47話 前進開始!
投石機破壊のため、要塞側前衛部隊は前進を開始するため、城壁から遠距離援護のための弓使いと魔法使いが降りて来るのを待つ。
「ここからは、我々に要塞の優位はない。皆の奮戦を期待する!」
ユーウェインが前進の前に鼓舞する。
「別にいつものことさ。そしていつものように、俺達の勝利で終わらせるそれだけだ!」
スギハラなりに鼓舞する。
「さっきの前哨戦で数はこっちのほうが有利だ。それに奴らは要塞に飛ばしているからさらに俺達が有利だ!」
タイロンも続けて部下を鼓舞して、士気を高揚させた。
要塞から離れるということは、その優位性を捨てることであり、それだけ危険が増すからだ。
「それでは、前進する勇気ある者達に女神の加護を一時的に与えます。ゴッデスプロテクション!」
エスリンが神聖魔法ゴッデスプロテクションを唱えると、女神フェミニースの聖印が上空に現れ、前進部隊に強力な身体強化効果を与えた。士気高揚だけでは、危険度は下がらないからだ。
エスリンが高級魔法回復薬でMPを回復させていると
「前衛部隊前進!」
ユーウェインの号令とともに、要塞側前衛部隊が鬨の声を上げながら、堀の仕切りを駆け抜けていく。
デュロックはその前身を見ると、副官カゴシマに迎撃の指示を出す。
「デテキタカニンゲンドモメ、オトナシクヨウサイニ、ヒキコモッテイレバイイモノヲ。カゴシマ、ブタイヲヒキイテ、カエリウチニシテコイ!」
「ショウチ!」
副官カゴシマは、デュロックと投石機の護衛部隊を除いた部隊を率いて、迎撃のため突撃を開始した。
オークの投石機と要塞の堀との丁度中間ぐらいで両部隊が激突する。
ユーウェインは左手のラウンドシールドで、オークの攻撃を受け流すと体勢を崩した所にオークとの接敵までに剣に掛けておいた、最高位魔法スパークを斬撃とともに叩き込む。
「魔法剣スパーク!」
斬撃の後に強力な電撃が、オークを襲い魔石に姿を変える。
「タイラントブレイク!」
タイロンがオーラを宿した大剣を、左薙でまず一撃を決め、そのまま素早く袈裟斬りし、最後は唐竹から渾身の力で叩きつけた。これを受けたオークはあっという間に魔石に変化した。
「奥義! 雪月花!」
上段三連撃の雪嵐から、強力な左斬上の月下、そして円を描くような横薙ぎの花冠、これをオーラで強化された刀で息つく暇もない速さで、連続で繰り出すのが雪月花である。
スギハラからこの技を受けたオークは、なす術なく魔石になってしまう。
そのスギハラに、野太刀を手に持ち黒い武者鎧に似せた鎧を着た、オーク軍団副官カゴシマが勝負を挑んできた。
「ワレハカゴシマ、イザジンジョウニショウブ!」
「豚野郎が、侍気取りかよ! いいぜ、相手になってやる!」
スギハラがそう答え刀を構えると、カゴシマは八相に似た蜻蛉の姿勢を取る。
リディアがエスリンに護られながら、弓の最大射程で投石機を捉えると【女神武器】ガーンサルンヴァに矢を番えずに弦を引くと、ガーンサルンヴァにオーラを注ぎ込む。
するとガーンサルンヴァと弦を引く左手の間に、オーラの矢が形成されていく。
リディアが自身のオーラの半分を弓に注ぎ込むと、輝くオーラの矢になる。
「女神の祝福を我に与え給え、ガーンサルンヴァ! フェイタルアロー!!」
投石機に狙いを定め、輝くオーラの矢を放つと矢は光り輝く光線となって、一直線に投石機に向かって飛んでいき、オーク達の触れた部分を消し飛ばしながら投石機に弾着し破壊した。
【女神武器】は頑丈な金属で出来ているだけではなく、特殊な能力も与えられている。
リズのグシスナルタは、弱い力でもロングボウ並みに距離と破壊力を持ち、ガーンサルンヴァは大量のオーラを注ぎ込むことで、オーラのビーム砲ともいうべき攻撃がおこなえる武器だ。
シオンの全力オーラ攻撃ほどではないが、ガーンサルンヴァの攻撃はデュロック自身の出陣を決心させる。
デュロックはリディア目掛けて突進を始め、進路にいる人間達を薙ぎ払いながら近寄って来た。
「私が相手だ、デュロック!!」
ユーウェインがデュロックの前に立ちふさがる!
「ニンゲンフゼイガ、コザカシイ!」
ユーウェインがデュロックの攻撃を回避しながら、魔法剣を剣に掛けた。
「魔法剣ウインドストーム!」
隙きを突いてデュロックに斬りつけるが、オーク四天王である彼には上級魔法ぐらいでは大してダメージは与えられない。
「でやああああ!」
背後からタイロンがブルトボルグで、デュロックに斬りかかるが盾で防がれる。
「アマイハ、ニンゲン!」
ユーウェインとタイロンがデュロックを、スギハラがカゴシマを惹きつけている間に
リディアとエスリンが、紫音とクリスがそれぞれ投石機の破壊を目指す。
要塞内部では、防衛にあたっていた者たちが苦戦していた。
「グハハハ、ニンゲンドモガ、アイテニナランワ!」
オーク軍中隊長バークシャが暴れ手に負えない状態にあり、中隊長クラスともなると体格も今迄のオークより、一回りも大きく頑強でダメージも通りにくい。
そのバークシャがついにミリア達に近づく。
ソフィーとアフラがオーラで武器を強化し直すと、2人で連携攻撃を行う。
パトリックの誘引灯に、バークシャが反応して目線が向いたその瞬間にソフィーがファントムステップで近づくと、バークシャがすぐさま反応して攻撃するが、残像に当たって空振る。
攻撃を空振り隙きの出来たバークシャに、アフラが死角から全体重を掛けて、オーラを溜めたパンチを打ち込む。
「はいおーらぱーーんち!!」
彼女の攻撃を受けたバークシャは少しだけ体勢を崩したが、すぐさま大技を打って逆に隙だらけになっているアフラに左手に持った盾によるシールドバッシュで反撃する。
アフラは盾が当たる瞬間に咄嗟に十字ブロックし、反射的に自ら後ろにジャンプして衝撃を逃した。
「はにゃあ~~」
とはいえ、アフラは吹っ飛ばされてダメージを受けてしまう。
エレナがすぐさま駆け寄り、回復魔法を彼女に唱えて傷を治す。
城壁の上からノエミがオーラアローを、バークシャの頭目掛けて放ったが切り払われる。
その瞬間逆方向からリズの放った矢が頭に命中し、それと同時に氷系高級魔法スクロールが発動して頭の半分を凍らせた。
頭の左半分が凍ってしまった、バークシャは左の視界が死角になり、その死角からソフィーがすぐさま攻撃を仕掛ける。
「スピンブレード!」
ソフィーは空中で体を大きく横に捻ると、回転力を利用して力いっぱいに二本のブレードで斬りつけた。
さすがのバークシャもこれにはダメージを受ける。
ミリアが追撃で魔法を詠唱していた所に、後ろから別のオークが彼女に近寄ってきた。
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