第8話 コンコルドのお爺さん
「昔はこれくらいの速さで飛ぶ飛行機をコンコルドと言ったらしいよ。でもね、座席の大きさは今の半分以下で、とっても窮屈だったそうだよ」
僕がそう教えてもらったのは何年か前だった。この音速を超える飛行機が実用化されて随分経っているけれど、僕がこの飛行機に乗ったのは二回目だ。七歳になってやっと乗ることができたのだ。
僕のお父さんとお母さんはいわゆる国際結婚だ。お父さんの国に僕は住んでいるけれど、毎年、お母さんの国にも行っていた。しかし五歳の頃
「あの飛行機に乗りたい!!! 」
流線形が美しく、鳥のような形の飛行機を見たとたん、泣きながら大声で叫んだ。
僕はあまり駄々をこねることがなかったそうで、その時ばかりは飛行場で困り果てた両親に、一人のおじいさんが近寄って来た。
「僕、あの飛行機はね、音速を超えているからとても速いけれども、乗っていると耳が痛くなったりするんだ。そうならないために薬とか、他の方法があるんだけれど、小さな君にそれをすると後で病気になるかもしれない。入院しなければならないかもしれないんだ。」
全く知らないおじいさんからそう言われた僕は、すぐに泣き止んだ。
「ごめんね、あと少し我慢して」
そうしておじいさんは行ってしまった。でもその次の時に空港で会うことができて「あの時はありがとうございました」とお礼を言っている両親に微笑みながら、確かコンコルドの話をしてくれたのだったと思う。
子供心に「この人は凄い人なんだろうな」と初めて感じた人だった。
それはやっぱり本当の様で、何人かがおじいさんに対して握手を求めたり、お母さんの国の人が深々と頭を下げて(それが偉い人にあった時にすることなので)いたりという姿を何度も見た。幼い頃乗っていた遅い飛行機の中にあるキッズスペースで遊んでもらったこともある。とても小さな紙で飛行機を作ってくれた。
「すごいや! こんなに小さいのにすごく飛ぶ! 」
そう言って驚嘆した子供の声が機内に響くと、ほんの一部の乗客が「うるさいなあ」という顔をしただけで、他の人は小声で楽し気に会話していた
「あの方が・・・」「ああ、あの有名な、飛行機の設計者の・・・」
そして両親からこう教えられた。
「今度、あの早い飛行機に乗るのよ。あのおじいさんが設計して、実用化ができたんですって。立派な方に出会えてよかったわ」
でも残念ながらその時はコンコルドのおじいさんに出会えなかった。
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