第7話 簡単な結果


「実はさっきこっそり裏表紙側も開けていて」

と彼の遠い子孫であり朗読者が我々に打ち明けた。


「凄いね、君は時々思い切ったことをするとは思っていたけど」


皆からそう言われて「すいません」と謝ってはいたが、先輩が裏表紙から小さな本を取り出してきた。簡易的に製本された故に、特別な溶剤などを使っていないようだった。


 しかしこれをすぐさま読もうという雰囲気ではなかった。何故ならムー計画の時代は、故意のように公的な資料が抜け落ちているのだった。一般的に言われているのは、初期的なコンピュータの急速な普及に対して、セキュリティーが追い付かず、結局大規模なパンクを起こしたということだった。その点想像は容易に付くのだが、それにしてもあまりに「不透明すぎる」ということが、ムー計画自体の真偽を「海の底」のように見えざるものとしていた。


「流刑地・・・だったんだろう? 」

「その当時の科学技術の粋を集めた所が? それはおかしな話だと思うんだ」


皆この小さな本の前に疑問を整理しておきたかったようだった。

僕も勘違いの想像から解放され、自由になったという感じはむしろしなかった。皆にもわかっていた。この公的書類でないものの方が、すべてではないにせよ、真実を紛れもなく「身近で分かり易く」してくれるはずだということを。


覚悟を決めたように

「読みましょうか」

と若い彼は言った。その勇気を持つのはやはり血の力なのか、先ほどの声のトーンと変わることなく彼はゆっくりとページをめくった。


「海の中の落書き島」


そうしてまたページを、今度は比較的ゆっくりと、優雅に開いた。

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