッコミと愚痴の混ざったツッコミはまだ続く。
「まあ、新しい武器に交換してくれたからそれには感謝しているけど……、でも、時間だからといって説明せずに急に帰っちゃったから、肝心の特殊能力の内容とリスクが解らないじゃない!」
「ソフィーちゃんは、朝から元気だね―。大丈夫だよ、そのうち説明しに来てくれるよ」
「来なかったら、どうするのよ?」
「その時は、実際使ってみるしかないと思うよ……。何がリスクかは決め打ちで考えて、覚悟するしか……」
「他人事だと思って、いいかげんな事を言わないでよ!」
ソフィーはそう言いながら紫音の両肩を掴んで、激しく前後に揺さぶる。
「頭がフラフラするよ~」
紫音がソフィーに頭を揺らされフラフラさせていると、アフラが騒がしいこの状況に目を覚ます。
「うるさいな~。もう、朝ご飯なの~?」
アフラがまだ眠そうな顔でソフィーに尋ねる。
「アンタは、それしか言えないの!? 能天気キャラもいい加減にしなさいよ!」
ソフィーはそう言いながらアフラの両肩を掴んで、半分八つ当たりで激しく前後に揺さぶった。
「ふぇ~、頭がフラフラするよ~」
アフラは何故自分がこんな目に合わされたのか解らずに、頭を揺らされフラフラさせている。
「流石にそれは駄目だよ。只の八つ当たりだよ、少し冷静になってソフィーちゃん」
「そうね……。悪かったわね、アフラ……」
紫音の言葉にソフィーは少し冷静になってアフラに謝った。
「お腹が減っているから、おこりんぼ―になっているんだよ。とりあえず、朝ご飯を食べようよ」
「そうね……、そのとおりかも知れないわね……」
「じゃあ、朝ご飯にしようか。まあ、朝ご飯と言っても非常食だけど……」
アフラの意見に残りの二人も賛成して、朝食を食べるために三人はテントから出ると朝ご飯の非常食を食べた。
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