夢(2)
ドラマの名前を思い出せずにいた。同じ部屋にいたふたりの女子に助けを求めた。自分はそのふたりの顔に覚えがなかったものの、親しい知り合いということになっていた。自分はそのドラマについて覚えていることを挙げていった。病院が舞台である。主人公は男である。今年放送された。ふたりはいくつか作品名を挙げてくれたが、ピンとくるものはなかった。
不意にタイトルを思い出した。『精神病棟へ、ようこそ。』だ。それから気づくと狭い部屋にいた。病室と思わしき小ぢんまりとした個室で、白いシーツと枕が備えられた清潔そうなベッドに、優しい檸檬色のカーテンが風にたなびいて、窓からの明るい光に部屋全体が輝いている。その反面、扉は頑丈そうで無骨な鉄の扉だった。
自分はさらにひとつ思い出すことがあった。ドラマの主人公は若く顔立ちの整った医師だが、ふとしたときに異形の怪物へと変じるのだ。その姿は、数多の海藻が引っ掛かった錆びた鉄の鎖が、床から天井に張られているかのような姿だった。自分のその姿の回想は、同じく背景についての記憶も伴っていた。ちょうど、今自分がいるこの部屋のような場所で、主人公は怪物に転じていた。瞬間風が止んだ。カーテンが窓に下りた。部屋に陰影が生まれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます