夢(2)

 ドラマの名前を思い出せずにいた。同じ部屋にいたふたりの女子に助けを求めた。自分はそのふたりの顔に覚えがなかったものの、親しい知り合いということになっていた。自分はそのドラマについて覚えていることを挙げていった。病院が舞台である。主人公は男である。今年放送された。ふたりはいくつか作品名を挙げてくれたが、ピンとくるものはなかった。

 不意にタイトルを思い出した。『精神病棟へ、ようこそ。』だ。それから気づくと狭い部屋にいた。病室と思わしき小ぢんまりとした個室で、白いシーツと枕が備えられた清潔そうなベッドに、優しい檸檬色のカーテンが風にたなびいて、窓からの明るい光に部屋全体が輝いている。その反面、扉は頑丈そうで無骨な鉄の扉だった。

 自分はさらにひとつ思い出すことがあった。ドラマの主人公は若く顔立ちの整った医師だが、ふとしたときに異形の怪物へと変じるのだ。その姿は、数多の海藻が引っ掛かった錆びた鉄の鎖が、床から天井に張られているかのような姿だった。自分のその姿の回想は、同じく背景についての記憶も伴っていた。ちょうど、今自分がいるこの部屋のような場所で、主人公は怪物に転じていた。瞬間風が止んだ。カーテンが窓に下りた。部屋に陰影が生まれた。

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