46話  イケメン要塞攻防戦!?






 オーク達の大軍に囲まれた要塞で、激闘が繰り広げられていた。


「どんどんオーク達が湧いて出てくる!」


 ルイがオークを斃しながらそう呟くと、隣で戦っていたレオンがそれを聞いて励ます。


「がんばれ、ルイ! 必ず援軍が来る! それまで諦めるな!」

「ですが、そろそろ危なくなってきましたね」


 いつも冷静なスオウにもこのオークの数に焦りが見えている。


「ライトニングブレード!」


 カインの雷を纏った剣がオークを切り裂く。


「アブソリュートゼロ!」


 アルフォンスの絶対零度の魔法が、オーク達を凍らせる。

 だが、ルイ達は数の前に次第に追い詰められていく。


「くそっ、ここまでか!」


 ルイ達が覚悟を決めたその時―!


「待たせたな、お前達!」


 要塞の外から声が響く。

 声の主は、大軍を率いて要塞の援軍に駆けつけたルードヴィッヒ王子であった。


「よく持ちこたえた、後は我が軍団に任せよ!」

「後は俺様に任せな!」


 切り込み隊長ユリウスが部隊を率いて、オークに突撃し蹴散らしていく。


「よし、アッキー。俺達ももうひと踏ん張りだ!」


 ルイがそう言って、力を振り絞り戦闘を再開させる。


「ルードヴィッヒ様、キターーー! これで勝つる!」


 アキが、画面に向かってそう叫んでゲームのイベントを見ている。

 中学生の紫音は、親友であり幼馴染のアキの部屋に遊びに来ていた。


(あれ? 私は確か高校生の私が雪の日に幼い子を助けて、トラックに跳ねられて死んじゃって、貧乳の女神様に異世界に飛ばされて…豚に似た魔物と戦っていたような…)


 紫音がそう考えながら、画面内を見るとイケメンと豚みたいな魔物が戦っていた。


(そうか…この画面を見ながら居眠りしたからかな)


 アキの説明によると


 これはオークっていう魔物で、今そのオークが要塞に大軍で攻めてくるっていうイベントをやっているらしい。

 まあ、これはストーリーイベントだから勝つようになっているらしいが、今実装されている要塞防衛イベントは、プレイヤー達の戦闘内容次第では要塞が奪われてしまうらしい。


 アキが嬉々として説明を続ける。


「この防衛イベントは、魔物側の戦力が揃うと攻めてきて300対300のリアル長時間戦闘が始まるの。これが、300人でやるものだから重くてラグが酷くて、気づけば範囲攻撃をいつの間にか受けていてPCが死んでいるということが、それはもう多発して― 」


 アキの説明(愚痴?)はもう少し続いていたが、ゲームに詳しくない紫音にはあまり理解が出来なかった。


 アキちゃんのやっているゲームは、有名なオンラインゲームらしく画面内にはイケメンが所狭しと出ていた。


「レオン×ルイ、尊いわー」


 紫音はアキに画面内で、起きていることに対して質問をする。


「ねえアキちゃん、どうして彼らは上半身が顕になっているの?」

「それはね、今まで激闘を繰りひろげていて、鎧がぼろぼろになっているからだよ」


「ねえアキちゃん、どうして彼らは男の人同士なのにこんなに距離が近いの」

「それはね、お互いの友情を確認しているからだよ、それが尊いからだよ」


「ねえアキちゃん、どうしてイケメンの男の人ばかりなの? 女性キャラはどうしたの?」

「それはね、男の熱い友情話に女性NPCは必要ないからだよ」


「ねえアキちゃん、どうしてこのレオンってキャラは飢えた狼のような眼なの?」

「それはね、ルイを食べる(性的)ためさー!」


 そう答えたアキちゃんの眼も、飢えた狼のような眼をしていた。


(赤ずきんちゃんかよ! 後食べるって何だよ!)


 自分で質問しておいて、このやり取りに、自分の心の中で突っ込んでしまった。

 そして、紫音が納得いったようなそうでないような気持ちでいたら、アキが改まってこういう事を言い出してきた。


「ところで紫音氏……」

「紫音氏?」


「ワタクシ今回、このゲームを題材にした漫画本を作りまして……。是非、紫音氏に見てもらい感想を聞きたいのですが……」


 表紙を見ると中学生にしては、とても絵が上手でゲームのキャラそっくりだった、勿論表紙は半裸の男性キャラだ。

 表紙を見た瞬間、紫音の危機察知能力がこれ以上は危険だと警鐘を鳴らす!


 紫音が表紙から先に中々進まない事に対して、アキがこう言ってきた。


「さすが、紫音ちゃん。この先に待つ泥沼に直感で気付いたようだね。まあ、紫音ちゃんが踏み込むには、まだ早いステージだったかも知れないね……」


 アキが紫音から本を受け取ると、遠い目をしてそう言った。


「ちなみに、どんな内容だったの?」


 紫音は興味本位で聞いてしまう。


「イケメンの男の子達が、半裸でくんずほぐれつランデブーだよ!!」




「くんずほぐれつランデブー!?」


 紫音はクリスの腕の中で、そう声を出しながら起き上がる。


「くんず? ほぐれつ? ランデブー?」


 クリスはランデブー以外初めて聞く言葉に戸惑いながらも、紫音が意識を取り戻したことに安堵した。


「シオン、気がついてすぐで悪いけど、これを早く飲んでオーラを回復して!」


 クリスは紫音に高級オーラ回復薬を与える。

 紫音は状況が飲み込めないまま、クリスに促されるままに薬を飲む。


「私は一体!?」


「アナタは全力のオーラウェイブ?を放って、オーラを使いすぎて少しの間気を失っていたの。オーク達の次の攻撃がすぐ来るから、できるなら早く戦力として復帰してほしいの。」


「わかりました!」


 高級オーラ回復薬を一本飲み干すと、紫音は体に力が漲ってくるのが分かったので、立ち上がったがまだ全快ではない感じがしたので、「もう一本、飲みますね!」と言ってもう一本飲みだす。


 紫音がもう一本飲み始めた時に、オークの投石攻撃が始まった。


「投石攻撃が来たぞ、注意しろ!」

「魔法使いはマジックシールドで要塞を防御しろ!」


 次々と慌ただしく指示が飛ぶ。

 オーク達の投石機から放たれた投石は、放物線を描き要塞に飛んでいく。

 魔法使い達のマジックシールドに当たった投石は粉々に砕け散り、要塞へのダメージを防ぐ。


 飛んでくるのは石だけではなかった、石に紛れてオークが飛んできたのだ。

 オークの屈強な体だからこそ、投石機で飛ばされることが可能であった。


「さあ、ここからが私達の出番よ!」


 要塞内にいたソフィーがブレードを抜いて二刀流に構え、アフラとパトリックも戦闘態勢に入る。


 エレナとミリアもその様子を見て、慌てて戦闘態勢に入った。

 マジックシールドを打ち破って、複数のオークが要塞内に着地し要塞内でも戦闘が開始される。


 ミリア達の近くに着地したオークが、襲いかかってくると同時にパトリックが携行用誘引灯に魔力を込める。

 携行用誘引灯に魔力を込めると、淡い青色の光を放ちオークを引き付けた。


 大型の盾を構えたパトリックが、オークの攻撃を盾で防ぐ間にソフィーがブレードをオーラブレードで強化しオークに突進する。


「ミラージュブレード!」


 二刀流で高速移動しながら連続で斬り抜け、無数の斬撃を与えた。

 ミリアが中級魔法ファイアーブラストを唱えてとどめを刺したが、ミリアの後ろから別のオークが襲いかかる。


 そのオークの頭に、城壁の上で要塞内部の状況を見ていたノエミの放った、オーラアローが命中する。


「おーら、ぱーーんち! うりゃあ!!」


 そして、矢が当たりオークが怯んだ所をアフラが、オーラを宿したパンチでオークに力いっぱい殴りつけ吹っ飛ばす。


「とうっ! りゅうせい、きーーっく!」


 彼女はさらに高くジャンプして、吹っ飛ばされて倒れているオークにジャンプ落下蹴りで追撃する。


 流星脚を受けたオークは、地面に体をめり込ませた。

 そこにエレナが覚えたての神聖魔法を唱える。


「レイ!」


 オークの上空にフェミニースの聖印が現れ、細い光の柱が照射されオークを消滅させた。


「やりました!」


 エレナは初めて戦闘で役に立てたと思い、思わず喜びの声をあげてしまう。

 ソフィーとアフラは、城壁の上にいるノエミに援護射撃の礼として手を上げる。

 ノエミも無表情のまま二人に手を上げて返してきた。



 城壁の上ではリディアとリズ、弓使い達が石に紛れて飛んでくるオークに攻撃を加えていた。だが、鳥を落とすようにはいかず、オークは矢を受けてもそのまま飛び続ける。


「しかし、今回はオークが飛んでくるペースが早いな。いつもは前衛との数の兼ね合いを見ながら飛ばしてくるのに……。やはり、さっきのシオンさんの強力なオーラ攻撃の影響かしらね……」


 リディアが、オークを弓で射ながらそう呟いた。


(さすがシオンさんッス。でも、あんな大技放って体は大丈夫ッスかね…)


 それを聞いたリズが同じく弓でオークにヘッドショットを決めながら、紫音の体への負担を気にする。


「オークめ、さっきのシオン君の大技を警戒して、投石機が壊される前に要塞内に飛ばしてしまおうって算段か!」


「どうする? いつものようにそろそろ投石機目指して斬り込むか?」


 ユーウェインが自分の読みを話すと、スギハラがそう意見する。

 その意見を聞いたタイロンが意見を出す。


「もう一度、彼女にあの大技を放ってもらうっていうのはどうです?」


「あの技を使って、シオンは少しでしたが気を失っています。つまり体に少なからず負担が、かかっているということです。私は反対です!」


 クリスが紫音の身を案じ反対の意見を述べる。


「確かに彼女にだけ負担を掛けるのはいけないと思います。筋肉先輩はもっと考えて意見してください!」


 エスリンがタイロンを非難した。


「オマエな、誰が筋肉先輩― 」

「そこまでだ! 今は言い争っている場合ではない!」


 ユーウェインが二人の仲裁に入る。


「とりあえず、リディアとエドガーに要塞内にも気を配るように指示を出せ。あとはいつものように前進する!」


 要塞戦は次の段階に移った。



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